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都会or田舎だけじゃない!  「選べる」世界を拓く漫画 『イナイセ』 に込めた思い。

漫画原作者のクマガエです。

初めましての方も、そうでない方も。こんにちは。

僕はいま講談社の漫画誌イブニングで
漫画編集者が会社を辞めて田舎暮らしをしたら異世界だった
(略して『イナイセ』)
という漫画を連載しています。
(作画は宮澤ひしを先生

『イナイセ』はタイトル通り「田舎暮らし」がテーマの漫画ですが、ただの「田舎暮らし漫画」ではありません。僕がこの漫画で伝えたいと思っていること。

それは「田舎万歳!」でも「都会はオワコン!」でもなく、

「この2択の間には無限の選択肢がある!」です。

僕たちの人生は、テレビや雑誌でよく見るガチの田舎暮らしだけでも、都会の密に揉まれながら会社で働き続けることだけでもない。
その両極端の間で、もっと自由に「選べる」。生き方も、働き方も、住む場所も、全部。

「◯◯しかない」「◯◯しなければならない」の圧力が強めのこの世の中。『イナイセ』を読んだ人が、「こんなのもアリなんだ!?」と気づき、自分の人生をどんどん好きなように「選んでいく」。そうなったら最高…!と思っています。

そんな僕の思いをこめた、

『イナイセ』のコミックス第1巻が、4月23日(金)に発売されます!

めでたい! 非常にめでたい!

…のですが、バカみたいに浮かれてばかりもいられません。先に書いた通り、僕には『イナイセ』を通して「この世界の選択肢を増やす」という野望があります。

だからこそ、ただコミックス第1巻を発売して終わりではなく

1人でも多くの人に読んでもらいたい!と思っています。

そのためには、はじめましての方にも、すでに読んでくださっている方にも、僕という人間と、『イナイセ』という作品について、もっと深く知ってしてもらうのがいちばんだ!

そう思い立ち、せっせとこの文章を書いています。

それでは、すっかり前置きが長くなってしまいましたが、僕と『イナイセ』についてくわしくお話ししていきたいと思います。

1.『イナイセ』は実体験を基にした漫画

僕は現在、田舎と都会の中間にある「ゆる田舎」の千葉県成田市に住んでいます。
もともとは東京の出版社で漫画編集者をしていたのですが、2014年ごろから、会社員であることにも漫画編集者であることにもほとほと疲れ果て、限界を感じるようになりました。

漫画編集者としてヒット作を出せず、雑誌の売り上げは危機的状況。生活は完全な夜型で、終電まで仕事をしたあと飲み屋に繰り出し、土日も関係なく働くという日々。そんな中、とうとう雑誌の休刊が決定しました。悔しくてたまらない…という無念さでいっぱいになる一方、心のどこかでほんの少しだけ、ホッとしている自分もいました。それほどに疲弊していた…というのが正直なところです。

意を決して、会社に漫画部署からの異動を相談するも受け入れられず。「会社員には仕事を選ぶ自由がない」と気付かされました。その後、なんとか仕切り直そうとするも、ポッキリ折れた心は戻らず…。何度か会社に交渉を試み、最終的に退職が決まったのは、最初の相談から約2年後のことでした。
(当時の僕は出版社に出向していて、この辺の事情は少し複雑です。また別の機会に書こうと思います!)

2016年、会社を辞めると同時に東京からも離れ、妻と共に夫婦で成田市に移住しました。移住後は夫婦で自然栽培の田んぼと畑で米と野菜を半自給しつつ、フリーランスの編集者漫画原作者の3刀流づかいで生活しています。
(田んぼや農へと向かった経緯も長い話になるので、これもまた別の機会に…!)

ちなみに、去年のお米の収穫量は460kg!!

