【短編小説】BARクロギツネ 午前3時の訪問客…
作/画 Bourbon Samu 50.5
【まえがき】
そうですね。なぜか寂しくなるとBARって探したくなりますよね。物悲しい秋なんか特にそうです。誰かに教えて貰ったお店もいいけど、自分で見つけたお店なんか最高でしょう、多分教えたくないかもね。迷路のような何度行っても迷子になりそうなお店って、それだけでワクワクしてしまいます(私だけですかね?)。ここは新宿、とあるビルの2階。クロギツネ兄弟が経営する酒屋の2階。そこには綺麗なキツネのママさんがBARをやっています。今日もまた異次元の通路を通ってお客様がやって来るようです。
「いらっしゃいませ!どーぞー」
「皆様のことが好きです♡」
優しいロギ姉さんの言葉は、いつもすべてを癒すんだよな!みんなこの言葉が好きです〜みんなですよ。ただ姉さんのお店には、なかなか行けないんです。そこって迷路なんですか?チャレンジしても無理なんです。私はあるところで姉さんの噂を聞いてから4回チャレンジしました。結局、無理でした。最後の通路を抜けて目の前が眩しくなったと思ったら、2丁目交差点で寝てました。…くやしいです。それでも諦めませんからね。姐さんに逢うまでは何回でもチャレンジしますよ。
「そうなのよ、ごめんなさいね」
知ってるよ。
別に姉さんが悪い訳では無いんだよね。
今日はお月様がとても綺麗だ。
今日も1人、明日も1人
見えないドアを探している。
「ありがとう嬉しいわ」
美しい目をした姉さんは、いつも遠くを見つめてる。
【第1話 ツロ酒店】
〜新宿は種族の坩堝(るつぼ)〜
これだけ人が集まる場所には、それなりの磁場が出来てしまう。そして一定方向に持っていかれる。エネルギーとはそういうものだ。すでに磁場が固まってる場合、どんなに叫んでも誰も聞いてはくれない。反対に同じ波動を持っている者たちからすれば、とても居心地の良いフィールドとなる。
見たことのない種族も沢山いる。
我々が人間と見ている者の中に、相当数「宇宙存在」が紛れ込んでいる。宇宙存在は圧倒的パワーで何かの目的を達成しようとしている。交差点ですれ違う男と女、いや性別も判らない者たちの中にも大勢隠れている。昼夜、蠢(うごめ)くこの街には、違和感無くピッタリな存在だと言える。
あと、動物としてこの地球に存在を許されているエネルギー体もいる。人間の領域まで魂が進化していない存在。しかし肉体的には大きく、身体能力も優れている熊や虎、馬や鷲、犬や猫がそうだ。まだまだいるけど…
しかし、牛や豚のような家畜はその目的が大きく違う。
自分の身を捧げる業をもって、繰り返し繰り返し転生する。食べられる事を前提に種族の運命を形成してるわけだ。修行形態が違うこの坩堝の中で、毎日食糧として身を捧げているのには、それなりの意味があるのでしょうね。生まれた時から檻の中に入れられて、とても可愛い目をしている生き物なのに、食べ物として扱われている。そんな正業をしている動物たちに酷い扱い方をしてる人間は、今度逆の立場でその心境を味わう事になるかもしれない。
家畜では無くその動物的な能力が優れてる中にキツネがいる。生物学的には犬科タヌキと同じだ。しかしキツネは不思議だ。その中でもクロギツネは霊的パワーがさらに強い。
……………………………………
〜今日もツロ酒店〜
〜開店は夜の7時からだ〜
シャッターを開ける音はいつも元気MAXだ。決まって開けるのは弟のケド(Kedo)。MAXなクロギツネだ。2メートル近い身長と、鍛え上げたマッチョな筋肉は配達にはもってこいだ。
「ヨイッしょ!っと」
軽々とビール大瓶4ケース運んで行った。今日のひと苦労作業は暁月ビルだな。ほぼ台車が使えない急な階段5階までだ。
「まっ!いい運動になるか!」
納品されたビールケースを奥まで運んで行った。ツロのアニキがやってきたのはその後だった。相変わらずデカい、弟より10センチは身長が高い。
「ケドよ!暁月ビルに行くのか?悪いな」
納品が大変な事はツロも知ってる。いいお客さんなんで、大切にしてる。そのお店は狭くて探しづらい場所にある。
〜何でかって?〜
人間に見つからない様にするのもあるが、異次元の通路を抜けて辿り着く前に、幻影を見せる必要があるからだ。ツロ酒店も同じだ。この店に来ることは人間には不可能だからだ。
「大丈夫だよ兄さん」
「いい運動になりそうだよ」
相変わらず筋肉系の話がメインの兄弟だ。ツロも実は負けてないマッチョだ。お互い自慢の筋肉を見せびらかすのが趣味だ。いいことだ(°▽°)
「そうか!気合入ってるな」
仲の良い兄弟はいつ見てもいいもんだ。
「そろそろ姉さんたちがやって来るな」
