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怠け者のくせに

校舎
制服
吹奏楽

中庭
群青
高校生

高校の文化祭を見学した。校内のエネルギーが強烈で、薬の好転反応のような急上昇急降下な気持ちを味わった。

楽しんだ。すごく楽しかった。そこら中に笑顔が見えて活気があった。反して、見学の保護者なんかにひとつも興味ないですという、ツンとした態度もあって。そんなアンバランスな雰囲気が面白くて、ひとりでずいぶん長い時間校内をウロウロした。

大人が思い描く「青春」なんて、抜け殻に無理矢理詰め物をしているだけのものなのかと痛感する。大人が青春を思い返して書き起こすと、それはどうしたって装飾されたものになる。苦悩を大袈裟に汚し、歓喜は大袈裟に彩り、思い出の全てを文章の力で「危うくて美しいもの」に演出する。

学校内をうろうろしながら、灰谷健次郎さん著書「少女の器」の中にある、中学三年生の主人公の言葉をぼんやり思い出した。少女が母親に小憎らしくかける言葉だ。

「思春期だの反抗期だのそんなことばを使ってわたしたちを見る大人ってつまりは怠け者なんだ。そのことがわかってないから、なーんもわかってないといったのよ」

「なにか自分の手に負えないことがあると、思春期だからねとか反抗期だからねといっとけば、そのいろいろの部分を考えなくてもいいから楽じゃない。つまり怠け者っていうことよ」

「少女の器」灰谷健次郎著 より

ホントに。
大人なんてものは、子どものまぶしい時期に対して怠け者なのだ。ネーミングに甘んじて、そこに当てはめて親の不安と安心を天秤にかける。少女の言葉を反芻しながら、文化祭真っ只中の彼ら彼女らを見物した。そしてやっぱり、彼らを簡単な単語で片付けていると気がつき、ほんの少しだけ傷つく。一体なんの傷だろう。

アオハル
シシュンキ
ハンコウキ

リアルには、どうしたってかなわない。
この世界をこのまま書き起こすなんて無理だとわかっている。それでもどうにかして何かを綴りたくて、わたしはキーボードを行ったり来たりする。


怠け者のくせに。



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くにとみゆき(牡蠣ミユキ)
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