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ロシア文学「旅行者の朝食」と「消失の惑星」と阪急電車.7月の読書
東京五輪でロシア出身の選手が活躍した。しかし国家や国旗は掲揚できず、個人の記録として残るとか。ロシアって社会主義時代も現在もなんだかヤバそうだな。政治にイチャもんつけたら裏のひとに消されそうやな。よう知らんけど。
そんな自分勝手なイメージしかわかないロシア(ソビエト連邦)について書かれた、かたや凄腕ロシア語翻訳家・日本人と、こなた生粋のアメリカン女性の10年取材した処女作。ちょっとロシア旅行気分で読み漁った。
旅行者の朝食 米原万里
”朝、森の中で熊に出会い「お前は何者だ?」と問われたら
男の答えは「旅行者です」、しかし熊の答えは異なる。”
その超絶マ●●缶詰には笑えるような、いや笑えないような、深いエピソードであった。他にも筆者ならではの鋭い分類法があり…
料理はうまいが、掃除がダメな女性
掃除はうまいが、料理がダメな女性
曰く、世間には二種類の女性がいて、どっちでもない人は奇跡 、あるいは例外なんだそうだ。ははは、まったくその通り。
ウォッカはポーランド産だった歴史や、北極隊に同行して至福の極上寿司を食べた逸話(笑)や、欧州では全く人気ない「アルプスの少女ハイジ」(泣)や、昼飯は贅沢に夜飯は残り物の粗食がロシア流など、目からウロコの抱腹絶倒話がてんこもりだった。
消失の惑星(ほし) ジュリア・フィリップス
物語は短い夏のカムチャッカ半島ではじまり、ひと月ごとに、リレーのバトンのように、女性から女性へと紡がれる。
八月。アリョーナとソフィアは母不在の午後、海岸近くで遊びながら時間をつぶしている。小学生の二人は車で送ってあげるという言葉を信じ、知らない男の車に乗り込んでしまうのだ。
十二月。クシューシャは遠い町に下宿している大学生だ。18歳のリリヤ疾走事件後、恋人の束縛がキツくなり、先住民と白人との恋人関係が揺れる。
姉妹が最後に車に乗り込む姿を目撃した研究者、十代で出産し幼い娘をかかえたシングルマザー、LGBTを秘しカムチャッカ半島を離れた女性、妹は家出したはずないと信じるリリヤの姉...。一章読み終えるごとに苦しくもがく女性像が増え、いったいどこへ向かうのか、相関図を頭に描きながら、おそるおそる次章にすすんだ。
5-6月が、私にはもっともきつかった。好奇の目で被害者を打つマスコミ関係者。さらに、姉妹の母と2年前の失踪した娘を今なお探し続けている母が出会う場面、その顔を直視した場面だ。
私自身も家族が失踪した経験を持つ。あの時、私もこんな顔をしていたのか、と絶句した。
最終章まで読み終えて、ありがとう、と伝えたい。
興味を持った方は早川書房のこちらへ
阪急電車 有川浩
関西人にとって「阪急電車」は特別だ。
甲子園球場を通り虎吉が騒ぐ「阪神」、山中や海際をいく「南海」、京都-大阪-奈良-三重-愛知と路線距離ぴかイチの「近鉄」などの中、深緑色のふかふかシートに木目調の車内、車両のあずき色は「マルーンカラー」と呼ばれ、阪急電車に憧れ引っ越す人もいるほどだ。
図書館つながりで知り合った若者:二週間ごとに図書館行くって設定がええやん。結婚式から逃げてきたと思われる白いドレスの女性、老女と孫。
車内に乗り合わせた乗客とさまざまな人生を載せて、宝塚線の電車はごとごと走り出す。
有川浩さんっておんな機微がわかってるなぁ、読後、あとがき読むと、女性、そして高知県の出身だった。なるほど日本酒描写がうまかったわけだ。