ツロは階段を見上げた。時刻は午後8時半を回っていた。2階を借りて貰ってる白ギツネのロギ姉さんだ。
「姉さんは9時半くらいかもしれないよ!」
ケドはなぜか知っていた…けど、別に気にしなかった。妹もここでアルバイトしているので家族みたいなもんだからね。
「今日はちょっとだけ遅いんだね!」
「同伴でもしてくるのかな?」
アニキの洞察力は凄いと思った〜正解だよツロ兄貴〜
さっき居酒屋で変な帽子かぶったお兄さんと食事していたのを、ちょうど目撃したところだった。そうすると大体9時半出社が相場と決まってるね、この世界は。
〜そんな事はどうでもいいと、
ケドは早々に仕事に戻った。
今日もまた
にぎやかになりそうだな。
【第2話 バーボンサム】
「サムさんお久しぶり」
小瓶のビールを注ぎながら姉さんは言った。
しばし…沈黙。
〜グラスの音…
「3年ぶりです」
顔は見えないがサングラスしている男の表情は爽やかだ。黒いマントが背中から垂れている。
「少し無理しました」
ロギ姉さんは笑っていた。
「色々な人間を見てきました」
ロギ姉さんはわかっていた。
同じ匂いがする存在は大体わかる。このひと何かあったのでしょうね。あまり語りたがらないから。
「同伴なんて何年ぶりでしょうね」
「はい、あの時はお世話になりました」
彼には底知れぬ波動を感じたことがあった。懐かしい郷愁、透き通る感性。また来てくれると思っていた。やはりこの時が来たのね…
「嬉しいわ♡」
彼とはチーママ時代からのお付き合いで、その時は別のお店でした。
前から聞いてみたい事があったロギ姉さんは、
「そう言えば再び開かれる世界があるって聞いたわ」
「今も同じ気持ち?」
料理が順番に出て来た。炙りイカが美味しそうだ、
「その話ですか」
「多少は変わりましたよ」
2杯目のグラスが空いた。
「あまり期待しない方が…」
グラスを置く音…
「そうなの...?」
姉さんは新しい話でも聞けるのかと実は期待していた。
「並行世界の事ですよね?」
「そうそう!その話だったわ」
サムは自分に起きた禍を思い出しながら話を続けた。
「やっぱり自分が選んだ道が、次の次元を決めているようです」
「都合よく偶然に、思ってもいない世界が開く事もたまにはあるでしょうが、カゲロウのような残像でしかないようですよ」
「そうなのね、もっとハッピーな話だと思ってたわ」
〜残像ね!なるほど納得だな。運命を決定づけるこの次元の修行は、おのおの曲がり角で常に選択が要求される。ミツバチは次にどの花に行くかで運命も変わる。沢山蜜がある花か、そうでない花かは選択の結果だ〜
「何だか夢が無くなっちゃったみたいだね!」
サムは申し訳無さそうに帽子を直した。
かつてのサムは引き寄せの術ではないが、先が読めて都合の良い状況に持って行くことが出来る男だった。なにしろ決断は早かった。むしろ早すぎた。先が読めて何でもその通りになると、小人は大きくなったと勘違いするものである。
「成功する路線と並行して、脱線する路線もあったようです。成功を続けていこうとすれば、脱線する路線を常に見ていかなければ厳しかった、ってことかなあ〜いま思うと…」
サムは振り返ってそう思った。
〜まあ確かに〜 可能性の連続であればすべていい事を期待したいものだ。有頂天になっている時なんか、失敗するなんて誰も思ってもいないしね。引き寄せの法則なんて知らなかったけど、自分の前には一塊の雲すらないと思っていたからね〜若かったってことか!
「でも、新しい扉はまた開く事もあるんでしょう?」
ロギ姉さんはちょっと感じる所があった。
「そっ、そうですね!」
「そうです、開くと思いますよ」
いきなり聞かれてサムは戸惑った。実際閉まった扉は自分の前に訪れた訳だから、その後のアクションはもうありませんって言うのは何だかカッコ悪い。並行世界のハシゴが重なる時に、飛び移ってくる奴だって居るわけだからね。
確かに並行世界は同じ方向に向かって、ユラユラ揺れながら進んでいる。進んだり戻ったり、ゆりかごの様に揺れてる夢見てるような世界だろう。この世を超えた世界も似た様な感じかもしれないな。生きている間にその扉を見る事ができる人は稀でしょうね。
「強く念じてみて下さい、新しい扉が開くかもしれません」
サムはそう言ってみたものの、何か説得力に欠けていた。
「新しい扉って?」
ロギ姉さんは再び何かを知っているかの様に強い調子で聞いた。
しかし…その眼の奥ではくすっと笑っていた。
「そうです」
「強い想いが空間をねじ曲げるかも?…しれ…ません」
〜サムはわかっていた〜
当時、念の力が非常に弱くなっていた自分がいた事を。
もう1人の自分って、今何しているのだろう?
