第17 回 映画『ザ・クリエイター 創造者』を語る!!〜「人類vsAI」という二項図式に終止符を打つ。道徳や倫理観がどんどん失われていく「なんでもあり」のこの世界への皮肉と、これから先に生み出されようとするAI映画への挑発に溢れた最高のSF映画から読みとるべきものは何か。
くに:1週間毎にアップするのって結構大変だというのが最近ようやくわかってきた(笑)
たけ:今更かよ!!(笑) コレやるために最低でも年間60本映画観ないといけない計算だからね、、、まー好きで観てるから良いんだけど、整理して、言語化して、まとめて文字起こしだからよくやってると思うよ。
くに:でもこれやってて思うのは、頭で考えてることというのは言語化できない限り記憶に残らないってことだよね。言語化できて初めて自分の頭の引き出しの中にちゃんと残って、必要な時また綺麗に取り出せるものになる。
たけ:ホントその通りだね。映画観てても「あ、これプロットはあの映画と一緒だ」とか「共通したメッセージだ」とか、ポイントをすぐ発見できるのも、こうやって言語化してるからできることであって、それが記憶の中に残ってるからだね。だから、映画観るのがどんどん楽しくなっていくよね。
くに:頑張って続けていきましょー!というわけで、今回の映画は『ザ・クリエイター 創造者』です!!新作です!!
たけ:まずはあらすじ↓
人間とAIが平和に共生していたある日、AIが核爆発を引き起こしてしまう。以来、両者間で激しい戦争が10年以上続く中、元特殊部隊のジョシュアは人類を滅ぼした兵器の創造者の潜伏先を見つけ暗殺に向かう。潜入先で彼は少女型のAIアルフィーに出会い……
くに:めっちゃ面白かったよね!!
たけ:面白かった!!上映時間も2時間ちょっとで、長すぎず短すぎずで丁度良いなーって感じ。
くに:たけはSFあんま観ないんじゃないの??
たけ:そんなことないと思うけど、全体の割合からしたら確かにそんな多くないかもな〜。スターウォーズは全然わからない(笑) 今回の監督ギャレス・エドワーズだから、色んなところで『ローグワン』と比較されているけど、さっぱりわかんない(笑)
くに:この映画、お話としてはわかりやすいじゃん?いわゆる「人類vsAI」っていうことだよね。AI発達してきて、色んなとこで散々この二項対立の話になっていると思うんだけど、今まで自分らがこのブログでやってきたことからすると、「二項対立の話はアブない」っていうことだよね??(笑)
たけ:その通り!(笑) この映画のトレーラーやあらすじ見ていて、まず「人類vsAI」っていう二項対立の図式が真っ先に入ってくるけど、まず思ったのは「用心しなきゃあかんなコレは」っていうことでした。その上で観た結果、やっぱりそんな単純なもんじゃなかったです。
くに:この映画観てしまったら「人類vsAI」っていう図式の映画が、なんというかいかに嘘くさいものになっていってしまうなーと思った。結局、仮にAIが人類の敵になったとしても、その敵となる要素だけを排除してその後もAIを使っていかなきゃ暮らしていけない世界にもうすでになっているでしょ??実際にこの映画の中でも、人類がAI側に攻撃する時にAI使っているよね?(笑)
たけ:ホントそうだねえ。なんというか、、色んな意味で皮肉がたくさん詰まった映画だったと思う。一つ目は今くにちゃんが言った点、「いくらAIが敵になろうとも、AIを手放せない世界にすでになってしまっている」という皮肉。二つ目は、アメリカとアジアの図式。色んなところで言われていると思うけど、やっぱりこの図式はベトナム戦争をイメージしちゃうよね。この映画観た人ならわかると思うけど、この映画の結末からしても歴史上人間は同じ過ちを犯してしまうというね、、、人間の愚かな性をすごい象徴しているように思えた。三つ目は、「分断」。