徒然雲 【玄圃瑤華 伊藤若冲】ご機嫌ブラック
若い頃、それこそ学生時代(中高)から学校でもらう割引券で都内の美術館、
博物館によく行った。
西洋美術が圧倒的に多かったように思う。
好きだったのは、ユトリロ、ゴーギャン、ロートレック、モディリアーニなど
パリのアンニュイな雰囲気のものや、マグリットやミロが好きになったりいろいろ。
大学生以降はカッサンドルのようなグラッフィック的なデザインを
好むようになり、現在もどちらかというと構造的なデザインが好き。
広重、北斎などはワタシ的には究極のグラフィックデザインと
今でも思っている。
最近は、同じ内容の展示が世界をグルグル巡回している印象で
これも観たことある、あれもいつだったか観た・・・西洋絵画事情に思う。
そして、意外と知ったのが遅かったのが伊藤若冲
プライスコレクションの『若冲と江戸絵画』展は観ていないが・・・
『樹花鳥獣図屏風』や超射実的な鶏の絵たちが観始めだった記憶。
いつの頃か、多くの美術館の企画展に登場するようになり
時には『円山応挙』と一緒に並べられたり・・・
その伊藤若冲の作品の中でとにかく好きなのが
『玄圃瑤華(げんぽようか)』
そもそも若冲の作品を観るようになったのは
京都の『細見美術館』だったような気がする。
ここはテキスタイル系の企画展もセンスがよく小規模ながら
満足感が高いことが多い。(ただ、やはりもうちょっと展示量があれば・・・)
こちらの2代目細見實が琳派・若冲を中心とした江戸絵画を収集したとのこと。
確かに琳派と若冲といった組み合わせの企画が多いかも。
多くの浮世絵と同様、若冲も海外で収集されていたが
この『玄圃瑤華』は個人と東京国立博物館が所有している。
玄圃とは「崑崙山(こんろんさん)にある仙人の住む理想郷」で
瑤華とは「玉のように美しい」という意味とのこと。
この作品は拓版という版画技法で作成され
板木に掘り込まれたところが白く残り、バックが墨の黒地になる。
モチーフをこれでもかとフォーカス(デフォルメ)したシンプルな構図と
黒墨に浮き上がる白い植物や昆虫たちのちょっとシュールな姿が
ワタシの好みのツボにどはまり!!
若冲の植物や虫たちへの優しい眼差しが目に浮かぶ・・・
その優しさのエピソードで、売られていた雀が焼鳥にされるのが可哀想だと言って、すべてを買いとり庭に放してやったという逸話がある。
そんな愛すべき『玄圃瑤華』の作品たちを現代でも鮮やかに刷りなおしているのが
先日訪ねた、京都の『芸艸堂(うんそうどう』
伝統的木版画の彫りと摺りの技術を継承する職人達と木版印刷による
本と木版画の制作を手がけている。
そして本物を手に入れられないワタシのようなファンが
ポストカードとして手に入れられるわけ。
全48画中、16作品がポストカードになっている。
ブラック&ホワイトの版画
これを観ると、細やかでさりげない日常が
こんなにも粋で鮮やかなものに表現できるものかと心おどる。
ワタシのご機嫌のもとになる!(笑)
只今、これらを収めるフレームを捜索中!
何か趣のある素敵なフレーム・・・ないかなぁ。