あのまま突っ走っているのだろうか?それとも…
過去が蘇ってきた…そして身体が熱くなってきた。
サムはbourbon🥃が無性に飲みたくなった。出てくる料理はとても美味しいので、これ以上食べていたらバーボンの風味が壊れてしまいそうだ。
〜バーボンにツマミは要らない〜
確か3年前のTurkeyがキープしてあったな。
「行きましょか!」
ロギ姉さんはあとの話はお店でした方がいいと思って、タイミングをみていた。
この世界は想いの世界、思った事がなぜか時空を超えても実現してしまう不思議な世界。消えていく世界も、新たに現れて来る世界も本人の想い次第。サムさんも辛かったのね!でも私のところに来れば変わるでしょ。今日は本当に良かったわ。いつものバーボンも用意してあるしね!
「タクシーが来たみたいです」
厨房の奥から店主が言った。
「ご馳走様でしたサムさん」
〜久々にサムはご機嫌だった〜
心の中を見れる人がいるならば、サムに新しい扉が現れて来たのを見たに違いない。肉体の中にスッポリと入っている想いが、扉の前で薄っすらと光ってきた事を感じた事でしょう。
そしてタクシーの扉は…
静かに閉まった…
【第3話 午前3時の訪問客…】
ちょうど片付けも終わり、
黒檀のカウンターに静寂が訪れた。
不思議な1日だった。
サムさんが帰ったあと来たお客様は1人、遠い星雲から来た意識だった。ク•マゼラン星雲は何処にあるのだろう?その星は強い生命体が弱い生命を淘汰していく逆肉強食の世界。その中で食べられてしまったネコ型生命体の意識を、ロギ姉さんが受信して現象化した存在がやって来たのだ。
「ほんとうに可哀想な話だったわ」
最後まで名乗らなかったネコ型生命体は、数百年に及ぶ奴隷支配の悲惨さを語った。身長50メートル以上の爬虫類型生命体を筆頭に、数十種類の戦闘型種族はそれぞれの惑星で覇を競い合っていた。負けた種は全て食された。科学技術の優れた種族がやはり強かった。いかに負けないように肉体そのものを改造して、どんな環境下でも生きていく術を身につけていた。その中でネコ型生命体は、ほぼ餌の扱いを受けていた。食われるために育てられる運命は何ともし難い。
恐竜型はドラゴンの様な種族、そしてアヌビスの様な犬型戦闘種族もいた。そんな中、巨大グマと巨大ウサギの様相をした種族は平和を希求し、他を思いやる優しい心を持った存在だった。その惑星は大きい。地球の10倍くらいは雄にある。そんな惑星が所狭しと宇宙空間にあったら、もはや逃げ場は無いでしょう。
もし惑星に意識が存在するのなら、戦闘と破壊、強者の論理は許されるのか?この世界を統べる意識って一体何を基準にしているのだろう?高次元世界はわからないけど、いま生きてる宇宙、我らの異次元、3次元空間って何のために存在しているのか?生まれてくる各種生命体の意味、そして今現在の自分たち小さな意識は一体何処へ向かうのか!
ロギ姉さんはしばし考えを巡らせた。
「愛がなければダメよ!
簡単な事じゃないの」
思わず独り言が出てしまった〜
確かにその通り…でも結果的に色々な種族が存在してしまった。存在そのものを許されている。その想いに応じて姿形が変わり、その中に入っている意識はたんたんと成長していく、そんな不動の法則の中にいる。
〜弱肉強食の論理なんて変だわ!〜
この世界に共通するものって何?全宇宙はどれだけ広いの?考えれば考えるほど困惑してしまう。
〜でも意外とシンプルな事かもね〜
ロギ姉さんはメープルのキャビネットからサムのバーボンボトルを拭き始めた。近々また来るかもね!そう思いながら上段のグラスに写った自分を見ていた…
……………………… (^^;
〜午前3時になった〜
「あっ地震?」
「いま揺れたわ!」
小刻みにビル全体が揺れた感じだ。誰か階段を上がって来てる様でも無いし、姉さんは少し様子を見るように、グラスを吹く手を止めた。
「また揺れたわ!」
今度はビルでは無くて、キャビネットの中のグラスが一つだけ揺れてる。普段使わない年代物のグラスだ。思わず姉さんは手を伸ばして、そのグラスをカウンターに置いた。しばらく見ていると真ん中の空間が光り始めた。ブルーがかった宝石のような状態になって行った。
「まあ綺麗!」
ロギ姉さんは見惚れていた。そのうちその宝石の中から声がして来たように思えた。何か言ってる!宝石の奥の方から聞こえる。
「誰?」
ロギ姉さんはちょっとだけ厳しい目をした。
「わしにも一杯くれんかの?」
ごく普通に鼓膜で振動する音域だった。
「えっ!」
「どちらさん?」
ロギ姉さんは面食らった。もっと荘厳でもっと怖い人を想像していたからだ。いきなり近所の立ち飲み屋で、小銭数えて飲んでる爺さんみたいな人の声だったからだ。
「はい大丈夫ですが、
そんな小さなところにいたら、
何もお作りする事ができませんわ!」
「そうじゃったの!ではこうするわい」
お爺さんの様に喋る意識は、カウンターの上に現れた。それはゴールドとブルーに輝く蝶だった。たぶん本体は違うのだろうけど、ロギ姉さんを驚かせない様に、配慮して出現したようだった。
「大きな存在でいらっしゃるのね」
「無理なさらなくても結構ですよ」
ロギ姉さんはさっきの地震といい、グラスに入った時の強烈な磁場変動といい、唯ならぬお方とお見受けしていた。最後まで正体がわからなくても良いお方として、もてなそうと思った。
