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候補者の見た目と、選挙事務所の印象が合致した、自民党総裁選!
総裁選挙。選対本部の個性はいろいろだった。カラーがくっきりと出ていて、どこも違っていた。政策云々は皆さんのお考えに任せて、今日は総裁選の投開票日、決戦の一日についてお伝えしようと思う。
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小泉進次郎事務所を訪問するといつも同じ感想を得る。
「健康的な事務所だなぁ」
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レンタルオフィスに設えた小泉選挙事務所は、すっきりとした印象だった。グレーのコンクリートの内装に白にブルーのパネルが目を引く。「決着」。これまで何年もうやむやにしてきたことに決着をつけて前へ進むというメッセージだ。いいねぇ。政策のまとまりや詳細にはいろいろ言いたいこともあるけれど、小泉進次郎が総裁になるのならこれを言いたいという思いを表現したのだろう。
総裁選当日、小泉進次郎選対事務所に到着したときには既に道路に人が溢れ階段を上った先の事務所の中からは賑やかな話声が溢れていた。
一歩入るなり、まぁ賑やか。いつもの小泉進次郎事務所と同じ、健康的な空気感だった。誰もが笑顔で話し、あちこちで笑い声が湧き上がっている。もう当選が決まったかのような雰囲気にも見てとれた。永田町にあるようでない雰囲気だ。
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時間になると小泉進次郎候補本人が大きな拍手と歓声の中、登場。司会進行の三谷英弘議員に「今日は噛まなかったね」と声をかけ、爆笑を誘っての登壇は、いつも通りのお見事なアイスブレイク。演説の後は、記者や支持者とのツーショットに応じつつ、投票所となる党本部への時間まで談笑して過ごしていた。その間も、ずっとワイワイと賑やかな雰囲気は変わらず「健康的だなぁ」とこれまたいつもの私の小泉事務所の感想。
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小泉候補を送り出してからは、選挙区である横須賀のカレーパンやカツサンドがテーブルに山積みにされ「召し上がってくださーい!」と。滞在する記者たちはパンを片手にPCに向かっていた。
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会場の真ん中に設えられた大きなスクリーンに、党本部での様子が映し出されている。今回はホテルではなく自民党本部内のホールで開かれているから、そこには秘書も入ることができない。会場の様子は中継の動画を見るしかない。座席に座る議員の中で候補者9人の顔が映ると、一瞬こちらも静まり返る。和やかだけれど緊張は解けない。
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投票が始まり、集票となり、開票結果まで約25分。あっという間の時間だったように思えた。議員票が発表され小泉進次郎が75票で一位と明らかになった時は、グッと飲み込むような間があったあと、拍手が起きた。そして党員票が読み上げられ、総評で3位と伝わった時、静かなため息が漏れていた。そしてその次の瞬間、拍手が沸き起こった。「よくやった!」「よし!」「次に向けて進もう!」「頑張った!」ここでも声は明るかった。
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反省点は多々あるだろう。誰の目にも明らかだったのは、重要政策のチョイスだと思う。解雇規制の見直しについて特に言われているけれど、次の総裁選に向けて、何を目玉にするかは大きな課題。自民党の政治家にはいろんな「お知恵」がやってくる。それが自分の政治信念と合致するなら取り入れるべき。だけど、そうすると必ず片方に寄ってしまう。この件だったら経営者側に。そのとき、必ず反対側をどう救い上げるのかを考えて表現する言葉を磨いておく。国は一輪車では進んでいけないのだから、両輪のバランスを常に意識して言語化すること。
石破新総裁だって5度目の挑戦だったのだから、若き挑戦者である小泉氏にも、有権者も誰かに吹き込まれたような罵詈雑言を叩きつけるのではなく、自分の頭で考えてから、相手を評価するのが、役割だと思う。
43歳の総裁選初陣、お見事!
日本人は、批判が得意。だからディスる言葉は豊富。でも、いま大切なのは政治家を育てる覚悟だと思う。あれもダメ、これもダメ、とダメ出しをしていても、完ぺきな政治家なんて居ないのだから。ダメを指摘するのではなく、多少凸凹があっても当然と腹をくくって政治家を育てる気概を持ちたいと思う。小泉氏については、例えば「まだ若いのだから」とおおらかに見守る気分があっても良いだろう。だって犯罪を犯しているわけではないのだから。良いところを認めて、ダメだったところを指摘して、私たちが政治家を育てると意識すると、口をついて出てくる言葉も変わってくる。そして政治家も育ってくるのだと思う。
決選投票、始まる
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3位に残ったとはいえ、議員票の獲得数がトップでありながら、結果無念だった小泉氏を待つのは忍びなかった。私は知り合いの政治関係者と議員会館地下ののカフェに移動した。
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情報と想像力と
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さて、決戦となると、3位だった小泉氏の議員票はどこにいくのか。想像を膨らませる。このとき私が大切にするのは、単なる旧派閥の力技ではなく、政治家それぞれの苦手や弱点。弱さの力学がテコになって、思わぬ方向に動くことがあるのが政治だ。さて、今回はどうなるだろう。
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石破茂氏が勝ちのこった!
