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読書録

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ミステリが好き! 自分の読後録と,心に刺さった読書感想をあつめています。三年半かけて「芥川賞ぜんぶ読む」,ひと月一冊は読んでるものの文字おこしが遅々として進まず...。
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記事一覧

島に流れ着いた少女が島の儀式や性差によって言語を変える風習を不思議と感じながら,歴史の闇を知り容認していくところに,日本のゆがみに気づかされた。台湾もそう,二言語の時代があった。男が戦争をはじめ,社会を壊す。女性リーダーによる統治時代がもう近い #彼岸花が咲く島 49/115 

6.4天安門でなにが起こったか。1997年7月1日 香港中国返還の高揚は何だったのか。中国に生まれ,日本在住の著者は共産党と民主化について小説の形を借り語る。 時代に翻弄される青年二人と史実を絡めた力作。国を愛するとは,故郷とは..深く問いかける #時が滲む朝 48\115

“おなごはんに ぜったい恥かかすな.角がたたへんよう,まるうに事おさめ.ええか光,おなごはんの恨みだけは買わんようにしよし. “ 京言葉で記された源氏物語を読んだ。イケメンは昔も今も忙しそうやな. 恋の病は大変そうやな. 聖俗さまざまあるよな. 紫式部はきっと恋多き女だったはず

PERFECT DAYSとパトリシア・ハイスミスとアラン・ドロン

追悼:アラン・ドロン 下書のまま2ヶ月放置してる間に、世界中の女性を♡瞳にしたアラン・ドロンが旅たってしまった。 「太陽がいっぱい」のトム・リプリーを演じたアラン・ドロンは無敵だった。まさに(完全)犯罪。彼氏に言い寄られてNon! と断れる女性はいないだろう。 個人的には『若者のすべて』の貧乏でやさぐれたボクサー役が好き。しかし、『山猫』のイタリア貴族役も『ボルサリーノ』暗黒悪役も『地下室のメロディ』サスペンスものも、何やってもハマる“絵になる男“ と認めざるを得ない。

ボケなのかマジなのか。のっけからヘン。マグロと恋愛した夢をみた..とはじまるのだから。電話でそそのかされ「うーみーしーばーうらっ」まで電車で出かけていく私。ブレードランナー×沖縄が三重県のコンビナートにつながる不思議。最後までキレよく痛快だった 第111回 芥川賞 39/113

ふたつのパラダイス:「楽園」と「楽園のカンヴァス」

ノーベル文学賞は毎回気になるし,第三世界の小説も好き。という事で,東アフリカ文学の『楽園』を予約したところ、以前予約したまま忘れてた『楽園のキャンバス』が同時期に揃い、楽園まつりの初夏だった。 楽園  the garden ユスフは東アフリカ・タンザニアを故郷とする10代の少年。父の借金のカタに裕福な行商人に身柄を預けられ、年上のハリル(アラブ系?)を兄のように慕い飲食店を手伝う。そして,主人の行商の旅に同行するうち、地域社会や宗教や権力者と奴隷制など、大人になるための処

尋ね人の時間、共喰い、ひとり日和:芥川賞ぜんぶ

男性は、雄は、どうして、こうも性欲のことで昇天したり凹んだりするのか。真ん中におちんちんが生えてるせいなのか。十代のセックスに興味津々の頃ならいざ知らず、40代になっても枯れてしまっても、性欲から離れられない。そのことがまず悲しいし、私は女性だからどうも理解しがたい。 そんな三冊の小説の感想をまとめてみた。 尋ね人の時間 4歳で父を亡くし、その数年後に妹も亡くしてしまった神谷の心の底に、生きることのはかなさが、しまいこまれている。 いまはそこにいない、けれど、以前はそばに

きれぎれ、陰の棲みか 芥川賞ぜんぶ

ちょっと大阪もんが読みたくなり、図書館で検索したら、二〇世紀末の芥川賞:122回と123回の受賞者がまさに大阪出身の作者だった。 きれぎれ 投身自⚫︎ の幻影からはじまり、焼そばをケダモノのような格好で食うランパブ出身の妻、画家の友人への妬み、事故死の友人への憐憫など、腐敗と劣等感と嫉妬と軽蔑にまみれた 俺いや僕の、破天荒な日常がヘドロのようにあふれ出た文章。 あーあ。もう。めんどくさいわね。むかつくぅ。おうやるのか、こら。うるせぇんだよ。きぃー。わぁやめろやめろ。うわっ

猛スピードで母は : 芥川賞ぜんぶ

クモガタ・サダノリって知ってる? 20代の頃、使い道が謎だったクモガタ・サダノリこと『雲形定規』。彼の存在をすっかり忘れてたが、この小説中に二度も登場し、しかも1度目は主人公が私と同じく、変な形、何に使うものだろうと不思議がっていた。 サダノリ、元気だった? 彼の名を思い出させてくれて、ありがとう。 ※以下ネタバレを含むため、未読の方はご注意ください。 結婚するかもしれない、と慎に告げたのは、自力でタイヤ交換できるし、車は猛スピードでかっ飛ばす、むかし漫画家を目指した、シ

家族は痛い。聞かれたくも触れられたくもない。一方,汚れたアカをほじくり出して臭いごと差出してみたり。崩壊家族が映画撮影に再会するが,それぞれ役割を演じる中, チクリと刺さった棘がぬけない,そんな物語。 私的な断片さらけ出す著者,苦手だが避けられない。116回 芥川賞 41/113

大学サークルの先輩と草むしりをしながら,とりとめないよもやま話。30代男女の再会だが,どきどき展開はなく,哲学やイルカ知能についてビール片手に語り合う。いいなぁこんな関係。たった数時間の濃密な時間,なんでもない日常こそ貴重なんだな。133回 40/113冊 #この人の閾(いき

スナックの女たち三人を連れての沖縄離島への厄落としの旅。正吉は亡き父の風葬に心を遺し、島唯一の民宿に泊まり、豚にあたった女の下痢や懺悔の言葉を自ら引きうける。「試練がないと悟りにいたらない」「人間にすくうのは人間」深い業が透けてみえる。 #豚の報い #芥川賞 38/113冊

まさかナチとともに消滅したはずの彫像が!読みだしたら止まらない。著者は実在の美術探偵:ノンフィクならではの怪美術商や秘密警察やKGBや ゴシップ記者が山盛りで,欧州を駆け巡る。ダン・ブラウンの欧州美術小説ファンには特におすすめ。 #ヒトラーの馬を奪還せよ

三千円の使いかた、と、もう別れてもいいですか

同世代の主婦の間で話題になっていた「もう別れてもいいですか」。 図書館予約本を入手したとき、「三千円…」のほうが目につき、文庫本で通勤途中にちょうど軽かったので先に読むことにした。すると、巻末の解説を書いているのは垣谷美雨さんではないか。なんだかシンクロ?数珠つなぎを感じてしまったわ。 ※以下ネタバレを含みます 三千円の使い方 書き出しの二行に、やられた。 たしかに、自分自身の「三千円の使い方」を考えながら読み進んでしまう。 第一話の美帆、第三話はその姉の真帆、第五話は