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原作好き20代女による新アニメ「うる星やつら」の散らかった感想

【良いと感じた点】 

OP、ED

・曲が洒落ていて新しく、かつうる星やつらとマッチしている
・原作絵がぬるぬる動き、可愛いラムちゃんがたくさん見られる
・ファミコンや原画などさまざまな媒体の画像がミックスされていてファンとしては嬉しい

・OPは、あたるが令和に行く夢を見る、という設定。
そのため昭和設定の本編では見ることのできない、インスタ等のSNSや推し活ライブがある令和の世界とうる星やつらのキャラクターとの融合が見られるのが良い
・各エピソードのタイトルロゴがすげえ凝ってる

本編


・作画、モーションでラムちゃんの可愛さについてこだわり抜いている
・本編が昭和設定のままで良い感じの令和レトロポップ感が出せている
・オリジナル要素や引き伸ばしをなるべく排した2話構成でテンポが良い
・ラムちゃんがあたるを好きになるポイントを原作より分かりやすく表現している

【いまいちだと感じた点】

OP、ED

・メインキャラたちの顔は一瞬しか出てこないのにアニオリのモブ女の子たちの顔が結構目立っているのに違和感がある。
はっきり顔を描かずにシルエットでも良かったのにな、と感じた

・掛け合いのテンポや声量が不安定

→特に序盤の「チェリーと呼んでくだされ」の後の「おのれはくだらない冗談を言うために〜」というあたるのセリフの間や声量が浮いていて、かなり滑っているような印象を受けた。
声優さんたちがかなりの努力をされているのは察せられるが、うる星やつらは会話劇が面白さの要なので、もっとテンポ良く息を合わせてセリフの応酬をしないと魅力が引き出せないよな、と思ってしまった。

・原作のカオス要素を減らし、懐かしのアニメ的演出を後付けしているせいで、素朴な昭和アニメという印象が強くなってしまっている

→これはたぶんアニメ制作スタッフの方々と私の間で解釈違いが生じているのだろう。

個人的には、会話劇と並び立つうる星やつらの魅力は、ギャグパートとシリアスパートの緩急の妙だと思っている。

ギャグパートでは1コマのうちに擬音やセリフ、キャラクターをこまごま描き込む。

「買い食い大戦争」より引用

一方、シリアスパートでは背景をシンプルにして静けさを演出したりキャラクターの表情に目を向けさせる。

「最後のデート」より引用

(※一応「引用」の規定に則って掲載しているため画像引用についてはご容赦願いたい)

さらに、うる星やつらのギャグパートは、独特な擬音やキャラクター、セリフが細かに描き込まれ、カオスな世界観を構築している。そして、カオスさが故に、時代感をあまり感じさせないのだ。


独特なポーズで吹っ飛ぶキャラクターと
ひらがなで記された「ぶるういんぱるすっ」というセリフ(?)

分からない人にはさっぱりな例えで申し訳ないが、「ジョジョの奇妙な冒険」の擬音のようなものだと思ってほしい。
あるいは、YouTubeグループ「東海オンエア」のしばゆーの作品に近い。

それが、アニメでは、原作のカオス要素を引き算してしまっていた。

例えば原作の「かけめぐる青春」では、世界各国の報道陣があたるとラムの鬼ごっこを中継するのだが、英語や中国語でまともに話していると見せかけて実は英語については「This is a pen!」といった教科書英語を、中国語については「八宝菜!」といった中華料理を言っているだけ、というシーンがある。

また、鬼ごっこ後、ラムに求婚したとあたるが周囲から勘違いされているところでは、「しのぶ!」と叫んだあたるに対し、インタビュアーが「(ラムに対する)忍ぶ恋でしたか、つらかったでしょうねえ」と言うシーンがある。

前者は海外の視聴者には伝わりにくいギャグだろうし、後者は「忍ぶ恋」という表現が分かりにくいと言われればそうだ。

しかし、ゴチャゴチャと画面が埋まっているにぎやかな雰囲気や次々と繰り出される言葉遊びを再現しようという試みがアニメからあまり感じられなかったのが残念だな、と感じてしまった。

また、セリフや絵を削ってカオスな非日常感を減らした結果、あたる母の「産むんじゃなかった」というセリフやラムの悪女ぶり、しのぶの可哀想さが妙に生々しく浮き出て視聴者の不興を買うことになったように思える。

※うる星やつらの原作初期はブラックユーモア豊富で、電話の話「絶体絶命」において、あたる母はあたるに対し「産むんじゃなかった」のみならず「電話代がかさむくらいなら葬式出した方がましです」とまで言う。ひどすぎていっそ突き抜けている。

そして、アニメスタッフは原作のカオス要素を削った代わりに「オリジナルの」懐かし演出をうる星やつらに足した。

キャラクターを丸で囲って話のオチを作る演出だ。

まあ、この演出自体は悪いものではないのだろうが……。
昭和の原作にない、令和アニメオリジナルのノリと素朴に引き算された演出を、「まあ昭和の漫画だしノリが古いのはしょうがないよね」と言われてしまうと、原作ファンとしてはいまいち腑に落ちないのである。

個人的には、新規の若い層を取り込みたいなら、最近の流行り曲のPVやチェンソーマンなどを踏まえた上であえてカオスな描き込み、演出に振り切った方が良いのではないかな、と感じている。

「うる星やつら」は、平成生まれで犬夜叉世代より後の20代である私にとっても熱狂的なエネルギーを持つ色褪せない名作である。

だからこそ、守りの演出で「老人の娯楽」だの「懐かしアニメ枠」だの言わせている暇があったら、あの熱気を存分に表現して、うる星やつらの本来持つ魅力で視聴者をぶん殴ってやれ、と思うのだ。








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