一度は行ってみたい無限個存在する島
我々は無限個存在する島の一つに観光する計画を立てている最中である。我々は今土の上で、その島がある地図を広げ最短経路で行くにはどうすればいいかを将棋の駒などを置いて仮の印を入れていく。
間もなくして経路が決まり早速計画を実行に移していく。だが、我々はその島の情報を一切知らない。ただ、地図に「そこにある」と島名と場所を記してあるだけで、無人島なのか暫く滞在できるのか。不明である。ところでこの地図は、人間が落として行った地図である。我々は「帰れる」「どうにかなるだろう」と楽観的に考えていた。
我々は収穫され笊に乗せられ、いよいよまな板の上に寝転び斬られる。そして鍋に入れられ卓上の上に並び、人間の歯によって噛み砕かれすりつぶされる。まったくの無感である。我々はこの時を楽しみにしていた。最高の生存戦略だからである。DNAにそう書いてる。
我々は地図上通り食道を通り胃袋で重たい荷物を捨て去り、与えられた着物を着て身支度した後、腸を経由し、血管にダイブして膵臓のランゲルハンス島に至った。多くの仲間と逸れてしまったらしいことはランゲルハンス島に無事到着して一分も経たない頃である。私は他の者も後から来るだろうと悠長に考え島を散歩、観察してみた。
入口には内分泌機能と書かれた看板が見え、血液にダイブしてからは温かさにうとうとしてしまって眠ってしまっていたから、自分がどうやって来たのか入口を見ただけでは皆目わからない。
進むしかここから脱出する方法がないのだ。
見渡してみると、何十人かの先住民と、私と同じくここに辿り着いた「観光客」がいる。少し遠くを見ると何やら受付をし、そこで与えられたものを身にまとったり飲食して、その奥にある小さな門を潜り抜け、外に出ていた。
どうやら私は、この目ぼしいものが何もないこの場所から脱出できるらしい。
ありがたいことだ。
私がそんな物思いに耽っていると、誰かが私の元へと歩いてきているのに気が付いた。ここの先住民である。私はすかさず
「あなたたちはここで何をしているのか」と早口で問うと、
「わからない。我々は只、この場所で、来客に、事前に調達された物資を来客に与え、向こうの門に通すことだけを言いつけられており、その門の奥がどうなっているのか、さっぱりわからない。我々はここに来て一日経てば、別の門を潜るようにと言われられてい、門を潜ればその都度新人が来るシステムになっているらしい。」
と返答された。こんな退屈な場所からさっさとおさらばしたい私は、私に近づいてきた「先住民」に
「そうか」
とだけ短く返し、物資の所まで案内され、そこで支度して門を潜った。しかし、その先はいつ終わりが来るのかも知らない地獄であった。
始めの方は門が見えてくると、門を叩くだけで通してもらえるから楽な作業だと思いはしたが、何門かを潜り抜けている途中で、一体いつまでやらねばならぬのかと不安と微かな恐怖に包み込まれつつあった。
私はどれほどの距離を歩き、幾十幾百もの門を叩いては潜ってきたか、そして何処に辿り着くのか私は知らなかった。私はこの面白味のない単調な場所で余生を過ごすのだろうか。半永久的に。自らの命を絶つことも否定された世界で。
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