続々 母と娘の密時間.
梅雨明けはまだだが、暑い日が続いている。
「今日のごはん、あぁおいしかったわ」。
昼食の瞬間、母は幸せそうに笑っていた。素麺は竹子の好物、とくに新生姜と貝割菜と紫蘇とミョウガを刻んだ薬味が気に入ったようだ。
四時間後。生まれて二度目の救急車に乗りこんた。
あわてて電話をかけようとするウチが「110番よね」と大きな独り言をいうと、
「ちゃうちゃう、救急車は119番やろ」とツッコミいれる竹子。
頭の方はウチよりしっかりしている、よかった、問題なさそうだ。しかし、海の日の祝日だ、どこも診療所は閉まっているのだ。もし骨折なら動かさないほうがいい、というケアマネージャーの助言により、整形外科の病床ある病院へ緊急搬送だ。「ばあちゃん骨折した。救急車で病院へ行くから!!」ウチは階段から上に向かって叫んだ。だが、自宅へ救急車が乗り付けた瞬間も、二階に住む家族は降りてこなかった。
三時過ぎ、竹子はトイレまで自立歩行で行った帰り、あっという間に足元が乱れ、変な体勢で転んだのだ。痛たたたた、竹子の額から脂汗がにじみ出て、足を踏み出そうとするが、胡坐姿勢のまま一歩も足が動かすことができない。
あぁあ、やっちゃたかもしれない。
そして、搬送先の病院にてレントゲン結果は左大腿骨骨折。足の骨折は年齢に関係なく手術が必要、と宿直医が説く。竹子は83歳の高齢だ、麻酔したまま戻らない可能性はゼロではない。
これまでの自宅介護110日間のあの時その時が、ウチの脳内をかけめぐったのだった。あぁ、本当にやっちゃった。