月例落選 2021年10月号
負け惜しみかも知れないが、今日届いた10月号の歌壇はいかがなものかと思う。そろそろ感染症ネタは卒業しませんかと言いたくなるし、それを選ぶ側もどうかと思う。歌人って、そんなんでいいんですかと思う。
いつも「月例落選」は自分の投稿した歌から始めるが、今回は選ばれた歌の中から好きなものを取り上げる。
4人の選者のうち3人が選んだ歌である。光を飲む子、というのはいいなぁと思う。子供のイメージというものが短歌ではどのように捉えられているものなのか知らないが、自分にとっては素朴に希望であり未来だ。希望や未来が光をごくごく飲む、それこそ人類の希望だと思う。
これで歌になるのか、という意味で目から鱗が落ちる思いがする。生活があり、それに根ざした世界が広がる。そう思って読めば、ではあるが。読む側の想像力が問われているとも言える。「さびしい時はレモンを絞る」のはどうしてか。レモンを絞ることで、単に気分を変えたいということか、味にパンチを加え己を鼓舞したい、ということなのか、ツナと玉ねぎだけでは味がさびしいのでレモンを加えるということなのか、さびしい時は別れたアイツのナニを握り潰すつもりでレモンを絞るのか、いろいろ考えることができる。読む側の想像の問題なのだが、握り潰されたらヤダな、とは思う。
私の落選歌は次の4首。
「寿命は約2年です」ケータイは儚い暮らしの張本人
(じゅみょうは やくにねんです けいたいは はかないくらしの ちょうほんにん)
ケータイを買い換えた日の夕方はイライラ募り死にたくなった
(けいたいを かいかえたひの ゆうがたは いらいらつのり しにたくなった)
暗唱ができない数のパスワード書き記したる暮らしの手帳
(あんしょうが できないかずの ぱすわあど かきしるしたる くらしのてちょう)
「ゲリラ」から体制側へ大出世「異常」気象が「常」なる姿
(げりらから たいせいがわへ だいしゅっせ いじょうきしょうが つねなるすがた)
7月にスマホを買い換えた。それまで使っていた機種は途中1回バッテリーの交換をして約5年間使用した。機能面では問題はなかったのだが、またバッテリーがいかれてしまったので、これを機に買い換えることにした。事前に通信会社のサイトでショップの来店予約をして、事前に買い換える機種を指定しておいたが、それでも2時間近くかかった。店の人の説明の中でスマホ本体の価格を月割にして通信料と併せて支払うというものがあった。その中で、機種買い替えのサイクルを2年で想定しているとのことだった。電話機もパソコンも情報通信に関わる機材はどれも消耗品扱いだ。ある程度の期間なら、機種はそのままでソフトウエアの更新だけで使用期間を延命できるのだが、これまではそれに限界があった。おそらく、この先も技術の変化は続くのであろうから、結局は数年で買い換えることにならざるを得ないのだろう。生活の道具が生活そのものを規定する、という。情報通信機器としての性能を追求し、デザインを追求し、利便性を追求し、2−5年程度で消費する。どんなに頑張っても使い捨てにされる。そういう道具を生活の基幹部分で用いている我々も、たぶん誰かに同じように使い捨てにされている。道具に対する思想は人に対するものに伝染する、と思う。そう言われてみれば、思い当たることが一つや二つは出てくるのではないだろうか。
スマホは身分証明としても利用されるようになった。私の職場では、自分の席でパソコンを立ち上げる時、ログイン画面にQRコードが表示される。それを予め自分のスマホにインストールした所定のアプリで読み込んで認証すると、パソコンのほうが立ち上がる仕組みになっている。自分のスマホが鍵のような役割を果たす。スマホを買い換えるとそういうアプリの設定をやり直さないといけない。職場で使うアプリの場合、インストールしたら、2人の社員から認証を受けないといけない。具体的には、2人選んで、自分のIDコードを伝え、社内の所定のサイトで1時間だけ有効のコードを発行してもらう。その2つのコードを入力することでアプリが機能するようになる。厄介だ。普通に日常生活で使うアプリはほとんどが簡単に再設定できるので、こちらはそれほどでもないが、面倒だ。すんなりできるものばかりではなく、イライラが募ることになる。嫌なものだ。
特に金融機関系のアプリは複数のパスワードを設定しないといけない。時に8桁以上でアルファベットの大文字と小文字、数字、記号を含まないといけない、などというフザケたところもある。そんなものを記憶できるはずがない。しかも、数ヶ月毎に更新をしろと言ってくる。人を何だと思っているのか。覚えきれないので、帳面に控えておいたら、いつの間にか帳面がいっぱいになった。その帳面を紛失したらエライことになるのは必定だ。ただでさえ苦難の尽きない生活に余計な負荷をかけないで欲しい。
短歌を詠むと文句しか出てこない。生活を変えないといけないということだろう。厄介だ。