この映画、「人類vsAI」っていうことなんだけど、主人公のジョシュアはAIを滅ぼすことではなくて、AIを滅ぼすために人類が行った攻撃によって死んでしまったかもしれない自分の奥さんを探しにいくことが本当の目的じゃない?ジョシュアは人類側だけど、味方の攻撃で一番大切なものを失ってしまったかもしれない立場なわけ。利害が一致してないんだよね。そこからも、一つの国の中で起こる分断はもう止められないんじゃないかな〜っとそんなことを思わされる象徴的なポイントだと思った。現にアメリカがコレだけ分断進んでいて、自分たちのテリトリーさえよければいいというような意識だったり、もはやトランプのような超オルタナティブでしか政治が変わらないし、自分たちの未来に生活にも希望が持てないということで、トランプが票を集めて大統領になってしまったりしたわけで。。。
くに:自分たちの利益の追求のためには、反倫理的なこともやっちゃう「なんでもあり」な感じにどんどんなってきてるよね。ロシアのウクライナ侵攻も、「まさかやるとは思わなかった」ということじゃん。
たけ:劇中のAIに対する人類の攻撃もさ、暴走したAIがいそうなとこはお構いなく全部爆破、だからね。対象となる敵だけ始末するっていう考えがないもんね。まさに今の世界を象徴してるなーと。結局、自分にとっての利害がどういったものかによってその人の行動が決まってしまう、というのは誰しもそうなんだろうけど、そこに倫理観や道徳観が入り込み、結果「自分にとっての利害が実は自分だけのものじゃないという認識にジャンプできるか」というところがポイントで、結末は触れないけどジョシュアは最終的にそのような存在になっていくよね。結局、1人1人がそういった認識になるしか、良い世界になる方法ってないんだろうなーと思った。今の日本に結びつけると、その状態が良い悪いは別として、政治がどうあれ、制度がどうあれ社会は回っていくじゃない?問題は、その社会に住む一人一人がどれだけ成熟しているか、ということなんだと思う。日本の選挙の投票率がその状態のわかりやすい指標だと思う。アリストテレスがこんなことを言っているんだよね。「どんな社会が良い社会か。犯罪が少ない社会か、お金がよく回っている社会か。どちらとも違う。答えは、徳を持った人間がたくさんいる社会である」つまり、他人から尊敬されるような人がたくさんいる社会がいい社会である、ということ。例えば、犯罪は法律で罰せられるからしてはならないのではなく、道徳的倫理的感情的にすることができないという意思があるからできない、という人間かどうかか重要だということ。尊敬される、ってことは利他的な行動をとれる、という事に他ならないじゃない?利他的な存在、この映画にほとんどいないよねえ。。。それも今の時代に対する皮肉にも見えた。
くに:観ているこちらの意識がさ、AI側に感情移入しちゃうよね。でもそれは、AI側に感情移入してるというよりは、AIを攻撃している人類側があまりに短絡的で愚かがゆえ、それ以外の立場の人たちがまともに見えているだけなのかなと思った。だって最初の話に戻るけど、AIが暴走して人類の脅威となるから滅ぼしてしまえと言っている自分達がAI使っている時点で、「じゃあそのおたくらが使ってるそのAIが暴走しないという保証はあるの?」っていうロジックに当然なるじゃんね。
たけ:そういった感情移入になるように映画の構造が意図的に誘導しているように見えるけど、普通に考えて何がまともでどうするべきか?を考えれば、もうAIがどうこうの話でもなくなってくると思うんだよね。そもそもAI作ったの人間だし。AIを人類の脅威になる存在と描くのはもうやめたほうがいいんじゃないかな〜と思ったし、映画にするのであればもっと違う視点でAIと人間の共存を描かないと面白いと思えなくなると思いました。そういった気づきをもらえたという意味でも、凄く良い映画だった!
くに:AIを題材にする映画のハードルが上がっちゃうね!!ある意味楽しみでチャレンジングなわけでもあるね!!
今回もありがとう!!