【実践報告】英語でのキャリアコンサルティング練習
日本語教師のお仲間の紹介で、「英語でのキャリコンロープレ」の場を提供くださっている方とお知り合いになりました。ご縁に感謝。
2024年2月から月1-2回のゆっくりしたペースで練習を続けており、スキルも知識もまだまだ納得いくものではありませんが、少しずつ手応えを感じ始めています。
クライアント役には、キャリコンを理解している在日の英語ネイティブが立ってくれて、在日外国人の知り合いから様々なケースを情報収集し、毎回異なるクライアント役を演じてくれます。
英語が好きなだけで海外留学・在住経験のない自分が、なぜ、そしてどのように英語キャリコンに取り組もうとしているか。外国人ならではのキャリアの悩みにはどんなものがあるか。ネイティブじゃない日本人が、あえて英語でキャリコンする意義とはなにか。このあたりを考えてみたいと思います。
なぜ、英語でのキャリアコンサルティング?
そもそも、なぜ国家資格キャリアコンサルティングの取得を目指して学ぼうと思ったのか。それは、日本語教師として、日本で働く/働こうとする日本語学習者の就職支援をしている中で、薄っぺらい面接対策ではなくて、長期的に日本で幸せに生きていくための、もっと本質的な支援をしたいと思ったからです。自分自身も、キャリアについてずっと悩み続けてきたので、何か方法論があるなら知りたいと思ったことも理由の1つです。
なお、キャリコンを取得して就職支援をする日本語教師も増えているように感じます。
では、なぜ「英語」でのキャリコンなのか?
あたりまえですが、英語圏の方にとっては、母語である英語でのほうがリラックスして自分の気持ちを自分の言葉で素直に話せるメリットがあります。自分の言葉で話してくれるというのは、話を聞く方としてもありがたいです。
そして、私自身にとっての理由は、「挑戦」です。子どものころから英語教室に行かせてもらって、英語はずっと好きで得意な科目。海外留学・在住は、勇気とお金がなくて今までしてきませんでしたが、italkiでも英語圏の方を主なターゲットとして、必要なときに使いながら日本語を教えてきました。毎週、英語ネイティブの先生との会話練習も続けています。
「自分は英語でキャリコンできるのか?」という心配の殻を破って、やってみようと思いました。キャリアの強みを尖らせる、掛け算の法則。ここに「英語 x キャリコン」を加えることにしました。
日本語教師 x 英語 x キャリコン x ビジネスコンサルタント・・・・
英語はペラペラじゃなきゃいけない?
結論から言うと、そんなことありません!
ただしリスニング力はある程度必要です。相談の内容がわからないと、目的が果たせませんので。何度も質問して言い直しさせたら、相談に集中にできなくなってしまいます。しかし、もし途中で多少の聞き逃した部分があったても、パラフレージングやサマリーのテクニックを使って、自分の理解が追いついているか確認ができるので大丈夫です。
一方でスピーキングについては、必ずしもネイティブ並みに流暢である必要はないと思います。なぜなら、キャリコンはクライアントが主役であり、話すのは主にクライアントで、こちらがペラペラの英語を披露する必要はないからです。クライアントの言語にかかわらず、自己解決を支援することがキャリコンの目的であり、そのために必要な投げかけや、仕事の探し方などについての説明などができれば大丈夫。
とはいえ、一文を発しようとする度に頭の中でもごもご作文する時間はないし、直接的でストレートすぎる質問をしたりしたら、会話の流れが壊れてしまうかもしれません。よく使う可能性があるフレーズは、すらすら口から出てくるよう練習しておいたほうがいいと思います。
YouTubeで、"career counseling roleplay"などと検索すると、英語でのキャリアコンサルティングのロープレ動画がたくさん出てきます。それらを見て、いいと思ったフレーズを書き起こしたり、ロープレに来てくれるネイティブの方にいい言い方を教えてもらったりして、表現を頭の中に貯金しておくと、自分への安心感にもつながります。
例)要約のときに使っている表現
To make sure I'm following, 〜. Is that correct?
Let me make sure I understand correctly, …
The picture I'm seeing is ….
