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染料と顔料の違いを逆手にとる

去年11月にお手入れに出した3枚のうちのひとつが帰ってきました。

もとはグレーがかった薄水色地に型友禅で橘を描いたもの。

約40年、ほぼしまいっぱなしだった

肩山〜袖山、背中心が黄色っぽく変色してしまっていました。
汚れと違って落ちにくく、むりになにかすれば糸が傷んでしまうかもしれない、濃いめの色を全体にかければ目立たなくはなるけど、柄が沈んでしまうしねぇ……と考え込んでいた悉皆屋さん。

ふと何かに気づいて柄の白いところを指さしました。
「ここ、胡粉ですね」
布に絵を描く絵の具には染料と顔料があって、染料は糸に染み込みますが、顔料は布の表面に乗っているだけ。その違いから、濃色の染料を全体にかけたときに染料部分は染まってしまうけど、顔料部分には染み込まないので色がつきにくいのだとか。
それでも薄くは色づくので、濃い色の中にぼうっと浮かび上がる感じになって、それはそれで面白いですよ、と。

もう諦めるしかないかもしれないと思っていた1枚。どうせなら試してみようと、濃い茶紫で丸染めしてもらいました。

たしかに!ぼんやりと浮かび上がってる

ほほ〜
思った以上にシックな感じです。これなら遠目には地味めな飛び柄に見えます。
近くでよく見ると

うっすらと線画が

友禅の糊で白抜きになってたところがうっすらと見えます。なんだかだまし絵みたいで面白い。

八掛も今の私には可愛らしすぎるピンク系だったのがしっかり染まって、同色なのがなんか通っぽくてすてき。

正直、橘の柄ってそこまで好きじゃないな……と思って出番が少ないままタンス焼けさせてしまったけど、これはがっつりローテーションに入りそう。

リサイクルに出したとしてもタダ同然の値段がつきそうだった着物がみごとによみがえって嬉しい。
それはつまり、リサイクル屋さんや骨董市なんかで汚れを理由に投げ売りされてるような着物にも復活のチャンスがあるかもしれないということ。

どんなに安い着物でも、正絹のちゃんとしたものはできるだけ着物として使われてほしい。切り刻んで洋服や小物にするのはもっとあとでいい。
大切な資源をとことん使い倒す知恵と技術があるのだから。

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