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日本語教師の新人研修が好きな理由
わたしの仕事は中国人日本語教師が教えるテクニックを磨くお手伝いをすることです。
このコーチのような仕事が大好きです。
特に原石にような教師に出会ったり、今まで見えなかった可能性に気がついたりする瞬間が大好きです。
また時々、本人ですら気がついていなかった「素晴らしいこと」を見つけて、気づかせてあげるのも好きです。嬉しそうに微笑む新人たちの様子をみて、この仕事はやりがいがあるなって思います。
さて、今日トレーニングに参加していて、そんな原石に出会ったのでここでご紹介しておきます。
出会ったのは第二新卒で入社した新人日本語教師
今日、担当したのは20代半ばの中国人日本語教師です。L先生とします。
日本語レベルはN1取得住みで、大学でも日本語を専攻していた人です。すでに他の学校で日本語を教えたことがありますが、教える面での訓練は受けたことはなく、すべては自己流で悩んでいるようでした。
今日は初めての模擬授業です。
授業の内容は中国の日本語入試問題演習でした。
そもそも最初の模擬授業が問題演習ってストレスしかないだろうと思うのですが、日本語を教えたこともないHRが決めたことで・・・L先生もやりにくさを感じてるだろうなと思い教室に入りました。
案の定、新人教師Lさんの顔はこわばってました。
緊張のあまりすべてを詰め込んでします。
情報量が多すぎる。これが新人がやりがちなミスです。
自分の不安を和らげるために、あれもこれも詰め込んでしまい、一体何を話したかったのかわからなくなってしまいます。
当然、学生も理解できません。
時間は限られているので、早口になります。また学生も考える時間を与えられないので、途中で考えるのを諦めてしまうこともあります。すると教師はますますムキになって、さらに情報を詰め込もうとします。全くの悪循環です。
今日の模擬授業に学生はいなかったにも関わらず、先生はひとり力んでしまい、泥沼にはまってしまったかのようでした。
大量の情報をシャワーのように浴びながら、これは学生は理解できないだろうなとため息をつきそうになるのを我慢して、真剣にメモをしながら聞いてました。
すると気がついたことがありました。
情報は多すぎるが、説明は論理的だった。
日本語が話せることと、日本語を論理的に教えることができるのは別問題です。
多くの日本人は「考えるな、感じろ」という方法で、日本語を話しています。それと同じで流暢に日本語を使う外国人も、基本的な文法項目について説明を怠る、もしくは省く傾向があります。
しかし、L先生は丁寧にすべてを説明しようとしているようでした。
こういった気質、もしくはこだわりはとっても大切です。なんとか丁寧に教えたいというL先生の気持ちを、早口の説明を聞きながら感じ取りました。
「どうしても教えたいことを、1つだけ選んでください」
わたしがしたアドバイスはこれだけです。
「どうしても教えたいことを、1つだけ選んでください」と言うと、L先生は真剣に教案を眺め、しばらくして顔をあげました。先生と目が合いましたので「選びましたか」と聞くとうなずくので「それ以外は全部消してください」というと、目をまん丸にしていました。
そして「もう一度説明してくれますか」と聞くと、L先生はとっても丁寧にもう一度授業を再開しました。
とってもわかりやすくて、素晴らしかったです。
それで「最後の説明とっても良かったですよ!さすがです」といって今日の訓練を締めくくりました。
L先生の笑顔を見て次回も楽しみに
模擬授業の後半は、L先生もいきいきと説明を行えて、手応えを感じているようでした。
先生と次回の模擬授業のために簡単なアドバイスをして、次回の予定を確認しました。
L先生が「次回が楽しみです」と言われたので、とっても嬉しかったのですが、ニヤニヤして気持ち悪いと思われるのが嫌なので、すっごい真面目な顔で「わたしもですよ」と答えて教室を後にしました。
本当に次回が楽しみです。
自分は教壇に立たないけど、数百人の学生を抱えている気分はする
毎月、新人が入ってきます。彼らは訓練プログラムが終わったら中国各地の高校へ派遣されます。
わたしは本部で訓練プログラムに参加する毎日です。
実は、自分が教壇に立てないことを、すこし残念に思っていますが、それでも、いわば教え子を通して数百人の高校生に日本語を教えてるんだと思うようにしています。
さて今週はL先生以外に3人の模擬授業に参加します。
先生たちの可能性に気がつけるように、自分の感受性も磨いていかないといけないなと感じてます。
今日も最後まで読んでくれてありがとう。また明日!
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