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【短編小説】路地裏タヌキの人間ウオッチ


 第一章 狸穴(マミアナ)


 作/画 Bourbon Samu 50.5


【まえがき】

路地裏(Rojiura)っていい響きですね。
夏の暑い日、打水なんかしたら涼しそう!簾(すだれ)とか葦簀(よしず)が品良く置いてあって、風鈴が鳴ってる感じもイイね。北風が吹きすさぶ頃は寂しそうだけど、どこからともなく、誰かが集まって来る感じが、これまた好きです。もっと広く場所取ればいいのにっていつも思うけど、ひしめき合ってる感じが路地裏をさらに魅力的に変えるね。

昭和の初め東京の一角、かつて「谷」だった場所には、今もひと知れずタヌキがいる。人間様だけ使っていいわけではではないんだよね。ネコも不思議な存在だけど、タヌキも同様だ。何かジーッと見ている、いや見られている感じだな。

今日も路地裏に人が来る。何かを求めにやって来る。そんな人間を観察するタヌキの物語。色々なドラマが始まりますよ!と言う事で10匹の狸が、かつての「谷」で人間を観察していきます。

第一話はそれぞれの谷に住むタヌキたちの紹介です。

どうぞ最後までご覧下さい!


【第1話 路地裏もんじゃ】

昭和の時代…そして、
ちょうど、その真ん中辺り。

ここは新宿のとある雑居ビル。地元の人でも間違えてしまう複雑に入り乱れたビルの谷。その奥の奥に3階建ての酒屋がある。「ツロ酒店」だ。この3階で今日も忙しく働いているタヌキの家族がいた。そこのもんじゃ焼きはその筋では有名だった。「ゴロゴロもんじゃ」は気前も良く、多摩地区からやって来るタヌキたちに好評だった。多摩地区は開拓ラッシュ。多摩の丘陵に住んでいたタヌキも居場所が無く、ここ新宿までノコノコ来るわけです…


〜いい匂いが立ち込める店内〜


「あといくつ作ればいいの〜?」


おかみさんの声が店内に響き渡る。


「あ〜そうだな〜、
 とりあえず餅明太5個でいいや!」


店主は馴染みの客と話し込んでいたが、慌てて厨房に駆け込んでいった。


「チーズはのせなくていいのね?」


「あゝチーズか!忘れた」


店主はいつものように、コソっとチーズをのせてあげる事にした。まあ一種のサービスだな。

こんなやりとりが続き、朝陽が昇る頃になるとタヌキたちはねぐらに帰っていった。しばらくして「ゴロゴロもんじゃ」もお店の片付けを始めた。店主の子供たちも最後まで手伝った。


「お父さん!今日は高円寺から結構来てたね?」


コロちゃんが一斗缶を持ち上げながら聞いた。


「何やらお寺周辺が居辛くなったようだよ」


お父さんはチーズをサービスしてあげたお客の事を思い出していた。


〜これからこの宿も混んで来るんだろうな〜


お父さんのゴロ吉っちゃんは、日増しに増えていくタヌキたちを見てそう感じた。狭山丘陵と多摩丘陵に挟まれたエリアってど真ん中に多摩川が流れて、とても住み易い場所だからな。人間が増えていけば、我々タヌキは追いやられるのは間違いない。多くの仲間もこれから犠牲になっていくことだろうよ。

不思議といえば不思議だが、この店に人間はいない。まあ来れないと言った方が正解かもしれない。同じ空間にいるのに見えない世界。タヌキたちの集合想念が作り上げている世界かもしれない。

……………………………………………

ここは「宿(ジュク)」
みんなが集まる場所。かつて人も動物も池や川で水を飲み、疲れた体を癒す場所。


新宿は宿場町。
日本橋から高井戸までの中間地点。今やアジア最大の歓楽街と化した新宿だが、甲州街道の最初の宿場町として栄えた。

また中央線には何故か「寺の文字」が駅名に付いているところが多い。高円寺、吉祥寺、国分寺まだまだあるけどね。やはり中心部にお住まいの方々が、離れた所にお墓を持ちたかったのか?多くの方が一時期お亡くなりになったのか、その辺は深く言及しないでおきましょう。

しかし丘を切り崩し、沼を埋め立て、川を真っ直ぐにして次から次へと宅地造成は続くな〜 場所によっては「すし詰め状態」に詰め込まれて、一軒家を建てたつもりでもほとんどアパートみたいな家も出現しているよ。それでも人間っていいみたいだ。よくわからないけど…

お江戸に住みたい人って、地方から来た人が結構いるね!そんな気がするよ。お江戸って言ったって、お城があった周辺はお殿様とその家来の仕事場、兼住居だからね。まあ文化も生まれるだろうけど、ここまでお江戸にこだわる事はないと思うんですが!やっぱりその国の中心に住みたいっていう人間は多いって事だな。うん!うん!そう言う事だな。


