名尾手漉き和紙_佐賀_工芸思考
名尾手すき和紙。
山に囲まれた名尾は、農地が少なく貧しいから、紙漉きの技術を導入して和紙づくりをはじめる。350年前から工房を開放し、問屋不在で自分で売るスタイル。
↑訪問者のための和紙づくりの工程を説明したパネル。
機械化による紙の大量生産が普及し、100軒あった和紙やさんも、35年前に最後の1軒、谷口家のみになる。
名尾手すき和紙は、カジノキの長い繊維を激しく振って絡ませるため、薄手で丈夫。提灯用の紙をはじめ、番傘、合羽、障子紙に使われる。
たった一軒残った谷口家は、名尾の和紙の中でも、提灯紙専門で
祭りや伝統芸能の需要は廃れにくく
7代目を継ぐ 谷口 弦 さんの若さを見越して
全国的に有名な寺社仏閣からの引き合いも増えた。
7代目の谷口さんと話すと、連続性の中に自分がいる意識を強く持っていることに気づく。『連続性』
カジノキは自分で植えていないし、先祖が継続してくれているから継げる。先祖の連続性の恩恵に授かっている。
↑カジノキ
半径3メートル以内で手に入るもので作っていると、アイデンティティは職人にめばえると言う。
「この土地に縛られているからこそ(その独自性で)どこまでも遠くに行ける」
他の和紙に使用されるコウゾがあるから、カジノキのユニークさもあるわけで、全部いい関係性しかないはずと言い切る。
和紙ではなく紙を取り扱っている意識を持つ。
愛読していた雑誌など、圧倒的に紙のお世話になっていた『連続性』の中で自分がいるという意識で、名尾和紙の価値を更新したい。
例えば、江戸時代の再生紙「還魂紙」(かんこんし)。
名尾和紙の原料カジノキは線維が長くて強度があるため、他の素材をすき込みやすい。
そこで雑誌やパッケージなど物語のある素材をすき込んで
実体が無くても、その魂を紙で残す「還魂紙」をつくる試みとか
↑左から、雑誌のポパイ、アディダスのパッケージ、エルメスのパッケージで作った「還魂紙」。
先天的に和紙やの息子で、
後天的に獲得したものが合わさったときに自分になれるし、
自分も『連続性』の中にいる。とは感覚的にわかる気がするし
次の代がやってもやらなくてもいいけど自分の実体がなくてもソウルが残るのを信じたい。
と「還魂紙」みたいなことを言う。
けどね、残すための強迫観念に駆られていてはいけない。
と言われはっとするのだ。
継承は、何のために残すかの理由が必要。