The biggest concern you have is …
Let's take a moment to recap. などなど
YouTubeのロープレ動画の例
(短いですが、お気に入りの1つとしてよく人に紹介しています)
日本に住む外国人ならではのキャリアの悩み
キャリコンとしての使命は相手の国籍にかかわらず同じなのですが、外国人からの相談内容には、日本人には発生しない要素が絡んでくることがあります。主なものとしては、次の3つがあるようです。
1. 言語、文化、慣習の差
例えば、日本語での書類選考/面接が通らない、言葉の壁によるミスコミュニケーション、就職活動のやり方の違い、面接の流れやマナーの違い、などです。日本人の友人や配偶者からの情報に影響を受けて、あるいは同調圧力を受けて、自分の判断に自信がもてなくなるケースなども、今までのロープレでありました。(例:転職したら給料が下がるからやめたほうがいいと配偶者に言われた、など)
また、ジョブホッパー(1〜3年程度でどんどん転職して、キャリアアップを図るタイプ)の方には、日本企業では必ずしも前向きに受け取ってもらえるとは限らないよ、という話をすることもあります。
2. アクセスできる情報量の差
ここでいう情報とは例えば、転職方法のオプションには何があるのか(ヘッドハント、転職エージェント、求人サイトからの応募、企業への直接応募、知人の紹介、など)。そしてさらに、具体的にどの転職エージェント・求人サイト選び、具体的な会社・仕事に応募するか。初めてでは分からないことだらけだと思います。転職エージェント一つとっても、特定の業界や職種に特化したところ、バイリンガルに強いところ、地域に強いところなど色々あるので、日本人であっても情報に迷うかもしれません。こちらが情報を蓄積しておいて、あるいは一緒に検索して、クライアントに提供するのが有効な気がしています。
3. 在留資格(ビザ)による制約
在留資格については、一般の日本人にとっては日常生活に全く関係なく、知識がありませんが、外国人にとってはこれがないと日本で働くことがそもそもできません。日本国籍や永住権を持っている方には仕事の制約はありませんが、在留資格によっては職種や期間に制約があります。行政書士のような専門家としてのアドバイスはできなくとも、キャリコンとして、ある程度のことは知っておく必要があります。私もまだまだ勉強不足なので、「外労士(外国人雇用労務士)」のテキストを買ってぼちぼち読み始めました。
例えばこんな相談が入る可能性があります。「あと◯ヶ月でビザが切れる。これを機に◯◯職をやめ、通訳になりたいが、どうすればいいか。」「日本企業での経験を活かして、外国人向けの◯◯の事業で起業したい。どうすればいか。」などと相談されたら、在留資格としてはどうなるのか、手続きはどうすればいいか、本人はどこまで情報収集できているか、といったことを考えながら話を聞くことになります。
日本人が英語でキャリコンする意義
日本に住んでいる英語ネイティブではなく、必ずしも英語が流暢でない日本人がキャリコンをすることの、クライアントにとってのメリットは何か。おおむね上記3点の裏返しになると思いますが、
1つは、クライアントの持つ考え・慣習と、日本人の視点を照らし合わせて、その差(異文化)に気づきやすいこと。
2つめは、日本国内で、日本語によって取得できる情報が圧倒的に多いこと。募集要項や会社ホームページを読むにしても、日本人の数倍パワーがかかることでしょう。「日本人なら、日本の企業なら、一般的にこう考えるだろう」という暗黙知も提供できます。
3つめは、特に日本語教師であれば、日本語のコミュニケーションについての課題に気づき、学習アドバイスや面接対策ができるところ。
「日本に住んでいるので、現地の日本人に相談したい」というのは、逆の立場で考えてみたら、実はとても自然ではないかと思います。
今後の課題
私自身の今後の課題について。これも先述の1〜3に関連しますが
1. 英語での表現力
「えっと、英語では何といえばいいんだっけ?」と考えた瞬間、意識がクライアントから自分に向いてしまいますので、これを最小化したい。少なくとも、よく使うフレーズはパターンとして覚えて、無意識にすらすら出てくるようにしたいところです。
また、他のかたのロープレを見ていて気がついたこと。相手の話を聞いて受け止めるときに、"So, then, you want to.…"のように"So…"とか、"OK"を多用している場面を見かけました。実は”So…”は、次に自分が何を言おうか考えている時間、つまり意識が自分に向いているように感じます。上記のYouTube動画のように、あくまでクライアントに意識を向けて、やわらかに受け止める言い方ができるようになりたいところです。
2. 最新情報の蓄積
キャリコンのロープレでは、だいたい問題把握ぐらいまでで終わりですが、実際には、クライアントが次に何をするか意思決定するところまで、支援する必要があると思います。転職にあたっての仕事探しの方法は、手元でまとめておいて、いつでも説明できる状態にしておきたいところです。
私は人材会社に在籍していましたが10年ほど前なので、古い知識に固執せず、コロナ禍を経た人材市場の最新動向もキャッチアップしないとまずいな、と危機感を持っています。
3. 経験の蓄積
数を重ねて初めて見えてくることもあるはずですので、とにかく機会を得て経験を蓄積していきたいと思います。
なお、英語によるキャリコンで使うと便利そうなフレーズ集をまとめました。自分用にもアップデートしていきますが、よろしければご活用ください。あるいは、間違いなどあればご指摘お願いします。