ナレーションを極める14 産後復帰 思いは招く
ナレーターの熊崎友香です。テレビ東京のWBSや、NHKアジアインサイトなどでナレーションを担当しながら、3歳と5歳の子供を育てています。
6年前、念願のレギュラーのお仕事をしていた私は、妊娠しました。高齢出産でした。番組にご報告する前に、こんな声が聞こえてきました。
「ナレーションのレギューラーを持っていて、妊娠して産休に入り、復帰するなんて前代未聞。聞いたことがない」
「妊娠おめでとう。番組はいつ卒業するの?」
たった6年前のことです。
しかも、私のことを、とても大切にしてくださっている方々の声です。
それくらい、まだまだ妊娠=卒業が当たり前でした。
しかし、逆にこんな声も聞きました。
「一年休むと言われたら、次の人を探すけど、3ヶ月だけ休んで必ず復帰するので待っていただけませんか。と言われれば、上司の立場なら、待ってみようと思う」と。
実は、この発言をしたのは夫です。夫は、アメリカで働いていた経験があり、産後、女性が復帰するのが当然だったそうで、こう話してくれました。
また、大手航空会社の管理職として働いていた女性がこんな話をしてくれました。
「10年以上前から、部下から妊娠の報告があったら”間髪入れず、おめでとう”と言わなければ、コンプライアンス違反として、通報される」と。
業界によって大分差があるのかなと思いました。正社員と、フリーランスでも大きく違うのかもしれません。
他にも、産後の女性の働き方を特集した「ガイアの夜明け」を観たり、「私たちは産後働く女性を応援します」と書かれたテレビ東京の(社員向け)採用ホームページを熟読し「復帰したい」私は、復帰に繋がる情報をたくさん集め、「きっと復帰できる」と信じることに決めたのです。
そして、マネージャーさんと一緒に、番組にお伝えしました。
WBSは、さすがです。復帰の約束をしてくださいました。懐が深い!大好きな番組にレギューラーで参加でき、さらに妊娠後も変わらず働いている。とても幸運です。
私が何かしたわけではありません。WBSの皆さんが寛大なのです。私がしたことは、ただあきらめなかっただけです。
私が知る限り、当時、地上波のレギュラーで妊娠後そのまま復帰できた例は、初めてと言ってもいいくらい、珍しいことでした。(今は、他にも何人も出産後復帰されている方がいます。最高です!)手前味噌ですが、今回は言わせてください。なんて素敵な番組なんでしょうか!!WBSの皆様、テレビ東京の皆さんに心から感謝しています。(そして事務所の皆さまにも家族にも)
産後、「小さい子供を置いて仕事に出るなんてかわいそうだ」そんな声も聞かれました。子どもが好きで、ずっと家にいるのが好きな人もいるでしょう。でも私のように、仕事が好きで、仕事に全てを捧げてきたようなタイプで、出産しても、やはり仕事が好きなタイプというのもいるようです。こんなタイプは、仕事があるから育児を頑張れます。育児だけして家にこもっていた産後二ヶ月。思えば、うつのような状態でした。コロナで数ヶ月、家にいた皆さん、どうでしたか?全然平気。という方もいれば、耐えられない!という方もいるでしょう。私は後者のタイプなのだと思います。
時間や体力を育児に奪われ、ナレーション研鑽の時間が持てないことに焦ったり、他の人と比べて落ち込んだりもしました。しかし、今は、初めてだらけの育児の経験が、自分を成長させ、仕事や番組にも貢献できる財産になると信じています。
ありがたいことに、最近、出産と仕事の狭間で悩んでいる、という方から、よくメッセージをいただきます。誰にも言えず、悶々と悩んでいると。そんな方へご紹介したい動画があります。この妊娠発覚騒動の当時、よく見ていた動画です。
「思いは招く」
北海道で宇宙開発をしている植松努さんの20分のスピーチです。出産のお話ではありません。宇宙開発のお話です。有名な動画なので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。何度も、何度も見て、励まされました。素晴らしい動画なので、もし今、何か悩んでいることがある方、いえ、悩んでいない方も、ぜひご覧ください。私がよく拝見しているユーチューブ「マコなり社長」も絶賛し、社員全員に必ず観てもらっているという動画です。20分ほどですが、ラジオがわりにも聞けると思います。
この世から「どうせ無理」がなくなることを願って。