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テイネイ

もうどれほどのことがあってもぶっ壊れない心があるので何があっても私は大丈夫だと毎日言い聞かせているけど心の底から体を壊せる繊細な人間どもが羨ましい。

いま、隣の席の二人組に、私のメニューには「sold out」と書かれていたはずの名物プリンが運ばれてきて驚愕している。どういうことなんだろうか。全く意味がわからない。
「え、プリンあんじゃん」と対岸の二人連れも驚きを隠せない様子だ。選ばれざる客であることを暗にプリンで示してくるなんて、なんて婉曲表現豊かな世界なんだろう。大好きだ。

引っ越して半年になるが、この街に馴染めないことをいつまでも他人のせいにしているので、街全体から日々嫌がらせを受けているような気分で生活している。すべてのことはメッセージだと高らかに歌い上げながら、スーパーで買った食材を冷蔵庫に収めれば、パックの中のミニトマトの一つがカビていることに気づく。はいはい、そうなんですね。わかりました。
一方、ニ週間前に買ったネギなんかが冷蔵庫内でまだ新鮮さを保っていることに怯えながら、かと言って捨てる気にもなれず「はやくシナシナになればいいのに」と祈りながら見なかったことにして冷蔵庫を丁寧に閉める。

最近は、ラインが苦手だという極度の面倒くさがりの間抜けに時々長文の日記を送り付けて、数日間既読にならないのをイライラしながら見守るのがとても楽しい。
思うに私は、外界から受けるストレスでしか社会と関われないのかもしれない。なんか、人に優しくされたりするとしんどいし、全部が不親切で、全部が気に入らない街でイライラしながら過ごすのも案外心地よいかもしれない。

あんまりそんなこと言わないほうが良いのに。大人なんだから我慢して分を弁えて生きなきゃね。
そうやって口に出しながら作ったケチャップライスの上に卵を3つ使ったオムレツを乗せ、「どうせ死ぬ」と書いてから全部食べました。美味しかったです。


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