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【#一日一題 木曜更新】 「察してちゃん」はやめよう

山陽新聞の「一日一題」が大好きな岡山在住の人間が、勝手に自分の「一日一題」を新聞と同様800字程度で書き、週に1度木曜日に更新します。

キッチンに、洗い物が山になっている。いちばん古いものは、一昨日の夜中にむすこが食べたインスタントラーメンの鍋と箸だ。

夏休み、後半戦に突入。宿題に苦しんでいたむすこの部屋から、パズーのラッパ口笛が聞こえてくる。口笛が出るのはゴキゲンのしるしなのできっといい感じに宿題が進んでいるに違いない。部活を引退したむすこがお盆休みに入り、当たり前だが毎日家にいる。彼は受験生、そして宿題が山のように出ているため、以前のように友人と遊び呆けるわけにもいかない状況だ。

しかしだ。今どきはLINE通話で複数の友人たちと繋がったまま机に向かうのがスタンダードのようで、わたしはたいそう困惑している。

きゃいきゃいと楽しそうに話しているので「ほんまに宿題間に合うんかいな?」と思い部屋を覗くと、話しながらドリルを書き書き、決して手が止まっているわけではない状態で、こちらもまあいいかと頭の中でスタンバイしていた小言をグッと飲み込む。でも彼らは結構な頻度で、オンラインゲームに興じてる時間もあったりする。多少の休憩も必要かと数日は様子見をしていたが、どうもむすこの生活態度が目に余るようになってきた。

食事後、当たり前のように流し場に食器を放置。わたしが畳んだ彼の衣類もリビングに放置。使った鞄も数日間部屋の入り口に放置。脱いだ服や玄関の靴も散らかしたまま放置。都度片付けろと注意していたが、ある日「母ちゃんの机も散らかってるじゃん」と返され、もう何にも言う気がしなくなった。わたしは彼の机や部屋の散らかりに関しては一切口を出したことはなく、あくまで家庭におけるパブリックスペースのみ。

そして翌朝、わたしはキッチンの流し場を見て決意した。彼が夜中に食べたであろうインスタントラーメンの汚れ物が散らかっていた。雪平鍋の中にこびりついた乾燥ネギ、スープを流したあとがついたシンク、グラスに刺さった箸。それらを放置したまま、朝食を用意した。食べ終えてシンクに食器を下げ、洗わないまま昼食も夕飯も用意した。グラスもコーヒーカップもシンクに下げたまま、次に何かを飲むときは新しいグラスを使った。それが昨日の話だ。

本日。わたしの態度も食事配膳も普通で、にこやかにむすこと話すし食事もする。なのにシンクには洗い物がどんどん溜まり続けている。食器のほか鍋やボウルも積まれて、そろそろシンクに置き場所もなくなってきた。

ちょっとしたホラーだろ?とわたしはほくそ笑んでいた。母ちゃんごめんと思ったむすこがきっとそのうち洗い出す。グラスだってもう替えがないし、箸もくたびれたスペアしか箸立てにささっていない。

先ほど昼食後の食器を下げたむすこが「あのさ、母ちゃんどうしたの」と言ってきた。しめしめやっと謝ってくるかと思ったわたしは、こちらに語りかけてくるむすこの姿を見て泣きたくなった。

そこには、蕎麦猪口に注いだ麦茶で喉を潤すむすこがいた。



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くにとみゆき(牡蠣ミユキ)
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