「深淵なマリアナ海溝と、そびえ立つエベレストを足して割った様な、マリンブリーに澄んだ飲み物があればうれしいの!」
群青のような存在か!色は青く透き通ってる事ね!ロギ姉さんはアイスBOXから綺麗な氷を出して、おもむろにブルーのリキュールに浮かせた。徐々に融合していく世界はとても素敵だった。
そのゴールドブルーの蝶🦋は、嬉しそうにその氷の上に乗って、渦巻状の長いストローからブルーカクテルを味わっていた。
「あなたの事は色々聞いておるよ!わしは優しい心を持っておる貴女を常に見ておった!どこで見ていたかは内緒だけどな!」
「まっ時空が動くたびに映像が来るからの〜」
「貴女は未来が見えるのじゃな!そんな感じがするわい」
「ええっ、私のこと言ってます?」
ロギ姉さんは珍客に驚く様子もなく
「お店って初めてですか?」
グラスの周りを楽しそうに飛び回っている、ブルーゴールドの蝶にさりげなく聞いた。
「初めてと言えば半分正解だな!うーん実は昔、誰かさんの帽子に隠れて来たことがあったっけな」
「その時は寝ぼけておったから記憶が無いけどな!」
ロギ姉さんは何となく感じていた。この感覚は初めてでは無かった。やはり大きな意識だ。一点に集約して、尚且つレベルを落とせる能力は、並外れた能力だと思う。
「何てお呼びしたらよろしいかしら」
ロギ姉さんは尋ねた。
「地球…いや、どうしよう…」
「そうだな〜アースって呼んでくれ」
「アース?地球さんって事ですね」
「まあそんなもんだよ、ハッハッ」
アースそして地球さんって上手くかわした感じだな…。彼は地球意識の端切と言うか地球神そのもの。あるところではGa地球神と呼ばれている。地球の管理責任者みたいなもんだ。せっかく綺麗な星を提供しているのに、使い方がおかしいヤツらがどうしても出て来るので、定期的に注意して歩いてる存在だ。
必要に応じて自分の意識を無限大に広げたり、コップの中に入れたりするくらい朝飯前だ。しかし何でまた、そんな方がBARクロギツネに来たのでしょうね?
「ふと気付くと、ここを受信してしまうのじゃ!」
地球さんは🌏お店の中を探索するドローンの様に、ふわふわ飛んでいた。
「色々な意識が集まるところはそんなにないからね」
「それも次元を超えて…」
妙に詳しい地球さん。それからしばらくして、キチンと挨拶して消えていった。わずかな滞在だったけど、ロギ姉さんは幸せな気分にさせてもらったようだ。
「面白い方だったわ♡
また来てくれるかしら」
〜その瞬間〜
「おお〜!また来るからの」
小刻みに…
さっきのグラスだけが…
揺れていた…。
【第4話 石像の意識】
「ウォッカとジンが少ないわ」
ロギ姉さんは一階のツロ酒店に電話した。
「毎度ありっ!了解っす」
相変わらずケドが元気よく電話に出た。ほどなくしてヘニンガーのダークも一緒に運んで来てくれた。
「今日は姉さん1人です?」
妹のショーコがアルバイトしている関係でちょっと気になった。妹は週3で働いている。最近は、お客さんに声をかけられるようになって喜んでいるようだった。
「ネイさんはそろそろ来そうね
ショーコちゃんはまだじゃないかなぁ」
色々と欲しい物がありそうだから、買い物でもして来るのかな。ケドはテキパキとお酒を定位置に置いていった。
〜それにしてもお店寒いな〜
いつも以上に寒い店内だった。
壁に掛かっているリモコンは21度を示していた。
「姉さん!店寒くないですか?」
ロギ姉さんもそう思ったらしく、リモコンを取って確認した。
「あら、これじゃ寒いわね❄️」
「来た時は26度だったような気がするけど…」
「今日は寒いところからお客さん来たりしてね!」
ケドは冗談っぽく言って階段を降りていった。
お店がオープンして、そこそこ馴染みのお客も来た。チーママのネイさんもショーコさんも笑顔を振りまいてくれた。これがBARクロギツネの良いところだ。カウンターの中を手際よく3人が動きまわり、お客の要求を次から次へとこなしていく。イラつかせることは全くない。
クロギツネに新規で来るお客はいない、必ず予約を入れることになってるからだ。お客様のご希望に添える様にお酒、お料理が事前に用意される仕組みだ。どの世界から来ても対応できる様に準備している。年に何回か突然現れる新規客はいるけど、それは異例中の異例だ。
午前2時30分、ちょうどチーママとショーコちゃんが帰った頃、再び店内が寒くなり出した。リモコンは21度を示している。
ロギ姉さんは誰か来る予感がした。
それも生身の生き物では無さそうだ。寒さはさらに強くなっていった。
「ここまで寒いと言う事は
あまりいい思いをされて来なかった
お方かもしれないわ…」
ロギ姉さんは心の中で結界を四方に張った。これで何が起ころうとも瞬時に封印出来る。
「大丈夫ですよ、お入りになって」
「もう誰も居ませんから」
ドアの内側が白く凍りついてた〜入口のドアノブが回った〜吹雪が舞い込むかと思うくらいに見えたが、次第に収まっていった。
「申し訳ない…」
「我々も敵から身を守るために吹雪の結界を張っている。申し訳無かった」
次第に結界が解除され白いモヤが晴れていった。
「さぞかしお疲れだったでしょう」
「ど〜ぞお入り下さい」
ロギ姉さんは入って来た2人が戦士であると瞬時に気付いた。身も心も疲れ果てている状態だった。凍りついたまま下を向いている。
「まさか凍っているの?」
いや違う。何かの像だ。現象化しているが、生命反応は無い。一体如何なる存在なのか?
