花が言うには
花が音楽を聴きたいと言うのでディスクを買ってやった。
この大きさでコンパクトディスクなどという名称なのだから昔の人間はアホだと思う。
そうぼやいたら花に叱られた。それをきいて怒るような人間はもう生きていないのに、そんなことを言うものではないと言う。
万が一再生できないということがないように、ちゃんと互換性のある色番号を確かめてやったのに口うるさい。花はこの音楽を気に入ったらしい。
窓辺が好きなのはずっと前からだが、それは昼の明るさが好きなのだと言っていたのに、夜も窓辺から離れたがらなくなった。音楽は花にしか聴こえていないのでいつ再生をやめているかは知れなかったが、どうやら夜もしばらく音楽を聴いてからしっかり眠っているようだった。夜は別々に眠ることにしたが、毎晩静かなことには変わりなかった。
毎日変わらず花を気にかけていたが、泣くことが増えた。
話をきいたら、音楽を聴くと悲しくなるのだと言う。
それなら聴くのをやめるかときくと、そうしたいのではないらしい。
この花のことは好きだがよくわからないことを言う。
数値を見ても健康に害があるわけではなかったので、引き続き自由にさせた。
最近は黄の花びらに見たことのない模様を浮かべるようになった。
花の不具合かと思い心配したが目立った変化はなかった。数値をよく見ても何の変動もない。
毎晩同じ音楽を聴いて楽しいかときくと、楽しいのではないらしい。
花は音楽を聴きながら、違うことをしているのだと言った。
今日も同じ夜だったが、花の言う声は聞こえなかった。