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2012年5月7日 竜巻の街

東日本大震災の翌年…2012年5月6日の午後12時45分頃、茨城県つくば市北条地区を、西側から移動してきた巨大な竜巻が襲いました。筑波山の麓に位置するこの地域は、筑波山を背にした広大な田園地帯の後端にあたります。

竜巻は、田んぼの中に行儀良く林立する電信柱をなぎ倒しながら進んできました。まず、竜巻の進行ルートにあった一軒家が吹き飛ばされて裏返しになりました。その後、竜巻は国道125号線を越えて、自動車販売店の自動車を跳ね飛ばし、後方の集合住宅を襲って窓ガラスを破壊し、室内の家財を吹き飛ばしました。

その後、北条地区の街を縦断して多くの住宅や建造物(約300棟)を破壊した後、筑波山方向の傾斜地で幻のように消滅しました。竜巻の消滅後に市街地の被害を確認すると、初めに吹き飛ばされて裏返しになった住宅から男子中学生の遺体が発見され、北条地区に住む多くの方が負傷しました。

僕はその翌日に北条地区に向かいました。2009年に出版社を辞めた後の僕の職業は自称ライターであり、被災地で取材するというのも気恥ずかしいことでした。メディアに所属しないフリーのライターというのは、ともすれば「野次馬の被災地見物」と思われかねないのです。それでも現地に行かなければならないという強い思いがあったので、居住地から電車とバスを乗り継いで被災地に向かいました。

つくばエクスプレスの終着駅であるつくば駅からバスで北条地区に向かう際に、遠くに筑波山が見えました。バスが筑波交流センターに到着すると、センターの駐車場には、たくさんのメディアの中継車に自衛隊の車両が駐車していました。

バスを降りて歩いて被災現場に向かうと、まず目についたのは田んぼになぎ倒された電信柱と国道125号線の脇に建材がむき出しになった住宅らしき大きな残骸でした。すぐに、この残骸が竜巻によって裏返しにされて男子中学生が亡くなった住宅であることがわかりました。手を合わせて心から冥福を祈ってから、国道125号線を見ると、国道脇の電柱がもぎ取られたように倒れていて、垂れ下がった電線には大きな幽霊のように垂れ下がるビニールシートらしきものが見えました。

国道を渡ると、自動車販売店の前には乾いた泥まみれになった、たくさんの車が裏返しになったり、横倒しになったりしていました。その後方には大きな集合住宅が見え、報道のカメラマンや記者が集まって取材待機していました。

集合住宅の前には室内にあった家財などが積み上げられ被害の大きさが想像できました。集合住宅は、すべての部屋の窓ガラスが竜巻によって割られ、室内には片付けをする人たちの姿が見えました。驚いたのは集合住宅に設けられた小さな公園の遊具でした。ジャングルジムには、自転車が竜巻によってグニャリと押しつけられていたのです。

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