無月の譜。見えない名月のしたで。
私の祖父は囲碁をたしなむひとだった。
座敷で祖父が友人と一局対戦しているときは、祖母をはじめ子供の私もそぉっと歩き、思考の邪魔にならないよう、家族みながぴりぴりしたものだ。
その立派な足付碁盤と白黒の碁石は祖父が亡くなり、相次いで父や祖母も亡くなりどこかにいってしまった。昭和時代(大正時代かも)の工芸品はひとつひとつ手づくりで職人の技量と手間がかかった逸品だった。つやつやの黒い石と白い石は子供のおはじきにも似て、じゃらじゃらさせて遊びたいのだが、さわるだけでもひどく叱られた記