………………………………………



片付けも終わって、ゴロゴロもんじゃ一家は3階から降りていった。


「2階はまだやっているのかしら?」


おかみさんは中から声がしてる様な気がした。



〜2階はBARクロギツネだ〜



この店も不思議なお店だ。色々なお客が来るらしいね。私たちはママさんにも会ったことがないよ。どんな人なんだろうね?おかみさんはスタスタと1階まで降りて行った。


「もうすぐするとツロ酒店が開くんだよね」

「ここの店主ってかなりのマッチョらしいよ」

ごろ吉っちゃんが言った。

そう言えば、お客も言ってたしね。黒いキツネさんらしい。とても良い人みたいだ。ウチも利用させて貰ってるしね。


〜そうこうしているうちに2階からママが降りてきた〜


「あら!3階の方ね」
「はじめまして私はロギといいます」

ゴロ吉っちゃんは喜んで挨拶していた。

「あっ!ロギ姉さんだ」

コロちゃんとロコちゃんは、
いつもお菓子をくれる
キレイなお姉さんを覚えていた。

「な〜んだ!ここのお坊ちゃんと
 お嬢ちゃんだったのね」

おかみさんも会釈して御礼を言った。そして朝日が登らないうちにみんな早々に帰路に着いて行った。

〜今日も一日お疲れ様でした〜

コロちゃんとロコちゃんKoro&Roco


【第二話 御苑の兄妹】

〜新宿御苑〜

「ゴロゴロもんじゃ」の家族は御苑が住処、明治神宮と並んでタヌキには非常にいい場所だ。大半は食料を森の中で調達しているが、人間の近くにいると、美味しそうな匂いがするので、どうしても近くに行ってしまう。特に「油」を使った料理はたまらないらしい。まあ人間だってそうだろうけどね。

ゴロ吉っちゃんとおかみさんは、今日の収支を自分のノートに書き込んでいた。

「最近、野菜が高くなってるわ!」

おかみさんは納品書を見て言った。確かに天候不順でキャベツが高くなっている。

「困ったもんだわ」

おかみさんは洗い物が残っていたので、早々に洗い場に戻って行った。


「早く寝なさいね」


兄妹は時計を見た。


「まだ早いけどな…」


〜しかし今日は疲れた〜 早めに休もう!

心の中でコロちゃんは思った。父親の背中に乗ってはしゃいでいる妹を尻目に寝床に潜った。まあしょうがないか、深夜11時にお店をオープンさせるためには、そろそろ寝ておかないとね。もともと我々は夜行性なので昼間は静かにしているが、夜にどこからともなくゾロゾロ集まって来るんだよね。団体行動はしないけど、家族単位で行動するからな。

コロちゃんは眠くなったらしく、
体が小刻みに揺れ、深い眠りに入った。


「コロのやつ、相当疲れたんだな」


お父さんタヌキも寝床に入ってきた。続いておかみさんと妹も後に続いた。

御苑はちょうど小川のせせらぎが子守唄代わりになってくれるので、みんな気に入ってる場所だ。なかなかこんなところは「宿」周辺には無いだろうね。

たしかに思っている以上に接客するっていうのは疲れる。

特にこの次元を超えた世界で行動するのは、何倍もエネルギーを要すると言ってもいい。現実とは異なる想いの世界、特に想念の世界を幻影として出せる生き物にとっては、相当な疲労がのしかかるのだろう。

コロちゃんは夢を見ているのだろうか?
妙に身体が動いている。一体どんな夢を…




〜御苑の森に風が吹いてきた〜



【第三話 時空の歪み】

〜タヌキの家族は深い眠りに落ちていった〜

明日もたくさんの同胞たちの笑顔に会いたい〜
素直な気持ちで仕事をしている者は寝顔が美しい。


霊力を扱えるこの手の動物にとって、現実世界が本物なのか、幻影の世界が本物なのか、たまに間違えても不思議ではなさそうだ。昔からタヌキに騙された、変なモノを見せられたって言う話は良く聞く。それだけ観察力が鋭いのでしょう。人間になりきることだって出来てしまう。

そう言えば…多摩丘陵を舞台に、人間文明と自然の森に棲むタヌキとの合戦がアニメであった。いなくなったと思ったタヌキが人間に化けて社会に紛れ込んでいく最後のシーンが未だ記憶の片隅に残っているのが、何とも不思議だった。


〜よく考えたらすごいアニメだなあ〜

まあ確かに、世の中にはタヌキが化けている様な人間も少なくない。特にサラリーマン世界はまさに仮面をかぶった正と邪がぶつかり合う修羅の世界。朝早く起きて電車に乗って行く人も、車で移動する人たちも、懲りずに会社という祠(ほこら)に御参りする。

そこに神様は居ないのに、何か神様がいる様に崇め祀り、せっせと働いている。最近はだいぶ変わってきたけど、昭和の初めなんて、会社命の人間だらけだった。タヌキも入りやすかったに違いない。

タヌキを悪く言うつもりは無いけども、幻影を見せられて舞い上がる人間は多い。特に霊力の強い大ダヌキであれば、幻影を見せる事なんて簡単な事だ。それが会社のトップに紛れ込んでいた場合、時間をかけて良からぬ方向に持っていかれることが多い。まあ、タヌキだけじゃ無いかもしれないけどね。

深くは話しませんけど…ここに登場するタヌキは、取り敢えずそんな事はないですよ〜同族のタヌキたちには幻影であっても、一夜の憩いの場を現実に近い形で演出してあげるのですから…問題ないでしょ!