「石像さん…ですか?」
ロギ姉さんは自らの結界を解除しながら聞いた。
「ハイ、その通りデス。石にされマシタ。私達は遠い過去…何万年もの昔に…この地球で…或る生物と戦いそして敗れ去ったアンドロイドです。当時は人間の意識と混在してましたが…残されたデータの一部デス」
「人間モドキだった…のですね?」
ロギ姉さんは腕の無い男を見ていた。髪がちょうど肩のところまで伸びている様に見える、ヘルメットの様なものをかぶっている男だった。
「その時戦った人間は転生輪廻のルールの中に組み込まれマシタ。しかし人工知能に近いデータの私は石像の中に封印され、南極の壁の向こうに置き去りにされマシタ。猛吹雪の中で未だに存在しているのです…」
何とも厳しい世界だ。遠くを見続けたまま、誰とも話す事もなく何万年も置き去りにされた石像ってことか。その中に封印された意識とは。心を失う直前だったのだろう…
「今日はゆっくりされて下さいね」
〜ロギ姉さんは彼らの意識を辿っていた。深い悲しみが氷の如く封印されていた過去。あの100年にも及ぶ戦いは一体何だったのか!或る生物とは一体何なのか?今日は決して聞く事はしないでしょ〜
「アリガタイ…オコトバ…ウレシイ」
凍りついた意識が氷解するのには時間がかかる。僅かな時間だけど話を聞いてあげることにした。姉さんはこの店の存在をどうやって知ったか気になっていた。もしかしたら…。
「ここに来るまで大変だったでしょう
どなたかに連れて来てもらったのですか?」
「数日前だったと思うが、氷の壁が何キロにも渡って崩れ去った日があった。アースとか名乗る存在が我々を見つけ出してくれた。どうやってここに来たかは覚えてないが、凍りついた潜水艦の前に意識を…アワセルヨウニ…と言われ…そのあとずいぶん暖かな気分になっていった様な気がする…」
そうハクトと名乗る男が言った。
「ああ〜地球さん🌏」
ロギ姉さんは何となくそんな気はしていた。普通の出現では無いからだ。やはりアースさん、そして地球さん🌏でしたか…
「またお会いしたいわ」
〜グラッ〜グラッ〜!
「うん!地下が揺れたか!」
トーチスと名乗った存在は揺れる残像の中で言った。
〜いまだ店内は21℃のまま。しかし2人の意識は氷解してきた。それは、そんな簡単な事ではないでしょうが、どんな小さな存在であっても存在理由はある。たとえデータであっても…
〜見捨てない心が重要なんじゃ〜
アースさんが言っている…そんな気がした。
「ちょっと地震ではなさそうね!」
「寒いから何かお飲みになってね♡」
店内は寒い。しかし2人にはちょうどいいらしい。松葉を入れたホットジンが2人の心を温めている。
〜今日もいい日になりそうだわ〜
ロギ姉さんは湯気の立ち上るグラスを眺めて言った…
「ケドの予想した通り〜」……(^.^)
【第5話 迷い地蔵】
〜今日はすこし雨模様ですが、夕方には止むでしょう〜
バーカウンター隅に置かれた端末(B.FOX)からアナウンスが入った。ロギ姉さんはちょっと聞いてみた。
「B.FOX!今日のお客さんはどなた?」
「それはわかりません。
お役に立てなくてすいません」
なるほどAIも予想不可能って事なのか。確かに回線そのものが違うので無理だろうと思った。しかしロギ姉さんには連絡が来ていた。森の人、いや森ではなく「杜」の人らしい。そして3次元とは異なる世界から来るらしい。
「杜の人って素敵だわ」
姉さんは初めて来るお客に大体の目星をつけるため、軽くトランス状態に入っていった。
しばらくすると…
〜薄っすらと二人が、杜の中を歩いているのが見えた〜
何となく修行僧の身なりだ。ぼんやりとしているので詳しくは見えないが仲がよろしい様です。彼らは人間だったのか、それとも人間をしながら、半分肉体から離れているのか、その辺はわからない。柿色の袈裟に似た服を着ているのが見えた。
「面白そうな人たちだわ」
ロギ姉さんはある程度のメニューを用意するため、気付いた事をノートに書いていった。
「久々だわ!近い世界からのお客様」
そう言ってる間にチーママのネイさんが入って来た。
………………………
「姉さん!おはようございます」
「雨上がりましたよ」
「そう言えば生酒が無かったと思います。
チョット下で見て来ますよ!」
「あっそれなら桃源って言うお酒があると思うの!