一緒に田んぼを借りている仲間と分配しても、約150kgが我が家にやってきました。妻と夫婦2人で食べるには十分過ぎる量です。

「自分で食べる米を自分で作れる」

このことが与えてくれる自信と安心感はものすごいです。この安心感をベースに、東京で会社員をしていた頃とは何もかも違う、健康的で自由度の高い「ゆる田舎」暮らしを楽しんでいます。

『イナイセ』はこんな僕の退職から都会脱出、田舎暮らしへ至るまでの実体験が基になっています。要するに、タイトルそのまんまの内容ということですね。
(基本的にはフィクションです!)

(去年の稲刈りの様子。右が僕。左は妻のルキノです。元コスプレイヤーで『イナイセ』主人公の妻・ミユのモデルでもあります)


2.「かつての自分」に向けて

自分の実体験を元にした田舎暮らし漫画の企画をやる!と決まった時、あれやこれやをメモするために用意したノート。その最初の1ページ目には、こんなことが書いてありました。

最後、何が「大丈夫」なのかはさっぱり分かりませんが、決意表明のような感じで書いたんだと思います。正直、すっかり忘れていました。このノートには、作品の構想や担当さんとの打ち合わせメモ、さらに日記的なものまで、とにかく『イナイセ』にまつわる色んなことが書いてあります。


今回の文章を書くにあたり改めて読み返して、一番自分の心に響いたのが

「かつての自分も連れて行こう」

このフレーズでした。

「かつての自分」。それは、東京で会社員としての生き方に限界を感じ、会社を辞めたいと思いながらも辞められず、悶々としていた頃の僕です。


この漫画が、かつての僕と同じように都会や会社で生きづらさを感じている人にとって、何かしらの新しいヒントや選択肢になればいいなと思っています。


3.「がんばらない」田舎暮らしのすすめ

この漫画には、他の田舎暮らし漫画とはちょっと違うところがあります。それは「がんばらない」こと。

新型コロナウィルスの影響で、都会の生きづらさはますます浮き彫りになっていると思います。地方移住を現実的に考える人が増えている、という話も聞きます。

でも、テレビや雑誌などで特集される「田舎暮らし」は、かなりガチ&ハード寄りですよね。限界集落で自給自足とか、荒れ果てた古民家をイチからセルフリノベ…とか。観る分にはめちゃくちゃ面白いですが、都会生まれ都会育ちの僕にとってはハードコアすぎて「実際やるのは絶対無理…!」となって終わりでした。

実は僕たち夫婦も、いちど田舎へ移住して古民家暮らしを経験しました。ですが、都会のマンション暮らしとのギャップに対応できず、妻の体調不良も重なり、わずか2か月でリタイヤ(笑)。ちゃんとシャワーもエアコンもある、慣れた暮らしに戻ろう!ということで「ゆる田舎」に再移住した…という経緯があります。

そして思ったんです。

都会か? ガチ田舎か?

地方移住という選択肢を考えた時、本当にその2択しかないんだろうか?

都会の密や喧騒を離れつつ、ガチでもハードでもない「そこそこ」の田舎で暮らす。そんな選択肢がもっと広まってもいいじゃないか!ということに。


『イナイセ』で描かれるのは、僕のような経験値ゼロの人でも「できる!」と思ってもらえる、超実現可能な異世界(田舎)暮らしです。


4.自分の人生は「選べる」、ということを伝えたい

繰り返しになりますが、作品を通して伝えたいのは「田舎万歳!」でも「都会はオワコン!」でもなく、「その2択の間には無限の選択肢がある!」です。
もっと突っ込んで言えば、自分の人生は「選べる」ということです。

会社を辞めたいのに辞められず悶々としていた頃、何より苦しかったのは「選べない」ことでした。

生きていくお金を得るためには、会社に所属するしかない。

そのためには、高い家賃を払って東京(都会)にいるしかない。

自分でお米や野菜を作れるワケがないから、食べ物は買うしかない。

食べ物を買えないと飢え死にするから、お金を稼ぐしかない。

とにかく、あらゆる「思い込み」のループに囚われていました。

そんな僕が、会社を辞めて東京から地方へ移り住み、いまでは夫婦2人では食べきれない量のお米を作れるようになりました。会社に雇われることなく、収入を得ることもできています。同じ思いを抱く仲間とも、たくさん出会いました。
東京にいた頃とは全く違う日々の中で、自分の生き方も、働き方も、住む場所も、「選べる」というたしかな実感があります。

