平成に人気を博した少女漫画から見る:懐かしい「ガラケー」の登場シーン
ポートフォリオ用にくまちびが書いたマンガ記事です。漫画をはじめとしたメディア関連のライターをお探しの方は、ぜひお読みください。
はじめに
スマホが普及する前の携帯電話は「フィーチャーフォン」と呼ばれており、日本では通称「ガラケー」と呼ばれていました。このガラケーが流行したのは1990年代後半から2010年頃で、バブル崩壊後まもなくして登場した携帯電話です。
そんなガラケーは平成初期の人気少女漫画にも登場しており、そのシーンを見ると「こんな使い方をしていたなあ……」と懐かしい思い出が蘇ってきます。今回は、ガラケーが登場する人気少女漫画のシーンと、昔使っていた人にとって懐かしいガラケーのあれこれを紹介します。
着信に気づかずドタバタ展開に…『有閑倶楽部』自作着メロがなつかしい
まず紹介したいのは、1981年より『りぼん』(集英社)で連載がスタートした、一条ゆかり氏の人気漫画『有閑倶楽部』です。2000年以降も『マーガレット』や『コーラス』など、掲載誌を変えて不定期連載が続けられていましたが、物語の後半ではガラケーが登場しています。
『りぼんマスコットコミックス』16巻の「紳士は美少年がお好きの巻」では、主人公の剣菱悠理が、美少年会員クラブに勤める雅央という青年に間違えられ、ヤクザに誘拐されてしまいます。
悠理を助けるため、有閑倶楽部のメンバーたちはさまざまな手を尽くします。やっと居所を掴んだ菊正宗清四郎と松竹梅魅録は、悠理の父親や警視総監にガラケーで連絡をしますが、なかなか電話がつながらずイライラする様子が描かれています。
思い返すと、ガラケーの着信音は、もともと携帯電話に内蔵されているシンプルなものが主流でしたが、そのうち「自作着メロ」が流行し始めました。自作着メロは、携帯電話の着信音を手打ちで1音ずつ入力して作成するものでした。
私も単音で童謡のメロディを入力した記憶がありますが、流行の曲にしたい場合は多くのメロディを打ち込む必要がありました。そのため、自作着メロの作り方を紹介する本まで販売されていたのを覚えています。
自分だけのオリジナル着信音を作るために、ガラケーのボタンを1つずつ手入力していた時代が懐かしいです…。
ガラケーのアンテナを立てての会話シーン『悪女』
深見じゅん氏の『悪女(わる)』は、女性向け漫画誌『BE・LOVE』(講談社)で1988年から1997年まで長期連載された作品です。
主人公の田中麻理鈴がバブル時代を背景に、社会人として恋や仕事に奮闘する姿が描かれており、その人気から過去に二度のドラマ化がされています。そんな本作にも、ガラケーのシーンが登場しています。
物語の後半で、主人公の麻理鈴が怪しい経営コンサルタントである平賀勝と出会います。当初は敵対する場面もありましたが、麻理鈴の実直な姿を見た平賀は、その後、彼女がピンチのときにサポートしてくれる味方となっていきます。
講談社漫画文庫13巻には、取引相手を騙すために平賀がガラケーのアンテナを立てながら通話のフリをするシーンが登場しています。
思い返してみると、昔のガラケーは通話するときにアンテナを立てないと相手の声が聞こえにくかったり、ノイズが入ったりすることがありました。また、デフォルトのアンテナを「光るアンテナ」に付け替えていた人も多かったのを思い出します。今ではすっかり見なくなったアンテナですが、実は今使っているスマホにもアンテナが内蔵されているそうです。
このほかにも、ガラケーでは携帯のカバーの裏に恋人や友達とのプリクラ写真を貼ったり、ぬいぐるみのような大きなストラップをいくつもつけるといったことがブームになりました。また、今ではなくなった「ボーダフォン」という携帯会社があったのも懐かしい思い出です。
あの国民的人気少女漫画にもガラケーシーンが! 恋愛には欠かせなかった「センター問い合わせ」
神尾葉子氏の『花より男子』は、累計発行部数が6100万部を突破(2018年時点)しており、“最も多く発行された単一作者による少女コミックシリーズ”としてギネス記録にも認定されている国民的少女漫画です。
1992年に『マーガレット』(集英社)で連載が始まった本作には、ポケベルやガラケーが随所に登場しています。
マーガレットコミックス15巻では、主人公の牧野つくしがモデルをしている織部順平と知り合います。しかし、その後トラブルに巻き込まれ、つくしのロッカーに赤札が貼られる事態が発生します。事実を確かめるために後輩の三条桜子がF4のメンバーである西門総二郎にガラケーで連絡を取り、状況を確認するシーンが描かれています。
ガラケーは当時の恋人たちにとって欠かせない連絡手段でした。メール機能も搭載されており、大切な人からのメールが届いていないか「センター問い合わせ」をしていた人も多かったのではないでしょうか。
筆者も若い頃に合コンをして、気になる人と連絡先を交換したことがあります。その後、その人からメールが来ていないか、何度かセンター問い合わせをした記憶があります(残念ながら連絡は来ませんでした)。
さらに、センター問い合わせをした際、「このメールを100人に送らないと不幸になる」といったチェーンメールが届いたこともありました。ガラケーのメール機能は、良くも悪くも当時の人々の生活に大きな影響を与えていました。
まとめ
平成の時代に活躍したガラケーですが、今では持っている人もほとんどおらず、実物を見る機会もめっきり減りました。当時はまだX(旧Twitter)やインスタグラムといったSNSも存在せず、“スマホ依存”といった社会問題もなかったなあ…と懐かしく思うこともあります。
いまではもう、ほとんど手に入らないガラケーですが、たまには2000年代初期の少女漫画を楽しみながら、当時のガラケーに思いをはせてみるのも楽しいかもしれませんね。