プロ料理人として「お客様へ 誠実で在りたい」。リストランテKubotsu料理長 ”窪津 朋生さん”
「良いものを安く仕入れること」がとても難しい中で、地産地消にこだわり、九州中の生産者さんの協力を得て、その道を開拓した”窪津朋生さん”。なぜ彼は、プロの料理人としてブレない姿勢を貫ぬく事が出来るのか?お話を伺ってきました。
窪津 朋生さんプロフィール
出身地:福岡
活動地域:九州全域
経歴:
1983年 大阪生まれ、福岡育ち。2003年(株)ひらまつ入社、東京・代官山「リストランテASO」配属、2009年には副料理長に就任。2011年、「リストランテASO 天神」オープンに伴い異動。2014年料理長に就任。
2018年1月、自身の名を冠する新店「リストランテKubotsu」料理長に就任。
現在の職業および活動:
「リストランテKubotsu」料理長
座右の銘:
小学生の頃から、「人と同じである事がつまらない。」と思ってた事が、僕の原点だと思います。
Q1.普通の料理人がやらない道を開拓し、九州中の素晴らしい生産者と直接つながり、良い食材にこだわられてる窪津さん。一体、どんな心の在り方や認識の変化が今のご活躍に繋がっていらっしゃいますか?
窪津朋生さん(以下、窪津) プロの料理人として絶対にブレない所は、お客様に対して「誠実で在りたい」というところです。
あと、根本的には「当たり前の事は、当たり前でありたい。」という事です。何かが理由でできないなら、やり方を変えればいいと思っていて、私もそれを実践しています。
記者 なぜこのような考え方になったのでしょうか?
窪津 それは、私が転校生で、いろんな学校を転々としていたからだと思います。転々としていると、「集団はこう在るべき」みたいなのが客観的に見えるようになり、次第に同級生たちが「ジャガイモ」みたいに、みんな同じ様に見えてきたんですね(笑)。
私は、「こう在るべき」というのが本当に嫌だったし、みんな同じなのがとてもつまらなかったんです。
「人生一回だし、面白い方が良い!」
「人と同じで在りたくない!」
「普通の料理人と違う料理人、普通の料理長と違う料理長で在りたい。」
というのが、私の人生の軸になってると思います。
なので、東京から福岡に異動し、リストランテASOの料理長になった時も「自分にしかつくれない料理を創りたい!」と思い、地産地消に取り組みました。
「どうしたら、良い食材を安く買えるのか?」と、良い食材を九州中歩き回り探しました。ここでは語りきれないほど、大変な道のりでした。生産者や、地域の驚く様な実情もたくさん見ました。
ずっと発信して行動していたら、ありがたい事に、少しずつ、人づてに紹介をしてもらえる様になり、こだわりを持ってる農家さんにも協力をしてもらえるようになりました。今は、リストランテKubotsuという、自分の名前が入った店の運営を任され、やりたい事もできる様になりました。
記者 窪津さんが今から目指している方向性はどんなものなのでしょうか?
窪津 今、一番気にかけてる事は、「日本は本当にこのままで良いのか?」という事です。九州中の農家を渡り歩く事で、日本の農家の実情を知りました。バブル時代の大量生産の影響で、種の問題、農薬の問題など、体にとって安全なものばかりではないのが現実です。更には、農家として生計を立てるのはとても難しいという実情もあります。
生産者さん達は、すごく良い人たちで沢山協力もしてくれました。
私は、その実情を知り、しだいに生産者さんたちに「恩返しをしたい。」「努力されてる人が、報われるようにしたい。」と、思うようになりました。
私は、プロの料理人として、お客様の口に入れるものには責任をとりたいので、まずはこの実情を料理人にも消費者にも伝え、そして1人ひとりの意識を変えていけたら嬉しいです。
Q2.AIが活躍する時代に必要とされるニーズは何だと思いますか?