…………………………………………


〜しばらくして〜
〜御苑の森に強い風が一瞬吹いた〜


「ピカッ!」


〜昼間の様な「閃光」が起きた〜

〜静かになった〜

〜何か変な雰囲気だよ〜


………………………………


ゴロゴロもんじゃの家族
まだ寝てるのか?


………………………………………



〜うん!誰も居ないぞ〜

〜穴倉も無い!

どうしたって言うんだ。
何かあったのか!

何で消えたんだ?


……………………………………


家財道具は残ってるけど…
家族は誰一人居ない。


元々誰もいなかったように、
欠けた食器が転がっている…



〜外は再び強い風が吹いて来た〜

〜何事も無かったかのように
 御苑の森に…吹いてきた〜


【4.宿の宿】

コロは目が覚めた。

〜うん!あたりの様子が変だぞ〜


………………?



「ここはどこだ?」


「ロコ起きて!」


寝ているロコちゃんを起こした。
妹は眠い目をこすりながら、


「あっ!お店に戻ってる!」


「変だなあ〜!」


「あれっ おかあさんは?」


〜おかあさんと、おとうさんが居ない〜


ロコは真っ先にお母さんを探した。

唖然とした2人は「ゴロゴロもんじゃ」の看板が、すでに掛かっていない事に気付かなかった。

コロちゃんは必死に考えた。

〜だいぶ時間が経った?〜


「まさか!」


そう思うと2人はツロ酒店の階段を駆け上って行った。鍵は開いていた。

ドアノブを引いた!


「えっ!」


跡形もなくなってる光景に絶句した。厨房には蜘蛛の巣がはっていた。

〜相当時間が経っている感じがした〜

「ちょっと待ってくれよ〜!」


一体何が起きたのか早々に理解する事は無理だった。痕跡はあるけど…ほこりがうっすらと…テーブルの上を覆っていた。


「御苑の森に行くぞ!」


コロちゃんはいつものように最短距離を通って御苑の森に向かって行った。ロコちゃんもいつも以上にスピードを上げていた。赤いショルダーが落ちそうだった。

10分も経たないうちに寝ぐらに戻った。


いつもの寝ぐらの前で2人は…


〜ふたたび愕然とした〜



「家が無い!」



穴倉へはちょうど古いブナの木の横から入るようになっていたが…


「木が枯れてる!」


「入口が無くなってる」


だいぶ時間が経ったのか、草がおおい茂っていた。そこに穴倉があったような痕跡すら全く無かった。2人は立ちすくんだ。


「キツネに騙されたようだ!」


「理解出来ないよ!」


「不思議だわ!」


涙は出なかった。あまりの出来事に自分たちの頭の中を整理する事だけでも一杯だった。


〜御苑の宿はもう無い〜


2人は次の行動すら考え付かぬ間に、来た道を引き返して行った。


「誰かこっち見てるよ!」


西新宿のビル群に映る夕陽の方を指してロコが言った。



「うん!どこ?」



もう誰も居なかった。

でも確かに、誰かが見ていたようだった。

2人は重い足取りで「あの宿のビル」に戻って行った。


【第五話 四ツ谷のニキ】

〜日が暮れて来た〜

俺たちタヌキにとっては問題無い時間だけど人間はどうなんだろう?疲れ果てて明日も考えたく無い人生を生きている奴もいれば、この時間から人生薔薇色って奴もいる。まあ色々いるからね。