足し算引き算の心理戦は、石破氏に軍配が上がった。一度目の投票とは違って、結果はあっさりと出た気がした。
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石破選対事務所
午前中に訪問した石破選対事務所は、今回の自民党の特徴でもある派手さのないところ。議員会館の地下にある会議室だ。ここは国会議員であれば、空いている限り無料で借りることができる。部屋番号を見た時、なかでもとても小さな会議室の番号だったので「あれ?確かここはとても小さな部屋のはずだけど」。行ってみたらその通り。しかも誰もいない。あとで来ようとその場を去った。
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勝ちが決まり、朝訪問していた会議室に向かうと、秘書さんが3人くらいで机を移動していた。とくにはしゃぐ様子もなく、とても静かで、一瞬「ここで良かったのかな」と疑わしく思ったほどだ。そのうち、ぼちぼちと議員が集まってきた。部屋に入ってきても、隅の椅子に座ってスマホを触っている。記者たちに囲まれるでもなく話しかけるでもない。なんとなく地味なのだ。秘書さんたちは石破事務所以外から手伝いにやってきた他事務所の方々だと思う。互いに勝利を愛でるでもなく「このお部屋、どうしたらいいんでしょう」と慣れていない風が明らか。華やかさとは縁遠い石破氏チームの様子がここにも見てとれた。
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石破新総裁登場
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石破新総裁が部屋に入ってくる直前、ここに到着した議員がマイクをセッティングしながらつぶやいた言葉を私は聞き逃さなかった。
「俺たちもやっと主流派だな」
その声に何人かの議員が笑い声をあげた。この部屋で初めて聞いた笑い声だった。
石破新総裁が入ってきた。拍手と歓声が上がった。「やったね」という声がして、全員が前に出た。万歳三唱は、ほんとうに嬉しそうだった。石破氏は照れ臭そうだった。
万歳の後、短い挨拶をすると、石破氏はそのまま部屋を出て行った。他に挨拶をしなければならないところも、インタビューやテレビ出演もたくさんあるのだろう。でも、花束贈呈のひとつもない総裁誕生の瞬間は、初めて見た。いぶし銀の政策集団に見えた。私の横にいた記者さんは「これで古き良き自民党が蘇る」とこれもまた、独り言のように呟いていた。
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野党第一党の党首が野田さんだから
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野党第一党の新代表が野田さんだから、そこに立つもう一人の与党党首はその姿に対抗できる重さが欲しいと思うのは当然だろう。このお二人が並んだテレビ画面を見て、妙に納得した。圧倒的安定感。予算委員会が楽しみだ!
ブランディングに辛口の評価をさせて頂くと
ブランディングとして成功していたかどうか、自分の強みと足りなさを、見た目と話し方で補えていたかどうか、簡単にコメントをしていく。
石破茂氏
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メガネがお顔の幅に会っていないので、逆にお顔だけが大きく見えてしまう。ネクタイの生地が、上半身のボリュームと比べて薄すぎ。胸元に重厚感が出せなくなっている。シャツの襟元が小さすぎて上着の襟元が整っていない。シャツの襟はワイドにするとネクタイもしっかりディンプルがつくれる。経験値を胸元に配するともっと良くなる。
高市早苗氏
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色調はとてもよく合っている。でも、メイクが平坦で古い印象がぬぐえない。眉頭を毛並みで描くと良い。強さが和らぎ上品さが際立ってくる。ネックレスは襟元に比べて細すぎる印象。襟のボリュームと合わせるとしっくり納まって安定感を出せる。
上川陽子氏
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いつもはもっとスカッとした髪型だったはず。総裁選で突然ヘアスタイルを変えたのかと思う。残念だったのは、額と眉を隠したこと。ファッション関係の方に政治家のブランディングをしてもらうとこういう間違いが起きる。政治家にとって、服装は鎧でアクセサリーは武器だ。ここはファッションの要素は捨てなければならない。上着の白は、右の写真のように背景を暗く落とすことができるときは良いけれど、テレビなどで背景を選べないときは膨張色と化す。そして、白の真珠のネックレスも悪くはないのだけど、他の映像で何度もネックレスを変えていた。それがたぶんコットンパール的なカジュアルなアクセサリーだったのだ。それがとても残念だった。一国のトップとなる人がファッション優先の軽いアクセサリーを着けるのはNG。立候補表明の頃に盛んにSNSにアップしていた、若々しさを演出するストライプのシャツやおにぎりを作っているシーンももったいなかった。上川氏には十分な実績がある。期待していたのに票が伸びなかったのはこの辺りにも原因があると、私は思う。
