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「#旅のようなお出かけ」企画に参加してくれた、くにんさんの「ライフ・ボート」を読んだ感想。

 旅やお出かけといえば、普通はリアルに体を動かしていろんな乗り物に乗って移動します。ところが特に今年のように、自由に海外に行けないときなどは、オンラインの旅行などを行うことで疑似的な旅気分で我慢します。しかし、考えてみれば、それ以前から同様な疑似体験ができることに「映画」というものがあるのではないでしょうか?
 
 この企画の第20弾目になりますくにんさんは、「映画」をお出かけの一つとして書かれた次の作品を用意してくれました。映像作品では船旅の要素に人生を掛け合わせていますが、それは視聴する立場としてでも。


1.地方都市の商店街で夜に行われる映画

 舞台はある地方都市の駅前商店街。古びた商店街は、すでに夜になればシャッター街。お出かけでも街歩きが好きなので、こういうローカルな街を歩くのは好きですが、あまりシャッター街だらけだと寂しいですね。
 ところが主人公の司は、ここで行われる自主製作映画を見に来ました。元々小劇団とかそういうものが好きな主人公。1000円で見られるとこの場所は、かつていろんな作品を上映して活況だった映画館です。すでに営業を終えて閉鎖されていましたが、その設備を使ってこの日の夜上映するようです。
 ということで中に入ると、自動ドアこそ壊れているものの、意外ときれいです。ただそれまで行ったことのある上映会のような、入場料を取るとかそういうものがありません。10人程度の先客がいましたが、疲れているのかどちらかといえば落ち込んでいる様子。ちょっといつもと違う雰囲気を感じながらも、特に気にせず上映が始まるのを待ちます。

2.人生は船旅なんだろう

 上映時間になると不思議なアロマが香ります。特に嫌味がないので、気にせず画面を見ると不思議な液体と音。シンセサイザーの機械音を使って表現するシーンが現れます。次に病院の出産シーンが現れ、今度は客船の姿「ライフボート」というタイトルの通り船が登場したのでした。
 ここで船が嵐に遭うシーンと、いじめにあう子供のシーンが交互にくりかえされるようなことが行われ、司も過去の記憶を呼び起こします。祖母の亡くなるシーンでは、いまだに持っているお守り。祖母の形見のようなものでしょうか?このときにわかったことは、船の航行と人生を掛け合わせた映画であること。映像の世界とは言え、疑似的なお出かけ・旅をしているような雰囲気。いつしか子供は成人すると船のシーンが中心となっていきました。

3.突然い襲い掛かるトラブル

 なかなか芸術的というか、前衛的とも言えそうなこの作品。やがてクライマックスが近づきます。寄港することなく突き進む客船の水平線では何かが現れます。さてそれは?といったときに、思わぬトラブルを司のみに襲いかかりました。
 突然胸が焼けるような痛さです。ついつい声が出る司でしたが、誰も気づきません。スーツが燃えている? いえそんなことはありません。そもそもタバコを吸わない司。マッチやライターの類も持ってませんから余計に理由がわかりません。館内は暗いままですが、熱の温度は強くなる一方。「これは火災になるかも」と直感した司は、歯科タンク退出します。

「ばあちゃん、このお守り、石灰でも入れているのかよ。あぁでも、そういや、小学校に上がった時には、このお守りと一緒に手作りの給食袋をプレゼントしてくれたっけなぁ。」

 ロビーに出て内ポケットを確認すると、そこには祖母からのお守りが出てきただけで、すでに熱は持っていません。ただこれは祖母との記憶をより強く引き起こすのに十分でした。

4.後で知ることになる意外な結果とは

 思わぬトラブルで中座した司。火事にはならないと安心しますが、もう映画の続きを見ることは行いませんでした。途中で遮断されたのでもう途中ではいってもいみないだろうと。そしてお守りを握ったまま映画館を後にします。

 そしてこのことは後日意外な結果としてわかりました。でも、朝早くにそれを見る余裕のないまま出かける司。代わりに読者が知ることになります。「映画館での集団自殺!」司がいた映画館での出来事。結果的に祖母のお守りに助けてもらったのです。「甘いアロマ」が漂う不思議な上映会。果たしてアロマの正体は? そしてこれは集団自殺が目的での上映だったのか、それとも?

5.もし私がこの小説書いたら?

 そうですね。これはおそらく祖母からもらった「お守り」がもうひとつの主人公というニュアンスだと思いますので、そのあたりをより詳しく書いてみるかもしれません。
 ロビーに駆け抜けて、冷めていたお守りを見ながら祖母との懐かしい思い出に浸りますが、特にお守りをもらうシーンだけは再現シーンとして強調して、「司よ、このお守りはどんなことがあっても肌身外してはならん」と祖母が真剣な顔で何度も言っていたことを思い出す。
 あるいは、映画館を出ていくときに、握りしめていたお守り。「なぜか今それを握りしめないと、胸騒ぎがする。よくわからないけど、不安で嫌な気持ちがした」とか、そういうのを加えてみたいですね。

まとめ

 私は、東南アジア映画を見ながら過去に行った街の雰囲気を見ながら追体験をします。行きたくてもいろんな理由で旅ができないとき、お出かけができないときには映画も良いもの。
 またシーンで登場する船と人生をリンクさせたという内容は、他の乗り物ではない船という、広大な大海原をゆっくりとかみしめるように移動するから近さがあるのでしょう。嵐のシーンで不幸が起きたとかもその通りです。

 お守りにでの余談ですが、親から聞いた話では、私は小さいときに車にひかれかけたことがあったらしいのです。このとき乗っていた自転車がひっくり返されただけで大事には至りませんでした。その運転手とよこにいたであろう親とのやり取りなどは一切記憶にありません。
 ただそのときには、私が付けていたというお守りが割れていたと聞きました。つまり「身代わり」になったということです。今回はそんなことを思い出させてくれる作品でした。


まだ間に合います。10月10日まで募集しています。
あと8日ちょっとです。よろしくお願いします。

第一弾が販売されました。

#旅のようなお出かけ #感想 #くにんさん #ライフ・ボート #読書感想文  

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