「#旅のようなお出かけ」企画に参加してくれた、結城熊雄 さんの「巨人」を読んだ感想。
小説はエッセイや随筆あたりと比べると、創造力というものを一番求められているような気がします。実際に旅をしなくても、あたかもその場所に旅をしたかのようなとか。さすがに宇宙旅行は極端だとしても、創造力を駆使すればいろんな視点から、お出かけが楽しめるのではないだろうかとこの企画を通じて感じてきています。
第二十九弾の結城熊雄 さんの作品は「創造力」がすごく生きているお出かけ作品。タイトルは「巨人」とありますが、ファンタジーとかそういうところで登場する巨人ではなく、実は非常に身近な存在ということを創造力をもって書かれています。
1.窮屈な場所・束縛された状態
主人公はどこかわからない場所にいるようです。わかっていることは窮屈な場所。それも意識がもうろうとしています。抵抗を試みるもどうやら体が束縛されている模様。果たして何者かの手によってどこかに拉致されたのだろうか?
少なくとも自分意志で動く自由な「お出かけ」とは、ちょっと勝手が違うようです。
2.どこかに移動・そばにいるのは巨人?
すると不思議な揺れが起こり始めています。どこかに移動していると主人公は悟りました。固定されているので、詳しい状況がつかめません。上からの風景、空とか雲、たまに先端が鋭利に感じる木の枝が、現れては消えていくそんな世界です。
あと正面には白い壁のようなものが見えていました。しかし揺れるものですから気味が悪くて仕方がありません。
ところがそれ以上に奇妙なものが、主人公の視線に入りました。それは巨人。巨人と言っても大きさは4倍程度の存在のようで、
視線を向けて笑っています。「いったい何を笑っているんだ。それに何を企んでいる」
主人公の頭の中は、そんなことを思い浮かべているのでしょうか?
3.複数の巨人とお出かけ?どこに行くというのだ
白い壁の正体は巨人の胴体部分。どこかに運ばれているようだ。まさか私を食べようというのか?私は必死に叫ぶが、巨人は彼らの伝達手段で何か言っている。巨人語?というものだろうか。しかし何を言っているのか理解できない。それに体は固定されて動かないのだ。あ!もう一体いる。どうやら複数の巨人と移動しているらしい。
これはなんと恐ろしいお出かけでしょうか?主人公の運命はいかに!
4.いつものところに戻った。さて巨人の正体とは
二体が会話をしているらしいことは理解できる。料理方法など相談していたら溜まったものじゃない。確か宮沢賢治だったか「注文の多い料理店」ってのがあったな。まるでその世界?いやわからない。
とここで突然の疲労で、強い睡魔に襲われた主人公は意識をなくす。気が付いたときにはいつものベッドにいた。とりあえず命は助かったようだ。さっき、必死に抵抗の声を出したのが、助かった理由なのかもしれない。
しかし、最後に巨人の正体が。オチがネタバレとなって物語の終了です。
「家族三人での初めてのお散歩、楽しかった〜」
「可愛い寝顔も撮れたしね!」
言葉も判らない。見動きとれない。そしてそのときの記憶は大人になると無くなっている。生まれたころの赤ちゃんは、こんな感情を抱くのかどうか。
素晴らしい想像力です。
5.もし私がこの小説書いたら?
そうですね。これはベビーカーで、お出かけをしたものだと推測されますが、せっかくなのでちょっとアクセントを加える意味で公園に来て、抱っこしてもらうシーンを入れてみたいですね。
突然私の体が宙に浮かんだ。何が始まる?私は抵抗しようとするが、巨人の鋼のような腕や体には、いくら手を動かそうが足で蹴り入れようか、効果がない。巨人はまた笑っている。悔しいが私の無力さがそんなに楽しいのか? すると顔の近くまで来た。まさかこのまま食われるのか?
「やめろ!」今度は私の頭から腰にかけてがその鋼の手とその後ろにある胴体によって完全に固定された。私は巨人とは反対方向を眺めるようにされている。そして巨人は私を回すように動かした。ここはどこだ?あ、そこには木があった。それから何か人工物があり、小柄な巨人いる。
連中らは人工物を使って笑いながら遊んでいるようにも見えるではないか。一体どういうことだ?巨人たちの世界を私に見せつけているのか。そして私がこの世界では無力であること悟らせているのかもしれない。
などと考えていると、突然視界が変わり、体が下がっている。そしてまた固定されてしまった。
というのをどこかに挿入してみたいです。
まとめ
創造力が働かされたお出かけ。大人の都合ならかわいい我が子とのお散歩も、もし赤子に自我があればどう思っているのか?興味深いですね。ほとんどの場合、このくらいの年齢の記憶が完全にないので、実際に自分たちが初めてお出かけした時はどんなものか想像もできません。
ということはお産で初めて母体から出た瞬間。大声で泣きだすのは、今までの、薄暗い世界から突然明るい世界に。そしてさらに多くの巨人たちが目の前に現れるからとんでもない恐怖を味わっている。人生の最初は恐怖から始まるのか?そんなことを考えさせてくれた作品でした。
募集は終わりましたが、企画参加してくださった方の作品を集めています。よろしければご覧ください。
第一弾が販売されました。