〜ちょうど新宿2丁目の交差点付近を通過した頃〜

〜ガードレール下を通過している時に、アイツに呼び止められた〜


「オイ待て〜い!そこの2人!」

ニキNiki


何やら侍みたいに呼んでくる奴がいるぞ。
振り返ってみるとタヌキだった。


「何じゃ〜い」


コロも負けずにサムライ言葉で応酬した。


「何じゃ〜いはないだろう!」


近くに行ってよく見ると、俺たちと同じくらいのタヌキだった。



「朝起きたら世界が変わっていたろう?」


〜えっ、何で知ってんだ!〜何者だコイツ〜。


「酒店の前でいきなり慌てふためいて、御苑まで走って行ったから気になって追いかけて来たんだよ」


「あっ!あの時こっち見てた!」


ロコちゃんは思い出したように指さした。




「何があったか知らねーけども、何か変わったんだよな?」


「ああそうだよ。朝になったらお父さんとお母さんと、それに…」


コロちゃんはグッと来るものを押さえ込んでいた。


「消えちゃったんだろう?」


「その辺の話はよく聞くよ」


「何だって?」


いかにも知っているような口調で語ってきた。

〜何か知っているな〜

コロはすかさず聞いた。


「よく聞くって一体何なんなんだよ?」


「時空の歪みさ!」


「過去の出来事があたかも今起きているかの様に出現し、そして忽然と消える。」

「まだ良い方だよ!」


「俺の知ってる渋谷の連中なんか、とんでもない距離を一瞬で移動したようだ」


〜時空の歪みか?〜


コロは意味がわからなかった。それに過去の出来事ってどう言うことなんだ?複雑な感情が入り乱れてしまった。

「人によって違う現象が起きるってことか?」
 コロはふたたび聞いた。

「多分そうだと思うよ…」

興奮している兄妹をよそに、

「申し遅れたが、俺の名前はニキ。四ツ谷がテリトリーさ」

「まっ、よろしくな!」

2人の兄弟もそれぞれ名乗った。

まあいずれわかることだろうから、2人はこの初めて会ったタヌキ、ニキについて行く事にした。


〜もう外はだいぶ暗くなってきた〜

【第六話 狸穴(マミアナ)】

四ツ谷周辺が自分のテリトリーのニキ。棲家は赤坂離宮だ。
今回偶然目撃してしまった時空消滅。


〜直接見たのは初めてだ。衝撃的だった〜


我々種族の宿命か!

それにしても空間消滅の時、閃光が眩しかった。特に夜を得意とする妖術使いにとっては辛いところだ。偶然とは思えない衝撃的な出来事に、ニキは驚きを隠せなかった。

都心部って、もともと東京湾に向かってなだらかなアップダウンが続く谷の世界。

だから東京って谷の地名が多いのか!なぜ谷が出来たのかは知らない。上流から大量の土砂が流れ込んだのか、世間で言われている活断層がズレたのかは不明だ。だから谷は身を隠すのに都合が良い。そして近くに川があり、日当たりの良い場所があるから日陰の場所もつくられる。陰と陽が混在する独特な世界、フラットな地形とは異なってくる。


2人はニキについて行った。
小一時間くらい歩いたかも知れない。


麻布というところまで来てしまった。



「ここはマミアナっていうところだ!」


「マミアナ?」


「そう。狸の穴って書いてマミアナって読むんだよ!」


そうなのか。そんなところに来たのか。
何でまた狸の穴に来たんだ?


〜コロは不思議と思った〜


「こっち!こっち!」
ニキは手招きした。


そこには大きなクヌギの木があった。3人はその裏から入っていった。奥の方からはひんやりとした空気が流れて来る。


「完全に穴倉って感じだ」


御苑の住処よりはるかに大きい。大所帯だな!


〜誰かに合わせる気だな〜


コロはそんな雰囲気を感じた。


最初の門が現れた。榊(サカキ)が供えてある。脇には紙垂(シデ)が垂れ下がっていた。第二門を通過する直前に1匹の狸がこっちに向かってきた。


「ニキ!コイツら誰だ?」


〜めちゃくちゃ偉そうなヤツだ〜コロは感じた〜


「ふたりは宿から連れて来た」


「宿から?」


ニキは新宿で起きた衝撃的な話をした。ロコちゃんはちょっと不安な顔をして、みんなを見ていた。

「という事で、親ナシになってしまったわけだよ!」

〜まだそう決まったわけでは無いけどな!〜
〜実際今はそうなってる。悲しいけど事実だ〜
〜コロちゃんはそう思った〜


「了解した、ちょっとお待ちを!」

ハチとニキHachi&Niki


ニキからハチって呼ばれてる奴は、第二門の奥へと消えていった。


〜ここは穴倉の割には明るいな〜

ところどころに地上から光が入っている仕組みになっている。穴がポッカリ開いているのでは無くて、何層にも木の葉が重なっているところから薄っすらと陽の光が差し込んでいる。

〜雨風が来ても大丈夫そうだな〜

そんな事を考えながら2人は待っていた。しばらくしてハチとやらが戻って来た。

「どうぞ奥へ!」

「えっ!やっぱり行くのか?」

コロちゃんは怪しげな雰囲気もあるので、適当に切り上げてくれればイイなって思っていたところだ。

〜まあ仕方ないか!〜

三人は第二門をくぐって更に奥へと向かった。第二門の先は大きな広間で、天井が広く外から風も入ってきてる感じだった。

「誰かと会うのかい?ニキ」

コロちゃんは周りを見渡して言った。

「そのうちわかるよ!」

しばらくすると広場の中心部分が光り始めた。そしてその光は、次第に球体に変化していった。直径が3メートル位になったころ、中から巨大な狸がホログラムで現れた。どこからか、データが送信されているように見えた。

「デカい!」

コロちゃんは光り輝く「大ダヌキ」に魅入っていた。しかしレトロな服の割には登場が粋だよ…どこかで見たことあるなこのデザイン!

