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創作② 雨やどり
家の前で、2人の男が話している。
「いや、参りましたな」
「本当ですね。突然降ってきて困ったもんだ」
どうやら雨やどりらしい。
だとしても、ちょっとどいてくれないかな。
「天気予報は、雨が降るなんて言ってなかったですよね」
「本当に。最近の天気予報は当たらないから困る」
分かってんなら、傘用意しとけば?
っていうか、そこをどいてくれないかな。
「まだ、やみそうにありませんなぁ」
「そうですね。このあと大事な商談があるんですが。困りました」
「私も大事な商談があるんですが。失礼ですが、御社は?」
「失礼しました。〇〇商事のAと申します」
「やはりそうでしたか。声しか聞いていなかったもので。
失礼しました。私は××会社のBと申します。初めまして」
「何度も電話で話してますのに、初めましてもありませんね」
「確かにそうですなぁ」
おいおい、名刺交換はじめたぞ。
それに意気投合してるし。
どうなってるんだ、いったい。勘弁してくれよ。
「まだまだやみそうにありませんなぁ。ここであったのも何かの縁ですな。
簡単に打合せしませんかなぁ」
「それもいいですね。やりましょう」
家の前で仕事始めちゃったよ。
困ったな。
他の人ら、知らん顔して雨を避けながら、
小走りで通り過ぎてくじゃないか。
「なるほど。それはいいですなぁ。
これなら、わが社でも是非という話になります」
「そうなればありがたいです。ありがとうございます」
「まあ、私に任せてください。説得してみせますから」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
とりあえずはまとまりそうでよかったな。
じゃねえよ。
こっちはどうしてくれんだよ。
近くにコンビニができて、さっぱりなんだぜ。
「空が明るくなってきましたな。もうやみそうですな。
急げば間に合いますから、行きましょうかな」
「そうですね。行きましょう」
あれま。用事がすんだら行っちまったよ。
もう、雨もあがるな。
おかげで機会損失だよ。
突然の雨に、わざわざ傘屋の前で雨やどりするやつがいるか。
ましてや、その店先で商談まとめるとか意味わからん。
せっかくの土砂降りも、客が気付かずに素通りしてったじゃないかよ。
どうしてくれるんだよ。商売あがったりだ。
ちょっと待てよ。〇〇商事って、最近雨具に参入したんじゃなかったかな。
ということは。