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エンジニアがチームを動かすためのコミュニケーション術(初心者CTO編)
CTOとして新たな役割を任されると、技術だけでなく、チームやビジネスの橋渡し役を果たすことが求められるようになります。この新たな責任は、多くのやりがいを伴う一方で、これまでに経験したことのない課題や壁に直面することも少なくありません。
特に、CTOの役割を担い始めたばかりの段階では、「すべてを自分で解決しなければならない」と感じたり、「チームとどう向き合えばいいかわからない」と戸惑うことがあるでしょう。本記事では、こうした課題を乗り越えるためのコミュニケーション術をご紹介します。
CTOが初期にぶつかる課題と乗り越えるためのコミュニケーション術
1. 負担を分散させる「信頼の連鎖」を作る
CTOとしての責任を感じるあまり、すべての問題を自分で解決しようとするのはよくある落とし穴です。特に、技術力を高めてキャリアを築いてきた人ほど、「自分が動けば早い」「自分の方が正確だ」と考えがちです。しかし、この姿勢は長期的に見ると大きなリスクを伴います。チームの自立性が失われ、メンバーが受け身になってしまうからです。
僕自身も、初めてCTOを任された際には同じ罠に陥りました。「自分が解決すれば早い」という考えが強く、結局チーム全体の進捗が遅れたことがあります。
ポイント:
タスクを任せる際、「あなたに任せる理由」を丁寧に伝える。
メンバーの強みを理解し、適切な役割を与えることで信頼を構築する。
2. 技術の言葉を「相手に合わせた言葉」に翻訳する
技術的な議論を経営陣や他部署とする際、専門用語をそのまま使うと、理解が得られず意思決定が滞ります。CTOには「技術の橋渡し役」としての能力が求められます。
僕があるプロジェクトで、新しいシステムを導入する提案を経営陣に行ったときのことです。初めは技術的な利点を詳細に説明していましたが、相手の反応が薄いままでした。そこで視点を変え、「このシステムによって年間〇〇万円のコスト削減が可能になります」といったビジネス的なメリットを伝えた結果、迅速に承認を得られました。
ポイント:
相手の視点に立ち、「プロジェクト全体にどのような影響があるのか」を説明する。
非技術者が理解しやすい「共通言語」を見つける努力をする。
3. 外部とのコミュニケーションは「橋をかける」つもりで
CTOは、チーム内だけでなくクライアントや他部署との架け橋としての役割も担います。この役割がうまく果たせないと、認識のズレからプロジェクト全体に影響を及ぼす可能性があります。特に、要求された内容に対して技術的な背景や制約を適切に伝えられないと、不必要な負担が発生してしまうこともあります。
ポイント:
クライアントとの関係: 要求を鵜呑みにするのではなく、実現可能な代替案を用意することで、相手の期待を満たしつつチームの負荷を管理します。
チームとの共有: 外部とのやり取りを透明化し、全員が同じ方向を向けるようにします。背景や意図を共有することで、チーム内での無用な混乱を防げます。
実践編: CTOが意識すべき3つの取り組み
1. チームを導く「鳥の目と虫の目」を切り替える
CTOとして、プロジェクトの細部に囚われすぎず、全体像を把握する視点を持つことが重要です。高い視点で全体を見渡しつつ、必要な場面では具体的な課題に目を向ける柔軟性が求められます。
実践:
プロジェクト全体を俯瞰し、進捗状況やリソース配分を確認しながら、大きな方向性を整えます。
具体的な課題が発生した際には、現場の声に耳を傾け、問題の本質を捉える「虫の目」で解決を図ります。
2. 「1年後の組織像」を具体的にイメージする
CTOの役割は、今を支えるだけでなく未来を創ることです。短期的な目標に囚われず、1年後の理想的なチーム像を具体的に描くことで、採用やスキル育成の計画を立てやすくなります。
実践:
「どの分野で競争力を高めたいか?」といった問いを投げかけながら、組織のビジョンを策定します。
たとえば、クラウドの需要が高まっている場合、インフラエンジニアを増員し、既存メンバーにAWSやGCPのトレーニングを提供するロードマップを描きます。
3. 「振り返りの文化」を根付かせる
振り返りは単なる反省会ではなく、学びを共有し、次につなげるための大切な機会です。振り返りを定例化し、改善点を実行に移すプロセスを徹底することで、チーム全体の士気と生産性が向上します。
実践:
スプリント終了後の振り返りを短時間で行い、アクションアイテムを明確化します。
改善点を定期的に振り返り、「何が変わったか」をチーム全体で確認する仕組みを作ります。
僕の経験談
僕が特に学びを得たのは、プレイングマネージャーとしてプロジェクトに携わっていたときのことです。そのプロジェクトでは、技術的な問題だけでなく、チーム間での認識のズレが課題となっていました。メンバーの意図や状況が共有されておらず、それぞれが独自に動くことでチーム全体の進行が滞っていたのです。
そこで僕は、全メンバーが同じ認識を持つことを目指し、ミーティングの頻度を増やしつつ、コミュニケーションの質を高める取り組みを始めました。特に意識したのは、以下のポイントです:
ゴールや目的を繰り返し共有する
「何を目指しているのか」を言葉にして伝え、常にプロジェクト全体の方向性を意識させるようにしました。
メンバー間の対話を促進する
チーム全体で意見を出し合い、各自の進捗や課題を共有することで、自然にお互いが補完し合える環境を作りました。
こうした取り組みを重ねることで、メンバー間の壁が少しずつ取り払われていき、次第にチーム全体が自発的に動き始めました。その結果、プロジェクトがスムーズに進むだけでなく、チーム全体の連携が強まり、次のプロジェクトへの学びや成長につながったのです。
まとめ
CTOに求められるのは、技術だけでなく、チーム全体の力を引き出す「コミュニケーション術」です。
信頼を築き、役割を明確にする
技術の言葉を相手に合わせた言葉に変える
橋渡し役として外部とも連携する
これらのポイントを実践しつつ、長期的な視点で組織を育てることで、CTOとしての役割を全うできるでしょう。ぜひ、今日から一歩ずつ取り組んでみてください。