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気持ちが整う場所とモノ ~モノ編

憧れの包丁との出会い

Facebookとインスタでご報告はしたのですが、2年間憧れながらも手にすることができなかった包丁を、この度やっと入手することができました。それが、この「高村刃物」の包丁です。ダマスカス八角赤柄。

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この包丁を知ったのは、木村拓哉さん主演の「グランメゾン東京」というドラマでした。木村さんが使っている包丁の赤柄が美しく、猛烈に欲しいと思い調べたのです。高村刃物の作品だということまではすぐにたどり着いたのですが、実際問い合わせてみると「あの品物はテレビ用なので販売はしていません」とのこと。ガッカリ。

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包丁が手に入らない失望で肩を落としつつ、ドラマの中で木村さんが修行をしていたという設定の「パリの三ツ星レストラン、ランブロワジー」に行くことにしました。なかなか予約が取れないことで有名ではあったのですが、カード会社のコンシェルジュが頑張ってくれて、その年の暮れにパリに行くことができました。

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「あー、ここで木村さんは修行していたんだ」(ドラマの中の話ですけど)と感激しつつ、時差ボケで猛烈に眠い中、コース料理がないアラカルトオンリーのフランス語メニューの中からやっと数点を選び、堪能しました。

その中にキャビアが敷き詰められた上にスズキが乗せられたお皿がありました。このスズキの美しい切り口を見て「あの赤柄の包丁で切ったのかなぁ」と時差ボケの頭で思い、もう一度あの包丁が欲しくなったのは言うまでもありません。

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あの包丁は手に入らないと分かってから、私はどこの料理屋さんに行っても、カウンターで板さんが使っている包丁が気になって仕方がありませんでした。2年の間、聞いたり調べたりしてきましたがピンとくるものに出会うことはありませんでした。

悶々としていた頃、ふとしたことであの赤柄の包丁が商品化されることを知り、思わず「やったー!」。もうそこからは止まりません。注文する大きさを検討し、プロの板前さんにも相談して、およその目星をつけてから高村刃物に問い合わせました。そして、東京都議会議員選挙が華々しくやり合っている最中、私は高村さんご本人にもお目にかかる機会を頂くことができたのです。ただ、感激でした。目の前で私の名前を彫り込んで頂いたことも、感動でした。

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細部にこだわった包丁は思っていたよりずっと軽く、手になじみます。そして、材料に当てた瞬間、スッと入っていくその感触は、これまで体験したことのないものでした。初めて切ったのは、シマアジでした。切り口が艶やかに輝いていて、しばらく手に取って眺めていました。

これは、刀だ。

私は、この包丁がわが家に来てから、台所に立つことに気概を感じるようになりました。「気概」だなんて大げさな表現ですが、とても神聖な気分になるのです。この日、大量のストック料理を終えて台所を片付けたあとの、爽快感は他で経験したことのないものでした。

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そしてこの後、難解で滞っていた仕事が、もの凄い集中力とスピードでスルスルと進んだのには本当に驚きました。お気に入りの包丁で集中して取り組むことで、いつの間にか自分が研ぎ澄まされたような気がしたのです。「包丁」は台所で私の精神統一の役割も果たしてくれていたのでしょう。

台所は私の趣味の場所で、リラックスする大切な場所です。でも、あの包丁が来てくれてから、台所に凛とした空気が入り込みました。台所が、私の気持ちを整える大切な場所に昇華したのです。

新しい仕事のしかた「リモートワーク」は、新しい時間をもたらしてくれました。毎日ではありませんけれど、自宅のダイニングテーブルで仕事をする日は、頭がパンパンになったら台所に逃げ込みます。よく切れる美しい包丁でやたらと野菜を切り刻み(笑)、気を立て直します。自分が整う場所とモノ。これがあるだけで、何かがあっても自分をとり戻すことができそうです。

二回に分けて書いたのは、最近の楽しい習慣、リモートワークで生まれた新しい「場」と「モノ」のお話でした。

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