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ふたつのパラダイス:「楽園」と「楽園のカンヴァス」


ノーベル文学賞は毎回気になるし,第三世界の小説も好き。という事で,東アフリカ文学の『楽園』を予約したところ、以前予約したまま忘れてた『楽園のキャンバス』が同時期に揃い、楽園まつりの初夏だった。


楽園  the garden

ユスフは東アフリカ・タンザニアを故郷とする10代の少年。父の借金のカタに裕福な行商人に身柄を預けられ、年上のハリル(アラブ系?)を兄のように慕い飲食店を手伝う。そして,主人の行商の旅に同行するうち、地域社会や宗教や権力者と奴隷制など、大人になるための処世術を身につけ成長していく物語。
ユスフにとっての『楽園』とは主人の庭のこと。労働の休憩時間に庭師に師事し、花々や薬草や果実樹の世話をする喜びが生き生きと描かれている。

そう,ハリルのように。落ち着きがなく喧嘩腰で,四方を囲まれて隷従する。どことも知れぬ土地に囚われて。ハリルが客とひっきりなしのふざけ合い,信じられないほど陽気だった姿を想像する,あの態度は心の奥底にある傷を覆い隠すためのものなのだ。カラシンガも同じ,故郷から遠く遠く離れて生きる。だれもかれも,悪臭漂う場所にはまり込み、郷愁にとりつかれ,失われないままの過去の幻影をうかべて慰められる。

炎の門

まだ12歳の少年は幼く、故郷や両親の記憶は日に日に薄れていく。
自分はどこからきて、どこに属し、どこに行くのか、を忘れないように、必死に生きている姿が胸にせまってくる。

例えば ユスフが尊敬する庭師は元奴隷だった。
教科書では、白人の奴隷商人が欧州やアメリカへ、肉体労働力としてアフリカ人を船に乗せて運んだ、と習った。ところが、同胞の中にも頑丈な少年を捕らえ奴隷商人に引渡して商売をしていた者がいるのだ。 つまり、主人もアフリカ人、奴隷も(連れ去られた)アフリカ人、という公式があったとは。

贈り物として自由を与えられた.あの人がそうした。でもあの人が自由を与えられるなんてだれが言ったんだ。(...)俺には生まれた時から自由がある。ああいう人たちが、お前は俺のものだ,俺はお前を所有していると言うのは,通り雨が降ったり、一日の終わりに太陽が沈んだりするのと似ている.次の朝、否が応でも太陽はまたのぼる。自由も同じだ。

ムゼー・ハムダニはため息をつく
世界大戦前のスワヒリ世界を描いた小説


●楽 園 
アブドゥルラザク・グルナ

粟飯原 文子

楽園のキャンバス

原田マハの代表作と呼ばれる、美術品の鑑定対決ミステリ小説。
有名すぎてストーリーをわざわざ書くまでもないが、つたない感想文を少しだけ。

ごめんなさい。
私、途中で先が読めちゃった。人物相関図も予想した通りでした。
けれども前半はキュレーターの仕事に興味津々で読み止まらず、中盤以降は答合わせの感覚で楽しみました。

アート・ミステリ:というジャンルがあるのを今回初めて知った。
ダン・ブラウンの「天使と悪魔」、「ダ・ヴィンチ・コード
アルテュール・ブラントの「ヒトラーの馬を奪還せよ」 など過去に読み

実在の美術工芸品と、架空の人物・事件を組み合わせて謎を解く。アート派もミステリ党にも、双方おいしい小説はハラハラとワクワクにこころ躍り、しかも読んだあと超スッキリ!
蒸し暑い日に、最適ジャンルかもしれない。



#楽園  #グルナ #ノーベル賞
#アートミステリ #原田マハ
#楽園のカンヴァス


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