一方、ロコちゃんは大ダヌキの持ってる大徳利が気になっていた。

「八ってなあに?」

徳利に書いてある「八の字」の意味が知りたかったようだ。その質問に球体の中の大ダヌキが反応した。

「八相縁起から来ているんじゃよ!」

大ダヌキがしゃべった!

「ハッソウ…」

ロコちゃんは全くわかりません。

大ダヌキは少し出た腹の中から、低い声を出して答えた。

「徳利に書いてある文字のことだな?狸や狐は嫌われもするが、人間と一緒に長らく苦楽を共にしてきた。都合が悪くなると追い払われ、姿が見えなくなってくると御利益の象徴の如く崇め祀られる。人間は勝手な生き物だけど、面倒見は本当はいいんじゃよ!」

「我々タヌキに、八つのご利益がある事にしてもらった。ありがたい事じゃよ!まあその中でも徳利を持たせて、徳って言うのを人間たちに身につけさせようとした御尽力は大したもんだと思うよ!八相の中でも一番レベルが高そうな徳目じゃな」

〜そう言えばこのホログラムってどこかで見た事あったな!〜

ちょっと思い出せない。でも香ばしい油の匂いがしてくるのはなぜだろう?

大ダヌキoodanuki


「ポンポコポン!」


ロコちゃんがつぶやいた。


〜球体が反応した!〜

「認証されました。次へお進み下さい」



ホログラム裏でAI音声が聞こえた。


ザーッっと映像が乱れたと思ったら、カサを被った大ダヌキになったり、陶器の置き物になったり、受信状況がいきなり悪くなった。リセットされてる様な感じだった。

そのあと球体に大きな鼻と眼が映し出されてた。最後はゴロゴロもんじゃの店内映像も一瞬出て程なく消えてしまった。


「あっ!お父さん!」

ロコちゃんは見逃さなかった。


もんじゃ焼き屋の天井から撮ったかのような映像だった。白く眩しいスクリーンに映し出された家族の映像、この大ダヌキは間違いなく知っている。僅かの時間だったが遥か彼方から時空を超えて来たような感覚に陥った2人は、落ちる涙を気付かれないように拭いていた。



しばらくすると広間全体から声が響いた…


「安心しなされや。ちょっとの間、夢を見ただけだから!」

「今日から出会う仲間達と仲良く生きて行くんだよ」



ニキとハチはなぜか下を向いていた…


コロちゃんと、妹のロコちゃんは何となくわかったような気がした。心の奥に何か納得した様な感じが込み上げて来た。

4人はマミアナを出て歩き出した。

なぜか全員仲良くスキップしていた。


【第七話 雑司ヶ谷のトレス】

4人は青山霊園、神宮の森を抜けて新宿御苑に向かった。我々タヌキにとって移動する事はたやすい事。小刻みに人間で言うところの難波歩きでスタスタ移動してしまう。

そういえば、ニキと一緒に来た奴はハチとか言ったな!どう見てもお祭り好きな感じがバリバリするんだけど!

ハチは市ヶ谷から来た。

靖国神社そして皇居の森が自分の居場所だ。今日はとりあえずこの3人について行く事にした。自分のことは後回しでいいだろう。


御苑はいいところだ。
ロコも気に入っている。
とりあえず雨を凌げる場所を探した。


〜今日はいろいろあったな〜


想いはみんなそれぞれだろう。ふたたび爽やかな風が森に吹いてきた。明日考えればいい事は明日にしよう。


〜深い眠りについた〜


仲間達はそれぞれに良い夢を見たに違いない。


………………………………………



翌朝、神田川を越え、護国寺を右手に見て雑司ヶ谷へ向かった。今回は結構距離がありそうだ。


狸穴から10キロ、御苑から5キロ離れたエリアまで来た。北の地に思えるけど、今やすぐ近くにある池袋。昼間人口の80%は埼玉県民が占めているようだ。


そう言えば〜
都内に広い母屋を構えている人って
どうなんでしょうね?〜

もともとそこが棲み家である人にとって、何か問題でも?って言いたいけども。まあそれぞれでしょう。ここ東京って地方から大挙して住み着いた人の方が多いって聞いていますよ。東京にこだわる人は結構います。狭い住み家だって住所、番地が重要なんですよ、日本の中心だからね。でも、我々タヌキみたいに、こんなど真ん中に住む事は出来ないでしょうよ。


〜当然違う人たちは居るけどね〜


……………………………………



雑司ケ谷は目白のすぐそば、そして都電の駅がある。学習院があって、鬼子母神堂が近くにある。サンシャインが近くに見えて雑司ヶ谷霊園からの風も吹いている。霊園は設備が整っている割には、普段人間が少なくていい。人間を終えた存在がたまに居るかもしれないけどね。