それお願いしてもいい?」
「は〜い!」
チーママのネイさんは階段を降りていった。ちょうど店主のツロ兄貴がレジのところで帳簿を見ているところだった。
「お酒いつもの!セットでお願いね。あと桃源ってお酒あります?」
「桃源?武陵桃源の事かな?」
〜うちには無いな〜
「ネイさん!桃源はお取り寄せでお持ちします。
あとで持って行きますね」
ネイさんは会釈してお店に戻った。ツロは…
「桃源か〜 今日は珍しいの頼むね」
いつもは純米大吟醸の黒狐と決まっているのに…
「悟りを求めているお客でも来るのか…」
早々に知り合いの酒屋に連絡していた。
3次元空間で修行中の人間はBARクロギツネに来る事が出来ません。途中ではぐらかされてしまうんです。幻影を見せられたり、迷子にさせられたり、気持ちは来て欲しいのですが、構造的に難しい事になっているのです。
チーママがちょうどテーブルを拭いている時にドアが開いた。慎重な面持ちで入口で話している2人が見えた。
「どーぞー お入りになって!」
ロギ姉さんのお決まりのフレーズ。空間が明るくなる瞬間だ。2人はお土産を忘れてしまった事にちょっと気が引けていたようだ。でも杜の中にはお店も何も無いし、強いて言えば自然になってる果物くらいだろう🍎。
「お客様…初めて?」
ロギ姉さんは口髭を蓄えた、お坊さんには見えない男に向かって話しかけた。
「そ、そう…初めてです。」
2人は落ち着かない様子だった。こんなところに来てはいけないんだって言うオーラがかなり出ている。何のご縁でここに来たのか知りたいところだけど、取り敢えず様子見です。
「誰かのご紹介でしたか?」
「…… 」
たぶん誰かの念を辿って来たに違いないが、その辺はいずれ分かることでしょう。ネイさんは奥のテーブル席に座った2人を、カウンターに来るように優しく促した。確かに修行僧が来る場所では無さそうだ。2人は俗世に居た時に結構ヤンチャしていたようにも見受けられた。相当の反省期間を経て今に至ってるなと…ロギ姉さんは見抜いていた。
「とり…あえず…ビールでいいですか?」
「申し訳ない。最初水飲ませてくれるかい?」
髭ズラの男が言った。
「そうそう!水良いね」
もう1人の男が言った。完全にお坊さんになりたくて毛を剃っている感じでは無く、自然に淘汰された、いぶし銀の頭をしていた。
「少々お待ちになって♡」
喉が渇いていたのでしょう。一気にグラスを空にすると、2人同時に、
「とりあえず生(ナマ)!」
お馴染みのフレーズを口を揃えて言った。しばらくして気分も良く会話がはずんでくると、髭ズラの方が聞いてきた。
「日本酒って置いてある?」
チーママは黒孤を出そうとした。その時。絶妙のタイミングでツロがドアを開けて入って来た。
「うわ!デカい」
お客2人がたじろいだ。
「ネイさん!注文の酒ここ置いておきますよ」
筋肉隆々のクロギツネが軽々とお酒を運んで来たら誰だってビックリするでしょう。ツロは早々に伝票を置いて帰って行った。
「ありがとうツロさん♡」
ロギ姉さんはドアを閉めつつ階段の下をしばらく見ていた。
「ちょうど今入荷したばかりの冷えた日本酒があるわ」
手早くお盆に珍味と四合瓶を乗せ、2人の前に出した。
「あっ!コレは…」
髭ズラの男が指さした。
「俺と同じ名前だ」
お酒の瓶に「桃源」って書いてある。まさしく髭さんと同じ名前。ロギ姉さんはわかっていた。〜桃花源記〜武陵桃源〜 いずれも俗世を離れた理想郷を連想させる言葉だ。
「では桃源さんって、お呼びしてもよろしいかしら(^.^♡」
桃源はビックリして、隣の「いぶし銀頭」の顔を見ていた。いぶし銀は下を向いていた。噂通りのママだった。完全に見抜かれている。いぶし銀も既に軍門に下った歩兵の様になっていた。
「じゃあ俺は何て言うか分かる〜?」
いぶし銀頭は甘えるように聞いてみた。
「えっ!ちょっと待ってね♡」
「ノブちゃんでいいかしら?」
「うおー当たった 人間だった時に親に付けてもらった名前ですよ」
「コワイね!何でもわかっちゃうじゃん」
〜ヤバい全部お見通しだ〜2人は隠しても気取っても演技しても無理な事がわかった。一応悟ったわけだ。ちょっと低い悟りですが、諦めの境地って言うのもありかもしれませんよ〜
チーママのネイさんもロギ姉さんも大いに笑った。杜に行った経緯、杜での生活、自分たちは何者か、隠す事は無かった。久々に素直になれた。こんな晴れ晴れした気持ちは何十年ぶりだろう、あゝ嬉しい。
「姉さん!我々のいるところは理の杜って言います。良いことも、そうでない事も沢山あります。本当に求めるモノがわからないんですよ!」
桃源は今の自分を吐露する様に、目の前の日本酒を飲んだ。
「どこにいたって、わからないものはわからないと思います!