窪津 AIも思考するけど、人間も思考し続けることが大事だと思います。
元々は、AIは人間の脳の仕組みをまねるところから始まっているので、いずれAIが人間の上をいく時代が来るのかもしれない。けど、人間の脳も、今は何十パーセントしか力を発揮していないと言われてます。
科学が進化しても、まだ分からない事はたくさんあるので、思考し続ける事が大事だと思います。一番怖いのは、考える事を放棄する事ですね。AIに任せられるものを任せたら、余力が生まれるので、その余力をどこに向けるのかを思考する必要があると思います。AIと違う事をやるのが人間だと思います。
プロの料理の世界には、効率化と真逆な考えがあります。平松会長に「一手間、二手間、三手間、四手間、五に工夫」という考えがあり、これはとても大切だと思います。AIによって作業の時間短縮ができたら、更にクオリティーを上げられると思うので、手間をかけるものも大切なのかもしれませんね。
Q3. 3世代先を見据えて。窪津さんは100年後、どんな美しい時代を創っていきたいですか?
窪津 人間がずっと追い求めているものですが、ずっと実現できないことかな。僕は、みんなが優しかったら「美しい」と思います。みんながwin-winがいいと思うんです。
人のために動くというより、当たり前に優しい方が柔らかくて好きです。それには、やっぱり家族が一緒に暮らし一緒に食事をする事はとても大切だと思っています。それによって、人の心が豊かになり、当たり前に優しくなれると思います。
あと僕は美しいものも、気持ちが癒されるから好きです。紅葉見たり、里川のせせらぎを聞いたら、気持ちってきれいになります。だから、自然も大事にしたいです。
ゆくゆくは、みんな田舎に帰って、家族と一緒に住んで食事が出来たら良いと思います。もし、人が少なくて寂しかったら、子供を増やせばいいじゃないですか。そしたらみんな優しくなり、美しい時代になるのではないかって思います。
Q4.窪津さんは、海外に店舗を出しても良い程の方だと思います。なぜ、日本にとどまり、誰もやらないような事をされ続けてるのでしょうか?
窪津 それは、ただ、好きだからです。
自分たちの国なんだから自分たちがもっと愛してもいいんじゃないかって考えてます。
阿久根とか、対馬とか、五島とか、九州各地に、本当に素晴らしい地域がたくさんある。ただ、現地の人は、その素晴らしさに気づいてないんです。
これは日本も同じなんじゃないかな?
だから自分たちの良さを自分たちが知る必要があるし、生まれた所だから日本の良さを知りたいと思う。
九州のどこに行っても、良いなぁと思う気持ちが大事だと思います。九州は良いところだよと言いたい。
僕はまだ日本の伝統文化を全部知ってるわけではないので、「本来の日本人とは」とか言えないけど、自分たちのことをもっと好きになっていいんじゃないかな。
そして、更に良くするには、「どうやったら人口増えるんだろう」みたいな事を、みんなで必死こいて考えたら面白いと思うし、経済も立ち直る。
みんなで考えたら、みんなの意見を聞いたら、なるほどってなるし、面白くなると思うので、そういう環境を創っていきたい。
Q5.がんばっている農家さんや地域を盛り上げたいと思っている人に一言メッセージを。
窪津 「みんなでがんばりましょう。」かな(笑)。
これは、うちのスタッフにも、みんなに言いたいですね。
僕は、自分一人では何もできないです。みんないろいろ助けてくれた、それを裏切りたくないです。みんなでがんばる。そういう繋がりの連鎖を創っていきたいです。
記者 素敵なお話をありがとうございました!!
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窪津 朋生さんの活動、連絡については、こちらから
↓↓
HP:
https://www.hiramatsurestaurant.jp/kubotsu/
SNS:
https://www.facebook.com/kubotsu.tomoki?ref=br_rs
【編集後記】インタビューの記者を担当した熊倉と不知です。
窪津さんとお話して、自分たちの国、地域、家族を好きになる事。家族と一緒にご飯を食べる事が大切だという事。それが、優しい心を創るという事。いろいろハッとさせられました。生きる上で忘れがちですが、人間としてとても大切な事を思い出す感覚になりました。本当にありがとうございました!
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この記事は、リライズ・ニュースマガジン “美しい時代を創る人達” にも掲載されています。
https://note.mu/19960301/m/m891c62a08b36