AI時代、エンジニアにとって最も大切な能力とは?
エレクトロニクスエンジニアとして何度か転職した。それによって、設計
・開発、技術サポート、コンサルタントと色々な職種を経験することができ
た。実感するのは、職種に関わらず「問題を突き止める能力」を磨くことの
大切さだ。
問題を突き止める能力
何が本質的に問題なのか、それを見極めるには、「俯瞰して観る」、「論
理的思考」、「検証する能力」が必要だと思う。それぞれを、簡単な事例で
考えてみよう。
俯瞰して観る
まず、USBポート、ケーブル、HDDが接続されていることを認識する。ハードウェアのことだから認識しやすく、分かり切ったことだと軽く見るだろう。しかし目に見えない現象だと、どうだろうか。案外見落とすことが多いのではないだろうか。
ケーブルはHDDと一体で外せないと決めつけないこと。思い込みは排除し
なければならない。見落としにつながるからだ。
技術力があればUSBドライバというソフトウェアも視野に入る。しかし、
ここでは簡単な事例にするためハードウェアだけに問題を絞る。
論理的思考
HDD1が認識されないということは、それ自体が異常、またはUSBポートや
ケーブルの異常があると考える。当然なことと言えば、それまで。でも、物事の因果関係を理解しようとすることは基本的に重要なことだ。
今やろうとしている検証に意味はあるのか。論理的に考えていかないと、
無駄なことに時間を費やしたり、間違った結果を導いてしまう。
検証する能力
事例の問題を解決するため、どのように検証するかを見ていこう。検証の
際は、「俯瞰して観る」、「論理的思考」を心掛ける必要がある。
図(b)のように、USBポートに接続されていたケーブルを差し替える。HDD1が認識され、HDD2が認識されないのなら、USB1が異常だ。ケーブル2とHDD2は、正常だったからだ(図(a))。
図(c)のようにHDD1が認識されず、HDD2が認識されたのなら、ケーブル1とHDD1の異常が考えられる。USB2は、正常だったからだ(図(a))。
次に、図(d)のようにケーブルのみを入れ替えてみる。HDD1が認識され
ず、HDD2が認識されたらHDD1が異常と特定できる。意外と重要なことは、
タグを付けるなどしてケーブルを識別することだ。ケーブルを入れ替えたつ
もりになっていることもあり得る。
テスターやオシロスコープなどの測定器を持ち出す前にやれることはあ
った。もし、HDD1の内部の異常を見つけ出そうというのであれば、測定器
は必要になるだろう。
検証する際、大切なことは問題を一つに決めつけないことだ。事例では問
題が一つに特定されているが、問題が複数であることは珍しいことではない
。問題が互いに影響しあっていることもある。
最後に
AIに尋ねるとすぐに「正解」を出してくれる世の中だ。便利なので、私も
よく利用する。「正解」に慣れてしまうと、本質的な問題を追求することが
おろそかになる恐れがあると思う。
エレクトロニクスエンジニアとしての仕事の中で痛感したのは、問題をど
う捕まえるかだ。上述の事例のように、これが「正解」ということほとんど
なかったと思う。複数の問題が影響しあい新たな問題を引き起こしている、
というのが大部分。複数の問題をどう扱い最終ゴールを目指すのが効率的か
考えることが、目先の問題解決より重要だ。
問題解決には、本当の問題を突き止める必要がある。これは昔から変わら
ない。AI時代はより意識していきたいことだと思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?