小林鷹之氏
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「コバホーク」はご自分でつけた呼び名と聞いている。鋭さやスピード感が言葉に乗っている。上手いものだと思った。立候補表明の当時の勢いはすごかった。小泉進次郎を凌駕するのではないかとの評判も立った。でも、失速も早かった。原因は陣営を支える勢力の背景など、深いものがあるとは考えているが、その一部を見た目に拘って考えてみると、やはりこの胸元の若さ加減だと思う。力強さがないのだ。一歩先に決まっていた立憲民主党の党首である野田氏と向かい合うと考えたら、少し心もとなく映ってしまう。そして、もうひとつは声。声が幾分高めなのだ。声ばかりは作るわけにはいかないので、難しいのだが、話すスピードと間の取り方で「重さ」を調整することができる。小林氏は、興が乗ると簡単にスピードがあがってしまう。そして高めの声に変って次々と話が出てくるので、「軽く」聞こえてしまうのだ。この弱点が胸元の「若さ」とマイナスのスパイラルを作っていっている。自分の持ち物である声と工夫できる話し方を調整すると良くなる。この時、間違っても「話し方教室」にはいかないことだ。政治家の話し方は、演説と討論。自分の政策のどこを伝えたいのか、重要ポイントを伝えるスピードと声のトーンを調整し、その胸元、目線、髪型、顔の向きと手の動きを作り込むのだ。
御大お三方
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こちらのお三方に関しては、共通のことが多いのでここでまとめたい。
先ず、三人ともシャツがあっていない。襟元が細すぎてお顔が心もとなく見えてしまうのだ。茂木さんは今回の総裁選で、ずっとこの同じネクタイを締めていた。ご自身のお考えがあってのことだと思う。ネクタイの幅も厚みも良い。でも、お顔の色に負けている気がするのだ。印象が薄くなっているのが残念。ネクタイで言うと林氏もそうだ。このような柄物をお付けになることが多くお見受けするが、そのキャリアからは、地模様のトップクラスのネクタイで良いと思う。柄があったらオシャレというのではない。河野氏はネクタイが細すぎる。爽やかさを演出するにはこの細さは良いのだけれど、ここではやはり「重厚感」「信頼感」だろう。テレビにはバストアップが大切だ。色調と共に生地の厚さとボリュームのバランスを考えるともっと印象が良くなるだろう。
まとめ
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石破氏は5回目ということもあり、この書籍の中にその準備と覚悟が見てとれた。その意味からも今回の総裁は順当なところなのだろう。いっぽう、高市氏の本もその厚みとボリュームは十分だった。しかし政策的な部分は前半の少しの部分で、後半は議事録的なものだった。出馬会見で58分も政策を語っておられたところを思うと、ご著書にももっと書かれた方が印象が厚くなったのではないかと思った。それでも、自身の勉強量と準備の質、ブレーンなどの応援団の重厚さは十分に伝わった。本気度は随一だった。
国民の期待
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さて、どうなるか。最新の報道では、衆議院総選挙は、10月15日、告示。27日投開票のようだ。ここから先は、主役は、各政党の党員・党友ではない。全国の有権者の出番だ。代表選や総裁選の前の国会で、何が問われていたのか。忘れてしまっていないだろうか。代表になるべく、大盤振る舞いの各政党代表のイメージで決めてしまうのではなく、ご地元の政治家像や政党の公約もしっかり見つめ、選挙のその先も、見逃さない心意気でいきましょう。私たちには政治家を見つめ続け文句を言い続ける権利があるのです。
ひらがなで政治を伝えたい
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私はいつも、「ひらがな」、誰にでも伝わる言葉で政治を伝えたいと考えています。難しい言葉と専門用語にしかめっ面。政治評論家やマスコミに溢れる、そんな雰囲気で誤魔化すのはもうやめましょう。政治の本質は、人の心の弱さや不安そして嫉妬が大きく人を動かすドラマなのですから。
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だから選挙は面白いし、政治から目が離せない。
漫画で伝えることができたら、もっと身近に感じてもらえると、妄想20年、構想4年で実現した連載です。ぜひ読んでください!毎週木曜日発売の週刊モーニングに連載中です!
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それでは、次は衆議院総選挙ですね!また書きます!