桃源さんの様に、求め続けている姿とても素敵だわ♡」
〜桃源は嬉しかった〜
自分がこの道に入ったのも、俗世に嫌気がさしたからだ。両親は早く死んでしまった。兄は仙人になった。自分は今、横にいる信行(シンギョウ)と出会って色々学んでいる。信行は辛い思いをして来た。何とかしてあげたい。はるか彼方にある天竺にはいつになったら行けるのか、そんな事考えてもしょうがない。今日素晴らしい出会いがあった。不思議な出会いだった。このご縁を付けてくれたのは理の杜に迷い込んだバーボンサムだった。
2人が帰ったそのあと、
ふたたび静かに、次元の扉が閉まった…
【第6話 鬼の涙】
酒楽鬼(シュラキ)は彷徨っていた。
あてどもない旅はもう疲れた。今、森の入口付近の切り株で休んでいる。2メートルある身長が小さく見える。
「もういい。疲れた」
「俺の実力じゃ無理だな」
自分なりに分析して生きて来たけど、好き勝手に生きて来た男は、最後は結局鬼になってしまった。ツノは2本クッキリと頭上に生えている。かつてはそこそこの会社の副社長まで登り詰めた男だったが、蓋を開けてみるとハリボテの人生だった事に気付いた。
うわべは適当に言って、はぐらかす事が多い男だったが、何も持ち合わせていなかった。他人のふんどしで勝負するのでは無く、他人のふんどしを盗んで仕事していた感じだった。
他人の言う事には耳をかさず、最後は自ら後始末をする羽目になったようだ。でもまだ死んではいない。なぜか彷徨っているだけだ。霊体が強いので実質「生霊」になっているかもしれない。定期的に大学病院のナースコールの音がしているので、なんとなくそう判断できた。
ロギ姉さんはそのシグナルをキャッチしていた。
「可哀想な人だわ」
その瞬間、次元の扉が開いた。同通が始まった。鬼になってしまった男はこちらに向かっている。何かを求めているけど、本人も今はわからないでしょう。実世界の法則に縛られ過ぎた末路は哀れとしか言いようがない。
体が大きいお客様なので、ツロさんとケドくんにも、少し協力してもらおうかな!
「今日は少し緊張するわ」
それは久々の負のエネルギーだからだ。病院から旅立てば間違いなく魂の反省ゾーンに行くでしょう。それもあまり良い世界では無さそうだし。ゾーンは多少違うけど、裏側の仙人界で再び自分を見つめ直した方がまだマシかもしれない。
〜時計の針は夜の10時を少し過ぎたあたり〜
ヤツが入って来た!
「やってますか?」
低く地を這う様な声だ。
「いらっしゃいませ、
どーぞー^o^」
いつものロギ♡スマイルでお出迎えだ。
やはりデカい男だった。それだけで他を圧倒する威圧感はあるな。生まれた時から比較される基準が、デカいことだったのでしょう。本人はそれが嫌だったのかもしれない。ロギ姉さんは後で幻影を見せることにした…。
「今日は呼ばれた様な、自分から来た様な…
不思議な感覚だなあ!まあいいや」
鬼は懐かしい酒の匂いに、久々に心躍っていた。おもむろにタバコに火を付けて吸い始めた。
「タバコ🚬お吸いになるの?」
「習性だね。何か落ち着かなくて」
常に落ち着かない人生だったのだろう。定期的にみせる貧乏揺すりが物語っている。期待されればされるほど、本人の心は不安定になり、何かにすがりたくなる。しかし周りはそう見てくれない。更に期待し、それなりのポストにつける事で一段落する。幼少の頃から柔道でもやってたのでしょう。やればやる程ランキングは上がっていき、自分でもビックリしてたのかもしれません。全てはガタイがいいからでしょうね。
気分良くタバコ吸い終わると、
「冷たいビールありますか?」
意外と物腰の低い言い方だった。しかしこの酒が自分の心の中を覚醒させる起爆剤になっていたとは…
「最高に冷えたキンキンのビールがありますよ」
姉さんは少し誇張して言ってみた!