このループから抜け出せたきっかけ、それが田んぼとの出会いでした。

「自分が食べる物を自分で作れたら、とりあず飢え死にしない」

このことに気づいた時、「思い込み」のループが解け、目の前にブワッと新しい世界が広がりました。

とりあえず飢え死にしない安心感があれば、会社を辞めても生きていけるし、都会で高い家賃を払う必要もない…と気づいたんです。

安心を得るソース、頼りにするものを「都会」「会社」「お金」から、「コミュニティ」「大地」「自分」へと移していく。それが、何が起こるか分からない世の中をタフに生き抜く、ひとつの方法なんじゃないかと思います。

『イナイセ』を通して、1人でも多くの人が「選べない」窮屈さから抜け出して、無限の選択肢の中から「選んで生きる」人生へと、シフトすることを願っています!

5.『イナイセ』が指差す未来

そんな僕の思いが詰まった

『イナイセ』コミックス第1巻がいよいよ4月23日に発売となります!

作品の今後の命運、すなわち連載を続けられるかどうかは、

すべてこの第1巻の売り上げにかかっています。

しかも「初速」、すなわち発売後1〜2週間のあいだにどれだけ売れるか、がかなり大きな判断材料です。

たとえ半年後に初版部数を売り切ったとしても、その頃にはもう連載終了が決定している(もしくはもう連載は終わっている)ーーそんな世界なんです。これは、漫画編集者として働いてきた僕が、現場で痛いほど感じてきました。

『イナイセ』の2巻以降の展開は、いわゆる田舎暮らし漫画にとどまりません。食や農のこと、働き方や暮らし方などを、ただの「消費者」「労働者」とは違うレイヤーを通して提示するフェーズに突入していく…という構想があります。
オーガニックのことや種のこと、自分で何かを作ること、ナリワイのこと…などなど。

今まで「当たり前」「普通」と思い込んできた世界のすぐそばにある「異世界」を描き出し、それを漫画という、とてもポピュラーで老若男女を問わず読みやすいメディアで伝えていく。

少しでも多くの人に『イナイセ』を読んでもらうことで、「当たり前」の外にある世界を知ってもらう。そして、無数の選択肢の中から自分で「選ぶ」ことができる、より豊かで自立した生き方が「当たり前」になっていくーー。そんな、ごきげんな世界が待っていると信じています。


6.おわりにーー『イナイセ』を読もう! つながろう!

長々と書いてきましたが、何よりもまず、とにかく『イナイセ』を1度読んでみてください!

講談社の漫画配信サービス「コミックDAYS」では、第1話が無料で読めます。

【コミックDAYS 『イナイセ』ページ】

https://comic-days.com/episode/13933686331731525259

続きが読みたい!と思ってくれた方は、単話ごとの購入もできます。コミックDAYSでは、連載誌イブニングの発売日に合わせ、無料話が順番に開放&終了されていく仕組みになっています。

そして『イナイセ』や原作者クマガエに少しでも興味を持っていただけたら、Facebookページをフォロー&いいね!していただけたらうれしいです。

【Facebookページ】

https://www.facebook.com/inakaisekai/

妻と2人でfacebookライブ番組「田舎異世界ツアーズ」も配信中!

【amazon 『イナイセ』1巻予約ページ】

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(※カバーデザインは仮のものです)


それでは、最後まで読んでくださってありがとうございました!

作品を介してでも、SNSでも、リアルでも、お会いできるのを楽しみにしています!

(『イナイセ』原作者・クマガエ)


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