いわれはさまざまだけど雑司ヶ谷は静かな場所だ。

雑司ヶ谷のトレスもかつて狸穴に呼ばれた仲間。
ニキとハチがそれを手伝っている。

そしてトレスの活動場所は、

〜ここ池袋〜


池袋は名前の通りだよ。そこに点在していた沼や池の水は、当時神田川に流れていったに違いない。まるで人体のように、無駄な動きはしていない。全てが大地の鼓動とリズムを同じくして動いている。今はだいぶフタをされてしまっている様だけどね。そして池袋は我々にとって、西口、東口、全方位で移動が出来る便利なところ。

〜ここは自分に合ってる〜

トレスはいつもそう思っている。マンションはところ狭しと乱立し、護国寺が遠くに見える物件は人気がある様だ。池袋って元気が良すぎるところもあるし、少し悪ふざけが過ぎてる街かもしれません。

新宿は多摩丘陵から遊びに来るけど、池袋は狭山丘陵からやってくる。途中、所沢や朝霞を通過してくるので、やはり埼玉カラーに染まる街なのでしょう!


トレスにはヒカルという仲間がいる。

トレス&ヒカルTores&Hikaru



彼は護国寺の森にいる。一緒に寝泊まりはしていないが、トレスと同じようにブクロの街から色々なモノを得ている。


〜モノって残飯でしょ!〜イヤイヤ〜
〜それ言ったら、ちょっと気分害すな〜

〜情報とか、いろいろあるでしょうよ〜


我々は夜行性だから、人間が残した貴重な食べ物を、いつも感謝して頂いているだけさ。全く手を付けていないモノだってたまに出てくるんだぜ!だから鮮度が良いうちに戴くわけだよ。

人間はなぜか我々が行動を始めようとすると、電車に乗って良い気分で帰ってしまうんだよ。中には道端で寝転んでいる奴もいるけどね。最近は電車に乗った途端に寝てしまう、ふざけた奴もいるらしいよ。そう言う奴は終着駅で夜を明かすしかないだろけどね。


2人はそれぞれの寝ぐらに戻る途中だった。


………………………………


「椿山荘行ってみないか?」
突然、トレスが言い出した。何を感じたのか…

別にヒカルに断る理由なんて無かった。少し遠回りすれば着く距離だからね。

その後、ニキら4人はトレスたちに会った。探していたトレスに会えてホッとしたニキはほくそ笑んでいた。

何となくこうなる事はわかってたニキだった…



かつて2人が出会ったのは、肥後細川庭園の側を流れる神田川の辺り、椿山荘の森の中だった。一緒にいたヒカルの経緯は知らないけど、同じ境遇にいる事は容易に察した。いままでの経緯を話したニキは嬉しそうだった。

「オマエとは、また会えるだろうな!」

〜なんとなくそう思った〜


〜〜〜〜〜〜〜〜🎵〜〜〜〜〜〜〜


そして…そうなった〜

すでにここには6匹いる。リーダーぶっているわけでは無いのだけれど、仲間が増えていく幸せを噛みしめていた。


「そうだよ!ヤッパリ仲間はいい」


トレスとヒカルは、それぞれの寝ぐらに戻った。そして4人はこの椿山荘の森で体を休めることにした。


ザワザワとした風の音が
森の奥から聞こえて来た。

それを聞きながら…
静かに眠りに入っていった。

グッドナイト💤
おやすみなさい💤


【第八話 鶯谷のテフ】

〜それにしてもニキは知っているな〜

コロちゃんは感心していた。

今日も誰かに会わせるのだろうけど、仲間がいるっていうのは悪く無いな!心強い。たぶんみんなも、そう思っているに違いない、そんな感じがした。


夕陽がそろそろ沈む頃、ゆっくりと起き始めた4人。ちょっと前に起きていたコロちゃんは、まだまだ、この東京って、面白いところがあるんだなあってつくづく思った。


「まだ夢あるな」


………………………♪…♪………


〜みんなも起きてきたようだ〜


「さあ!行こう」


ニキは気分良く号令をかけた。責任感MAX、雰囲気ありありだ。まあこんな時にはありがたい存在だね。


そうそうに茗荷谷をぬけて、小石川の森を通り上野の森に向かった。


東京大学、東京藝術大学そして国立博物館が軒を並べる東京の玄関口。上野、御徒町、神田、秋葉原と外人にも人気のスポット、特にアメ横は食料豊富だ。魚屋、八百屋、菓子屋、飲食店も何でもある。まさしく市場であって巨大な屋台だ。


ここでまた、一匹のタヌキに会う。

テフとイキマタ Tefu&Ikimata


テフが吉池の裏手から出てきた。

吉池は村上の新巻鮭で有名だ。美味しそうだよ。アイツ端切れを戴いて来たんじゃないだろうな。

〜別に店から出て来たわけでは無いので〜ご心配無く〜

繁華街は気を付けないと車にひかれてしまう。

特に夜の移動は危険を伴うからね。ニキとハチはある程度知っていたが、コロちゃん兄妹は初めて訪れたこの御徒町周辺に、新宿とは違った匂いを感じていた。どこかレトロな雰囲気があるな。平面的な世界が広がっている感じがする。


「テフ!ひさしぶり」


ニキは少しふっくらしたテフのお腹をジーッと見ていた。

「おいっ!どこ見てんだよ!」

思わず次に言う言葉がわかってしまうほど、テフは栄養満点な雰囲気だった。まあこの辺にいればしょうがない。食料には事欠かないだろうよ。そう言えばこの辺は、ネコ連中も元気がいいって聞いたよ。同盟を組んでいるらしい。やっぱり孤独に生きるより大勢の仲間に囲まれて生きていく方が楽しいからな。生きるためには必死だ。

それが原動力って訳か?


