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身近にある違法建築物

 公道脇に、単管パイプと波板で作られた工作物があった。風雨に晒られた
波板は老朽化し、所々めくれている。この道は、小学生たちの通学路でもあ
る。もしも大きな台風や地震などがこの工作物を襲えば、彼らにどんな被害
を与えるだろうか?近くを通る度、そんな不安が心をよぎった。

不安を抱いた工作物

 工作物は下図のようなイメージだ。家のベランダから波板の屋根が伸び、
公道に少しはみ出ている。波板の壁は公道に接している。
 ベランダに単管パイプを置き、これに屋根の垂木に相当するパイプをクラ
ンプで接続しているだけのようだった。ベランダにパイプを固定しているよ
うには見えず、強度に問題がある構造と感じた。

イメージ図

 工作物についてネットで色々調べてみた結果、違法建築物ではないかとい
う疑問を持った。

市役所での対応

 意を決して市役所に確認に出掛けた。市役所での管轄範囲は公道までで、
工作物は管轄外ということだった。工作物の一部が公道にはみ出ている場合などは注意するだろうが、指導はできないとのことだった。

 多分、住んでいる市町村によって対応は異なると思われる。市役所に勧め
られたのは、建築指導事務所に行くことだった。周りの市も含め広範囲に建
築指導を行っている組織だった。

建築物に該当した

 建築指導事務所にて、安全面に懸念がある工作物に関して、スマートフォ
ンで撮影した写真を用いて説明した。
 屋根と壁があるので「建築物」に該当するとのこと。建築基準法に基づき、違法性の有無を判断するため現地調査する予定となった。

 建築物所有者のプライバシーの問題があるので、調査結果などの報告は、
できないと言われた。最初から報告はいらないと考えていた。もし、数か月
経っても建築物の状態が変わらなければ、建築物としての届け出はされてお
り、建築基準法に適合していると判断できるだろうから。

 小学生たちの通学路でもある公道のすぐ脇に、強度に問題がありそうな建築物があるのは不安であると伝えたら、「もし、屋根が撤去されれば、建築物には該当しなくなります。」と言われた。言葉に出さなかったが、本心は全て撤去してもらいたかった。それを見透かされたのだろう。建築物に該当しなくなれば、建築指導事務所が指導・対処できなくなるということを言いたかったと想像した。

後日譚

 建築指導事務所への報告後、約三週間が過ぎたある日のこと。「建築物」
の近くを通りかかったら波板の屋根が撤去されていた。どうやら違法建築物
だったようだ。屋根がなければ「建築物」には該当しない。該当しなければ
、建築基準法違反による行政処分や罰則を受けることはない。

 壁に相当する波板は撤去されていなかった。単管パイプは木材を用いてベ
ランダに固定されているようだった。補強したのだろう。

 屋根を失った工作物は何の役に立つのだろうか。風雨に晒されるので自転
車等の物置には使えない。壁に相当する波板が台所の大きな窓を隠している
だけである。隠すという目的であれば、カーテンを閉めれば良いだけだ。
 「違法建築物」に該当しない工作物とする手っ取り早い方法をとったのだ
ろう。

不安は残っている

 単管パイプと波板で作られた小屋が、大型台風によって大きくゆがんでし
まったのを目撃したことがある。自然の力は想像を遥に上回ることを痛感し
た。

 この経験から、波板の屋根が撤去されて工作物となったものには、まだリ
スクが残っていると感じている。強風にどこまで耐えられるか、不安は拭え
ない。

ルールは守った方が良い

 スチール物置やプレハブ・ユニットハウスなども建築物に該当するようで
ある。しかし、届出がされていないケースが多いと、建築指導事務所の方は
言われていた。

 素人目には、どのような工作物が違法建築物となるのか判断が難しい。専
門家や行政に相談することを念頭に置くのが重要だと思う。

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