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「消えた鍵」ショートショート
山田はその日、いつも通りに家を出て仕事に向かおうとした。しかし、玄関を出た瞬間、ポケットに入れたはずの鍵が見当たらないことに気づいた。「あれ?どこに置いたんだっけ?」
慌てて家の中を探し始めた。テーブルの上、キッチンのカウンター、ソファの隙間、どこにも鍵は見つからない。数分間探し回ったが、鍵はまるで消えてしまったかのようだった。
山田はふと、昨夜のことを思い出した。仕事が遅くなり、家に帰ったのは深夜だった。あまりに疲れていたので、無意識のうちにどこかに置いてしまったのかもしれない。しかし、それでも見つからないのはおかしい。
時間が迫り、山田は仕方なく仕事を休むことにした。そして、鍵を探し続けることに決めた。「こんなことがあるなんて……」と、ため息をつく。
午後になっても鍵は見つからなかった。山田は次第に焦りを感じ始める。「もしかして誰かが……?」と疑念が頭をよぎる。だが、家の中は荒らされておらず、窓も閉まっている。
夕方、山田はもう一度玄関に戻り、再び鍵を探そうとした。その時、不意にポケットの中で何かが音を立てた。驚いて手を入れると、そこには朝見つからなかったはずの鍵があった。
「どういうことだ?」山田は混乱したが、結局答えは出なかった。ただ、どこかで時間がずれてしまったかのような、奇妙な一日だったとしか思えなかった。
山田は翌日、何事もなかったかのように仕事に向かった。しかし、ふと気づくと、彼は昨日とまったく同じ服を着ており、同じポケットに鍵が入っていることに気がついた。
「もしかして……」と山田は立ち止まった。
その瞬間、彼はまた、鍵が消えていることに気づいた。