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素敵な短編小説

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2015年7月の記事一覧

花屋

『花屋』と呼ばれるバーテンに1人の男が客で来ていた。

その男は色落ちしたスーツを着て、見るからに冴えないサラリーマンだった。

動画が止まったように無表情のその男は、頬杖をつき、ひたすら強い度数のカクテルを飲んでいたが、

やがて大きなため息をつきバーテンダーに話しかけた。

「なぁ、兄さん。俺はもう何年も笑ってないんだよ。

それどころか泣きもしないんだ。感情なんて無駄なものが、どうやら消えち

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最高の食材

人類史上最高の料理が食べられると、知る人ぞ知るレストランがありました。

そこでは高価なスーツと宝石を着飾った紳士淑女達が集まり、一つの丸テーブルを囲み、

興奮気味に料理の登場を今か今かと待ちわびていました。

時の満ちた頃です。

丸テーブルにスポットライトがあたり、優雅なクラシック音楽が流れると、

テーブルの真ん中に四角い穴が開き、微かな機械音と共にエレベーターのよう

に黄金の箱が上がっ

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