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日本語教育もキャリア支援の一つ

「外国人へのキャリア支援はどのように行っているのですか?」と聞かれることがよくあります。おそらく多くの人が「キャリア支援=就職・転職のサポート」というイメージを持っているからでしょう。しかし、私の考えるキャリア支援はそれだけではありません。特に外国人への支援では、「日本語」という要素が大きな鍵を握っています。



日本語がキャリアの可能性を広げる

日本で生活し、働く外国人にとって「日本語力」はキャリア形成に欠かせないスキルです。例えば、ある外国人が母国では高い専門性を持って働いていたとしても、日本では言葉の壁によって十分にその力を発揮できないことがあります。

そんな彼らが日本語を学び、自分の意志や能力を日本語で伝えられるようになると、選べる仕事やキャリアの選択肢が大きく広がります。日本語力がつくことで、次のような変化が見られることが多いです:

  • 業務の幅が広がる:日本語を使う職場や職種に挑戦できるようになる。

  • コミュニケーション力の向上:同僚や上司との関係がスムーズになり、仕事が進めやすくなる。

  • 自信がつく:言葉の不安が減り、前向きにキャリアを考えられるようになる。

つまり、「日本語を学ぶこと」自体が、キャリア支援の一つの柱になるのです。


日本語教育の役割――「学ぶ」を超えて「使う」へ

外国人へのキャリア支援において、日本語教育は単なる言語学習ではなく、キャリアそのものを支える基盤づくりだと考えています。そのため、私は単に文法や単語を教えるのではなく、「日本語をどうキャリアにつなげるか」 を意識してサポートするようにしています。

具体的には、以下のような支援が挙げられます:

  1. 職場で使う日本語の指導
     日本のビジネス現場では、敬語や丁寧な言葉遣いが求められます。また、報告・連絡・相談(ホウレンソウ)のようなコミュニケーションの習慣も独特です。こうした職場の”基本的な”日本語を学び、実際のシーンで使えるようにすることで、働く外国人の自信を育てます。

  2. 学習アドバイジング
     日本語学習は一人で進めると、どうしても壁にぶつかることがあります。仕事と両立しながら学ぶ外国人には、学習の計画や方法をアドバイスし、効率よく学べるよう伴走することが大切です。キャリア支援の一環として、こうした学習サポートも行っています。

  3. 目標設定とモチベーション維持
     「なぜ日本語を学ぶのか?」という目標が明確だと、学びへのモチベーションも続きます。例えば、「日本の企業で働きたい」「将来は専門職に就きたい」という目標があれば、それに必要な日本語レベルやスキルを一緒に考え、学習の方向性を示します。

実は、これで終わりではありません。仕事の場で適切なコミュニケーションができるようになると、「次の段階」へと進みます。それはまた別の記事で書きたいと思います。


キャリア支援の本質――その人らしい未来への伴走

キャリア支援とは、就職や転職の支援だけに留まるものではありません。その人が「その人らしいキャリア」を築けるようサポートすることが、キャリアコンサルタントの本質的な役割です。

特に外国人支援では、「日本語を学ぶこと」 がその第一歩になることが多いのです。言葉を学ぶことで新しい可能性が見え、自分の力を発揮できる場が広がります。そして、その過程で相談者自身が「こんなことに挑戦してみたい」「自分にもできるかもしれない」と、自ら未来を描けるようになるのです。


おわりに

外国人へのキャリア支援の現場では、単に日本語を教えるだけでなく、「学びをキャリアにつなげる」という視点が欠かせません。日本語教育や学習サポートは、その人のキャリアに新しい扉を開く力を持っています。

外国人支援に携わる中で感じるのは、言葉の壁を越えた先にある彼らの可能性の大きさです。日本語を学び、自分らしいキャリアを切り拓いていく姿を見るたびに、「日本語支援もキャリア支援の一つである」と改めて実感しています。

これからも、言葉とキャリアの両方を支え、その人らしい未来への伴走をしていきたい――そう強く思っています。

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