Vol.23 後藤裕樹|目指せ!がんバスターズ・アイソトープ探求博士
1.どのような研究をしていますか?
”がん研究”と”ラジオアイソトープを活用した研究”の2つをテーマに研究をしています。試験管内や実験動物の個体内で、遺伝子を操作したり、免疫細胞を活性化させたり、薬剤投与や放射線照射したりすることにより、特定のシグナルが変化して、がん細胞が無くなっていく瞬間に毎回感動しています。大学院医学教育部での講義に加えて、薬学部の学生さんに放射化学を教えています。また、全学における放射線取扱者に教育訓練を行い、放射線の安全管理に関わっています。
研究で着目している点は、「がんがどのように発生し、どのようなシステムに依存して生存するのか?」についてと、「ラジオアイソトープを用いた研究・教育・社会応用への取り組み」になります。私の研究では、ヒトのがん細胞を免疫不全マウスに生着させたモデルマウスを用いることでがんを持つ個体を再現しながら、目に見えない分子レベルの解析を行っています。特に、ある特定の転写因子の発現が厳密に制御されることで、がん細胞が維持される機構に着目しており、うまく治療標的にできないか取り組んでいます。また、ラジオアイソトープを活用し、放射線研究や教育、さらには社会貢献へと取り組んでいます。
この研究を続けていくことで、既存の治療で治癒できない、がん患者さんに新たな治療法を提示し、ラジオアイソトープとそれにより発生した放射線を活用する全ての人をサポートしていける環境を創っていきたいです。放射線は日常生活・診療・研究・教育において必要不可欠です。放射線の安全利用に重きを置きたいと考えています。
まだまだ、自分自身の研究を発展させて成長していきたいため、今回は「目指せ!」を入れて、「がんバスターズ・アイソトープ探求博士」とさせていただきました。(笑)
2.どのような人生を経て、熊本大学に?
理系のひょうきんな父と文系の明るい母のおかげで、自然を通して科学することや、文章を書く楽しさを学びました。よく遊び、よく学びを大事にしてきたと思います。遊ぶことと学ぶことは同じだと考えています。色々な生き物を捕まえて、両親や祖母を驚かせたり、新聞に文章を投稿したりしていました。小学生の時に地元の珠算教室の中春和子先生から、計算することの楽しさや集中力の高め方を学びました。高校時代に元自衛官の祖父が原発不明がんになったことをきっかけに、がんの研究や臨床にたずさわることを決めました。当時は恐怖がありましたが、がん研究を通して、人に勇気や希望を与えたいと考えています。
大学は熊大医学部に進学しました。大学では色々な友達ができ、バイト・部活の日々でした。当時、熊本市の江津湖の花火大会では、ピザ50枚を作り、運びました。 素晴らしい友人たちとは今でも交流があります。大学の長期休みに、恩師の岡田誠治先生(現 ヒトレトロウイルス学共同研究センター教授・アイソトープ総合施設長)の研究室に伺って実験をしたり、飲み会に参加させてもらいました。この学部時代に、マウスの解析法やフローサイトメトリーの使い方を叩き込んでいただきました。
大学卒業後は、新宿にある国立国際医療センターで勤務しました。難治性の疾患が多く、毎日大変でした。そこで、萩原將太郎先生(現 筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター教授)と出会い、頭のてっぺんから足のつま先まで診察し、血液(ギムザ染色)・痰(グラム染色)・尿(尿沈渣)を直接観察することで診断していく、沖縄県立中部病院・フレッドハッチンソンがん研究センター仕込みの内科学・血液学を叩き込んでいただきました。
大学・大学院を熊本大学で過ごし、途中は九州大学生体防御医学研究所(鈴木聡先生)での研究やアルバート・アインシュタイン医科大学(Prof. Ulrich Steidl)での留学を挟みましたが、熊本大学に再び戻ることができて嬉しいです。生命資源研究・支援センターの先生方・スタッフに支えていただき、皆さんを尊敬しています。同郷(大分県)のスターであられる竹尾透先生に、適宜、相談を仰ぎつつ、荒木喜美先生に研究室運営の助言をいただき、南敬先生にサイエンスとの向き合い方や薬学部教育のご指導をいただいています。大学院時代から交流の深い頭脳明晰な白石善興技術専門職員と2人でアイソトープ総合施設の放射線取扱主任者として従事しており一緒に仕事ができて嬉しく思っています。福島久美子事務補佐員にはいつも親切にサポートしていただいています。
昔から考えていることは変わらず、ビックリしたい、誰かを助けたい、没頭したい、と思い人生を選んできたと思います。影ながら、微力でも良いので誰かを助けたいという気持ちで日々生きることが最も重要だと思っています。
3.人生の中で、心に残っている言葉は?
ズバリ、「七転び”九”起き」です(八ではありません)!国立国際医療センターでご指導いただいた骨髄腫の名医、三輪哲義先生がよくおっしゃられていました。病気に限らず、人生に困難はつきものです。患者さんが病気に負けない姿から、多くのことを学びました。生きているからには、自分も負けずに、毎日を大切に生き抜こうと考えています。
4.研究以外で実は没頭していて自分にとって欠かせないものは?
生き物が何でも好きで、いまだに子供と色々な生き物を捕まえています。また、留学や恩師の岡田誠治先生の影響がありますが、海外の研究者と交流することで、自分や日本人としてのアイデンティティを確認できるので、積極的に海外の人と交流することを心がけています。他には、ジョギングが好きです。いつも支えてくれている妻、3人の子供たち、自分の両親、妹、妻の両親に感謝しています。
▼所属研究室▼
▼紹介記事1▼
(編集担当:織畠知香、石本太我、前田龍成、赤池麻実)
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***ポスター展について***
日時:12/1(日) 12:30~18:00
場所:熊本大学工学部百周年記念館
ポスター演題登録:~11/1(金)
事前参加登録:~11/28(木)
参加費:無料 *懇親会は別途必要
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