「おう!それは良いな、最高だ!」
やはり…自分の意識より高い目標が見えると喜ぶ傾向らしい。そして全力で越えるか、潰すかの選択をする種族なのでしょう。鬼はその世界で長らく生きて来た。そして何かに気付いた。そして嫌になったのだろう。強い者が支配する世界ってどうなのだろう?勝つか負けるか、食うか食われるか、支配する者と支配される者…いっときも休む時はない世界。サバンナにいる動物たちのようだ。常に自分より強いものを見て、喰われないように防御し、場合によっては集団で倒しにかかる世界。
鬼はひたすらビールを飲んだ。
すでに小瓶で20本がカラになっている。
まるでミニボトルを飲んでいるみたいだ。
日本酒に続いて芋ロックも飲み始めた。
まずい!
このままだと鬼の悪い面が顕現してしまう。
ロギ姉さんは心の中で酒屋のツロとケドに、普通に入口から入って、そして鬼の隣にそーっと座ってくれるように念じた。
鬼はいい気分でカパカパ飲んでいる。
相当久しぶりなのでしょうね(^。^)
少し目がトロトロしてきたと思ったら
いきなり寝てしまった。
〜小一時間たった〜鬼はゆっくり目を開けた〜
「アレ!ママさん大きくなってないか?」
ロギ姉さんの頭は天井についていた。
「ひえ〜なんだあ〜お前ら!」
両脇には鬼の2倍くらいあるクロギツネがいた。それもすごい筋肉だ。俺の全盛期よりも凄いぞ。まだフラフラしている鬼は目を開けたり閉じたりしていた。
突然、カウンター左のAI端末から
「こらあ〜!クニー!また酒ばっかり飲みおって
ええ加減にせえや〜少しは勉強せーやー」
威勢のいい女性の声が店内に響いた。
鬼はピクンとしてその端末を覗き込んだ。
「な、なに〜!」
鬼は揺れ動く心の針を修正している様だった。そして正面を向くと、元の大きさに戻ってるママさんがいた。両脇のマッチョなクロギツネも消えて居なくなっていた…。
「かあちゃ〜ん!かあちゃんの声だ!」
鬼は震えるように叫んだ。
ロギ姉さんは鬼の目に涙が溢れるのを見逃さなかった…
「お母さん…お元気なの?」
「ああ〜 1年前に亡くなったよ」
鬼の心が見る見る謙虚に、そして丸くなっていくのを感じた。鬼は母親が歳をとって、最後は小さくなって、それでも自分に一生懸命に注意している姿を思い出していた。
鬼は思いっきり泣いた!
ここぞとばかりに大泣きした。
一階からツロとケドがビックリして上がってきた。
「姉さん大丈夫ですか?」
「私は大丈夫よ(^.^)」
〜それより〜
姉さんは優しいまなざしで鬼を見ていた。
まるでわが子を見るように…鬼はまだ泣いていた。飲んだ分だけ涙が出ているようだった。鬼の目から溢れる涙は大きかった。そして光っていた。反省が進んだのかもしれない!
姉さんはAI端末に向かって念じた。
〜懐かしい曲が流れて来た〜
〜昭和の唄だったかもしれない〜
【第7話 愛する姉さんたち】
今日もBARクロギツネ
元気に開店します。
そして異空間を通ってお客様がやって来る。ほとんどがママに会いに来ているのはわかっているけど、みんな素敵な方ばかり。
チーママのネイさんはママの古くからの知り合い。
前のお店でも一緒だった2人は仲良しだ。
姉さんが独立すると、一緒についてきたネイさん。なぜかいまだに独身を通している。そんな事はどうでも良いけどお料理が上手で、お客様にはとても人気のチーママ。
もう一人。
アルバイトのショーコちゃんがいる。
ツロ酒店のマッチョ兄弟の妹だ。
まだまだよくわからない一番若い子だ。
クロギツネに来るお客様はどこか影がある。全く無いノー天気な方もいらっしゃるけど、大半の方はこの店に来て、自分の過去を話されることが多い。それぞれの波長は異なるけどこの地球で生きていく限り、誰もが笑顔で生きていけるような世界が来ることをこの店は望んでいます。ロギ姉さんって未来が見えてるのかもしれない。そうじゃ無いかもしれないけど…3人ともお客様が喜んで、幸福になってくれれば、それでいいです。
〜だからここに来ているんじゃよ♡〜
って、誰かが言ったような気がする。
【あとがき】
こんなBARがあったらどうですか?キツネのママさんですよ。不思議でしょ!そして素敵でしょ!夢の中で訪れるようなものです。こんな異世界な空間があったら最高ですね。「午前3時の訪問客」が第一話。このあと、色々な次元から、色々な方たちがやってくると思います。お楽しみにね♡