〜〜〜〜〜〜  〜〜〜〜〜


「ニキよ!今日はだいぶ大勢だな」


あれっ!
初めて見るタヌキを引き連れたテフがいた。

〜誰だアイツ?〜


テフに縄張り意識が芽生えたせいか、少し構えている感じだ。テフは鶯谷(ウグイスダニ)を寝ぐらにしている。下町と言うか上野寄りは寛永寺のお墓だ。夏も涼しくて快適だ。まあ人間最期の寝ぐらって訳だな。


我々タヌキって、人間にどう思われているのだろう?
確かに、たまに幻術を見せる時もあるようだけど。いいイメージなら少しは救われるけど、あまり期待しない方がいいな!幻術なんてまあ我々下っ端には真似出来ない芸当だけどね。でも100歳を超える大ダヌキになると時空をコントロールする者もいるようだよ…ナヌッ!


〜〜〜〜〜〜〜^_^〜〜〜〜〜〜〜


「一昨日、この兄妹連れて狸穴(マミアナ)に行って来たよ」

ニキはこっちを見ながら言った。


「狸穴(マミアナ)か…」

「大ダヌキ様は会ってくれたのか?」


〜なんとテフも知っていたのか!あの大ダヌキの事を〜

それにしてもあのヘンテコな光に包まれた球体は一体何だったのだろう?コロちゃんは目まぐるしい展開に終始落ち着かない様子だった。


「直接では無かったけど、いつものホログラムでお出迎えしていたよ」


「ちょっと調子が悪かったのか、予期せぬワードを認識してしまったのか、リセットされたみたいな残像が揺れてたね」


〜予期せぬワード?〜


〜まさかロコ?〜



それにしても大ダヌキって直接会う事もあるのか!面倒くさいからどうでもいいと思ったけどね。でも何か、マミアナにいろいろ隠されている事は間違い無さそうだ。ニキとテフは何やら話し込んでいた。今度隣にいるタヌキを連れて行くらしい。何となく登録されている感じにしか思えないけどな。


「イキマタをよろしく!」


テフが紹介した。

あいつイキマタって言うのか!変わった名前だな。それにしてもいろいろ集まったもんだよ。ちょっと嬉しくなったな。

「よろしくお願いします」

イキマタがみんなに挨拶した。なんとイキマタちゃん。意外と律儀だな。

〜御徒町〜今夜もガヤガヤしてる〜

4人は御徒町上野の界隈を探索し、テフとイキマタにご馳走になった。東天紅裏にはナイスなスポットがあるんだよね。我々に優しいパワースポットだよ。優しいお兄さん達がいるんだ!助かるよ本当に。みんなお腹一杯で上野をあとにした。


本当に良い奴らだ。
明日またニキが誰かに会わせるに違いない。
コロちゃんは上野の森に包まれて、
そして…静かに…眠りについた。



【第九話 渋谷のアオ】

翌日、ふたたび移動を開始した4匹。

ニキのテリトリー四ツ谷を超え、新宿御苑を右手に見ながら神宮の森へと向かっていった。

〜神宮の森は広い〜
森は代々木公園までつながっている。空気が若くてきれいだ。そこで何か未完成の彫像物が作られている感じだ。そんな不思議な波動さえ感じる。ここが一番安心かもしれないな!

公園通りを下ると地形的には谷底だ。そこになぜか駅がある。谷と言う名前が付いたところ 〜そう渋谷だ〜

その前の広場なのか、交差点というモノなのか知らないけれど、世界有数の蟻の行列、オット失礼人間だったな。その見事な隊列が見られる場所があるらしい。四方八方から中心に向かって歩いて行くのに、そのまますれ違わず、誰一人としてぶつかる者がいない。そんなショーが見られるようだ。

〜そこに何かを求めに来るのでしょう
人間は求めるものが無ければ来ないからね〜

コロちゃんは心の中で思った。

ところ狭しと複合施設が建つ。ひと昔なら、森と森の間は沼地か、川へと続く谷だったのでしょう。今や何事も無かったようにビルが建ち並び、高層マンションが地中深くまで杭を打ち込み、次から次へと建設されていく。どこからお金が出てくるのか知らないけれど、一戸数千万円単位で買われていく。

