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港町で出会った後

こちらのおまけのようなもの

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ここは横浜駅のホーム。多くの人がそれぞれの行先への電車を待っていた。そこにふたりのカップルも、他の人のように同じように電車を待っていたが、ふたりとも少し疲れ気味である。

「ねえ、エドワードまだ怒ってる」
「いや、ジェーンもう怒ってないけど、疲れた」と、冴えない表情をするのがエドワードこと江藤。

「だって、途中まで楽しい横浜デートだったのに... ...」
江藤同様、ジェーンのも暗くて冴えない表情。かといってふたりがが喧嘩しているわけではない。

「まあ、イギリス人の君が日本に来ても信仰熱心で、毎週教会に行っているのはわかるけど、あんな見知らぬ酔っ払った親父のくだらない挑発に乗るんだから」

「だって、あんなにイエス様のことを侮辱されたら、ちょっとねえ。ほんとムカついて」
「でも、本当はそういうのを許すのが教えじゃなかったっけ」

「あ、ああ、そうだけど... ...」

「でも、その後どうにか和解して。まさか一緒に山下公園で夜景見るとは思わなかったなあ。あれはあれで不思議な感覚。楽しかった」
「最後変なデートになっちゃったね。ホントごめん」
と言って手を合わせて金髪の頭を下げる。

生粋のイギリス人のはずなのに、こどものころから日本に来ているため、謝り方は日本人そのもの。江藤はそういうジェーンを魅力的に感じていた。


ちょうど電車が入ってきた。爽快に走ってきた電車は、見事に計測したように速度を落とし、ふたりをはじめとする乗客の前にドアを合わせて停車する。ドアが開き、乗客が降りるのを待ってふたりは車両に乗り込んだ。

ロングシートは空いている席があったのでふたりは並んで座った。


「それにしても不思議なふたりだったなあ。過去に来たとか未来から来たとか」
江藤は椅子に腰かけると、少し気が楽になったのか、表情が穏やかになる。

ひょっとしたら腰かけている椅子に電車から感じる小さな衝撃が、マッサージ効果となっているのかもしれない。だからジェーンの表情も先ほどより穏やか。
「エドワード、あの人、本当に時代劇にいそうだった。ちょんまげこそ、してなかったけど、髪後ろで結んでたし」
「ああ、弥次郎さんだっけ。確かに。多分熱狂的な時代劇ファンなのかなぁ。あと喜多さんという若者もいたけど、あっちは普通だった」

「良くわからないけど。あのふたり本当に楽しそう。何日もかけて京都まで旅をするなんて」
ジェーンは先ほどのふたりのことを頭に浮かべながら口元が緩んだ。

「ジェーンさすがに、俺たち会社員だから無理だよな。そうか欧米はバカンスとかあるもんなあ」

「ねえ、エドワード、いつか落ち着いたら旅行行こうよ。海外とか」
「うーん、それはいいかも。今から根回して、数か月後に有給消化してどこか行こう」

「たとえば、あれなんかどう」
ジェーンが指を指したのは、立っている人のTシャツ。「ミャンマービール」のロゴが入っていた。

「ん?ミャンマー?? なんでそんなところに行きたいんだ?」

「私はミャンマーという国が前々から気になっていたの。イギリスの植民地だったから教会もあるみたいだし」

「ふーん、教会ねぇ。ミャンマーだと、ビルマの竪琴とかアウンサンスーチーという人くらいしか思いつかない。こりゃ行く前にある程度調べないといけないな」

「エドワード私は少しは知ってるよ。Shwedagon Pagoda is beautiful!」

「あ、そう。まあ今から貯金しないとな。となると、デートの費用も抑えないといけないぞ」

「エドワード。抑えるのはいいけど遊びに行く回数は減らさないでね」と言ってジェーンは肩まで伸びている金髪の頭を江藤の肩にもたれさせる。
江藤はジェーンの髪を優しく撫でながら軽く頷いた。

そして、その数か月後、本当にふたりはミャンマーに旅をすることになるのだった。

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そのエピソードはこちら

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