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【8/25の日記】インディさんのBARイベントへ行ってきたよ

 高円寺には洒落た店が多い。チェーン店とは違う、小さいが個性的でなかなか美味い店が多い。だが、この日高円寺に行ったのはインディ氏がBARで一日店長をやるのを観に行く為であった。

 店長とは名ばかりのトークショーのようなものではあったが、こちらは彼の話を聞きたいだけであるから全く構わない。ただ心配だったのは、そのイベントでインディ氏がラーメンを作る、という企画があったことだ。正直なところ、インディ氏に料理をするイメージはない。慣れない事をやらせて、インディ氏が火傷でもしたらことである。絶対にラーメンだけは注文しないようにしようと密かに決意しながら会場へ向かった。だが、蓋を開けてみれば、実際にラーメンを作ってくれるのはBARの店員さんであった。一安心といったところであるが考えてみれば自分は元々ラーメンを好まない。つまり注文する予定はなく、わざわざ決意する必要もなかったのであった。

 店は小さいながらも雰囲気の良い、カクテルの美味い処であった。今年の健康診断で肝臓の数値が良くなかったので、大して酒は飲めない。ジュースのような甘いカクテルを3杯程飲んだだけだったが、どれも美味かった。ツマミにはトルティーヤチップスを注文したのだが、普通の飲み屋と違って量が多く、それなりに腹に溜まってくれた。会社から直行して空腹だった身としては非常に有難かった。何にせよ、ケチくさくない店というのは有難い。

 トークはO・J・シンプソンから怪談まで幅広い。とにかくこの人は話の引き出しが多いのである。O・J・シンプソン事件なぞはかなり有名な事件であるから誰でも知っているわけであるが、そんなありきたりな事件を題材に喋っても面白いのがインディ氏の強みである。普通は事件そのものの顛末しか語らないものであるが、インディ氏はその後のシンプソンの足取りまで調査しており、それを語ってくれるのである。そんな調子で、この人はとにかく感性と言うか、ものの見方が面白い。ありきたりな題材で喋っても面白い所以である。平凡な世界が、彼の眼と感性を通して語られると途端に面白いものに思えて来るのだ。魔法のようだといつも思う。
 私は人と上手く話せない。お前はつまらない、と面と向かって言われた事もあるくらいだ。そんな私からすれば、何を喋っても面白いインディ氏は魔法使いに等しい。その幅の広さと知識の深さは一体どこから来るのか、いつも不思議に思う。更には自身が現地へ赴いて手にした体験が加わり、その知識に重みが加わる。知識と行動のバランスが取れている訳だ。知識ばかりの頭でっかちでもなければ体験ばかりの脳筋でもない。更には音楽にもアンダーグラウンドシーンにもサブカルチャーにも詳しい。浅学非才の私なぞは凄いなあとアホ面下げて見上げるばかりである。あまりにも完璧で、この人に欠点はないのかとさえ思う程だ。
 だが微笑ましい処もある。この文章を本人が読むことはないと断言できるので書くが、言葉の選び方が完全に小学生なのだ。誰もが頭をぶつける、造りのおかしなトイレの事を「殺人トイレ」と呼んだり、治験で出される不味い定番メニューの事を「地獄の三点盛り」と呼んだりする。「殺人」だの「地獄」だの、どう見ても男子小学生の喋り方である。普段の完璧さとの余りのギャップににこにこしてしまう。勿論、この可愛らしさもインディ氏の魅力なのである。
 だが、その完璧さと子供っぽさは矛盾しない。無邪気なのだ。無邪気であるが故に何処へでも行って様々な体験をし、気になった事を掘り下げて知識を得る。そしてその無邪気な感性で子供のように喋る。無邪気などという精神状態は害悪でしかないと思っていたが、こんな風に「良い無邪気」も存在するのだと初めて知った。
 そして、インディ氏の無邪気は感染する。彼の話を聞いている間だけは、私も「良い無邪気」でいられるのである。その日tのイベントも勿論、私は始めから終わりまで、目をきらきらと輝かせて「無邪気に」インディ氏の話を聞いていたのであった。


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