〜何がそうさせるのだろう?〜


「池袋と似ている」
ロコちゃんが言った。


確かにアップダウンはあるけども池袋に似ている。若いんだけどどことなく品性が乏しい街、どこか無理してるって感じだな。

本当はここは無かった街じゃないのか?
それ以上進めなかった最終地点じゃないのか?
不思議と、そう思った。


「人間たちが敷いた電車の都合だろうよ」
ハチが唐突に話した。


〜そうとも限らないだろうけどね〜

確かに渋谷は多摩丘陵の南から、多く人間たちが来る場所だ。南側には武蔵溝の口、武蔵小杉がある。肥沃な多摩川を北側に抱えたエリアだ。溝の口は名の通り、谷間を流れて来た平瀬川が一気にここで多摩川の低地に広がる出口、そして武蔵小杉は今でこそ電車のお陰で便利な所になっているが、元々は工場跡地、その前は沼地が点在していた宿だ。今も大雨が降ると、辛い思いをするってのはその辺が理由だろう。渋谷まで続く多摩川の北側は、見通しの良い広大な原っぱだったに違いない。しかし、人が異常に群がる場所になったもんだよ。

多摩川を超えたら神奈川県だからって事もあるけど、八王子から町田に続くエリアなんて、なぜか無理矢理に東京になってる。いろいろあったんだろうね。やはりここ渋谷に集まる大半の人間って、比較的若い住人たちだろう。

〜ニキは勝手に想像した〜


「でもその若い辺って東京じゃ無いんだよな!」

ふたたびハチが不思議そうに言った。


「だから良いんだよ自由な雰囲気があって、
 だから若いエリアなんだろうよ!」

ニキが覆い被せるように言った。

〜いろいろあったかもしれない〜

渋い谷底って水の流れが悪そうなイメージがあるな。そして荒削りなトゲトゲしい街、渋谷。そしてそこに、そんな言葉が似合いそうな街が出来たわけか!

……………………(^。^)……………………


そんな街に
神宮の森から夜な夜な出歩いている
2人の兄弟がいる。

アオとアカミAo&Akami


アオとアカだ。


ここの波長が合うのでしょう。数ヶ所巡ってここに辿り着いたらしい。またこの2人もなぜかニキは知っていた。


「みんなどこから来たんだ?」
コロちゃんは思った。

一体どこからやって来たんだろう?この2人なんか、関西から来た雰囲気を醸し出している。まさか瞬間移動して来たのはこのふたりか!

今の2人の棲み家は明治神宮。原宿を左手に見て、代々木公園を抜けて、公園通りを下って渋谷に来ることが出来る。たまに井の頭通りから入ることもあるけどね。快適な場所のようだ。



渋谷って若者がぐでんぐでんになってその辺で寝ちまってる街だ。どう見ても飲み方知らない兄ちゃん姉ちゃんたちが背伸びして、背伸びしたまま寝ちまってるそんな街だ。米国のフィラデルフィアでは無いけどね。いずれそんな感じに…一番乗りかもしれないな!

しかし、この街には良いところがたくさんあるよ!
そのうちアオとアカが教えてくれるだろうよ。




ところで人間って、本当のところ幸せなのか?
どう言う状態になれば幸福なのか?知ってる?

このエリアが谷底だった頃、人間なんて居たのか?赤い水が流れる事もなく澱んで溜まっていたあの頃、人間は住んでいたのか?我々一族は生きてきた。どんな環境でも生きてきた。追い出されても、ゴミを食おうとも生きてきた。

低い丘と高い丘があって、結局人間には緑豊かな場所になったが、我らの故郷は削りに削られた。ニュータウンを作るためにどれだけの仲間が犠牲になったことか。昔のことを聞かされてるニキにとって、多摩丘陵の悪夢は忘れる事は出来ないだろう。




ふたたび渋谷と言う赤い谷底に、
静寂が訪れようとしている。

ノックダウンされた若者、グチを言い終わった爺さん達、客を逃したキャバ嬢たちがそれぞれのネグラに戻る。多分我々の寝ぐらの方が快適かもしれない。そんな事を思いながら我々4人と、このシマの2人は心が融合していった。


「アオとアカに
あとでゆっくり聞くか?」

コロちゃんは別に焦る事でもないだろう!と思った。
そしてみんなを追いかけていった。


路地裏タヌキRojiuraTanuki



【あとがき】


人間の生き様を描きたいと、勝手ながらタヌキのキャラクターを作ってしまいました。そしてストーリーも。まだまだご紹介程度ですけどこれから人間をウオッチしていきますからね!待ってて下さいね。

と言う事で、都心の森の中にはタヌキがいるんですよ。そして調子のいい人間たちを見張っているんですよ。たぬきに騙されたって話はよく聞きますけど、本当はあなた方人間が騙していたりしてね!正直者が馬鹿を見る時代に、人間で無いタヌキの子供たちが、知恵を出し、力を合わせて時代を生きて行く、なんて素晴らしい事でしょう。

第二話は都心の、とあるお店でのお話でもしてみたいです。

どうぞ宜しくお願いします。




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