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【樹木たちの知られざる生活】    (要約3/4)

【樹木たちの知られざる生活
 森林管理官が聴いた森の声】
著 ペーター  ヴォールレーベン
訳 長谷川 圭

 〚要約〛(3/4)


■君のものは僕のもの

キツツキは
幹や枝に小さな穴を開け体液を舐める。

アブラムシは葉脈に口を刺してぶら下がり
樹液をちょうだいする。

蝶や蛾の幼虫は糖液ではなく、
葉そのものに狙いを定めている。
マツにとってはマツハバチも脅威だ。

キクイムシは弱った木を見つけて棲みつき
大量の仲間を呼び寄せその木を死に追いやる

ナラタケは形成層から糖分や養分を盗む。

大型の草食動物はもっと手荒だ。
シカからはやすりとしても利用され
そのせいで樹皮が剥がれ落ち死ぬことがある

■住宅供給サービス

大きな木は住宅として大人気だ。

木質繊維は音をよく伝える。
木の穴に棲む鳥は、
この特性を警報器として利用する。
イタチやリスなどの爪の音で危険を察知して
逃げることができる。

木は、じつは必死に抵抗している。
傷口、つまり穴の入口さえ塞げれば、
寿命を延ばすことができる。
穴にコブのような腫れできていれば、
自己治癒を行なった証拠だ。

木が嵐などで倒れた場合にも、
木はコミュニティの役に立ち続ける
倒木にたくさんの生き物がやってきて、
そこを棲家とするからだ。
こうして森に棲む種が多様になる。
多様性が高まれば生態系はより安定する。

■さまざまな生き物の母艦

森の上階については研究が進んでいない。
調査するにはクレーンが必要になるからだ。

研究者マルティン・ゴスナーは、
除虫菊粉剤を散布した。
虫が雨のように上から降ってきた。
残酷な話だが、たくさんの生き物が
樹上で生活していたことが分かった。
257種類、2041匹の生き物が確認できたのだ

死んだ木の体は生きた木と同じように貴重だ
木は養分を地面から取り込んで体内にためる
子供たちにとってはかけがえない遺産となる

すべての動植物種の五分の一は
朽木に依存しているといわれている。
朽木に群がる生き物が森林を脅かすのでは?
と、森の外へ運び出す森林所有者もいるが
貴重な生活空間を壊すだけだ。
朽木の住人は健康な木に手出しはできない。

■冬眠

クマと違って果実やサケを食べたりはしない
日の光をいっぱい浴びて糖質などをつくり、
クマのように皮膚に蓄えておく。

体内の水が凍ってしまうと破裂してしまう為
多くの樹種では7月頃から活動を弱める。

針葉樹は緑の針葉をつけたままだ。
乾燥した冬でも水分が失われないように、
針葉の表面をワックスの層で厚く覆っている

10月を過ぎた頃から強風が増えてくる。
広葉樹は風の当たる面を減らすため帆を、
いや、葉をすべて落とすことにした。

木が一本だと強風で倒れてしまうだろう。
しかし、森ではそうはならない。
枝同士がぶつかり揺れにブレーキがかかる。
個体として自立しながらも、
社会としても機能している。

■時間感覚

冬が寒ければ寒いほど、
新芽が生じる時期が早くなる。
樹木は冬がしっかり寒くないと冬眠ができず
春になっても元気が出ないのだろうか。

気温だけでなく昼の長さも、
葉の廃棄や再生に影響する。
たとえばブナは、
日の出ている時間が1日13時間を
超える時期になって活動を開始する。
目の役割を果たしている第一候補は、葉だ。

暖かい年の秋に高い気温が続くと、
樹木といえども混乱する。
九月を過ぎてから芽が膨らみ、葉を広げる。
いわばフライングで、このルール違反は
冬がやってきたときペナルティを科される。
翌年のための芽が冬の寒さで
失われると新しい芽をつくる必要が生じる。
翌年もその悪影響に苦しむことになる。

■性格の問題

ヒュンメルと隣町アールタールを結ぶ
道路のわきに、
三本のナラが立っている。
100歳を超える木が並んでいるので
地元では有名な存在だ。

どの木にとっても環境は同じで
差があるとも思えない。それなのに
どの木も自分なりの成長を遂げている。
その理由は“個性”にあるとしか考えられない

10月にもなると強風が吹く日が増えるので
葉が多いと木がなぎ倒されるリスクが高い。
葉を落としてさっさと冬眠する
心配性の木のほうが
将来も生き続ける見込みは高いだろう。

木の個性によって行動に差が出ることは、
実際に森に入ってみれば分かる。

■病気の木

ブナかナラの場合、
樹齢は400年から500年だと考えられている
ただ、それは統計の話で
全てに当てはまるわけではない。
人間と同じで、
誰もが天寿を全うするとは限らないのだ。

樹木の健康は、森林の生態系が
安定しているかどうかで決まる。

生きている木は年輪を作る。
樹皮と木質の間にある形成層は
内側に木質物質、外側に樹皮細胞を作る。
見た目は健康そうな数本のマツが、
30年以上年輪を作っていないことが分かった
形成層が死んでいるなら
樹皮も死んでいることになる。
周りの木々が仲間を助けていたに違いない。

■光

森林にとって日光はとても大切だ。
しかし、庭や花壇を手入れする時、
私たちは水分や養分のことばかり考える。
光は何もしなくても太陽が届けてくれるので
ほとんど意識しないのだ。
森林でも光が何よりも大切だということを
見落としてしまう。

専門書のなかには、
アイビーは樹木に悪影響を与えない
と書かれてあるが、そうは思わない。
たくさんの光を必要とするマツは
幹に巻き付くアイビーを
快く思っていないはずだ。

ヤドリギは自分がとまる枝の内側に
根を伸ばし必要なものを奪う。
半寄生植物と呼ぶこともある。

■ストリートチルドレン

ヨーロッパではセコイアの木は
あまり高く育たない。
街中の公園などに植えられたものが大半で
親戚から遠く離れて孤立している。

セコイアの樹齢は数千年と言われている。
ヨーロッパの150歳はまだ子どもだ。
お乳をくれたり、
誤った方向に成長したら注意してくれる
母親はいない。
あるのは孤独だけだ。

それに加えて、ほとんどの公園では
土壌が樹木の生長にまったく適していない。
公園や並木道の木は
見た目をキレイにするためだけに
手入れ(実際には暴力)が行われている。
森では樹木をサポートしてくれる協力者も
街にはいない。

ストリートチルドレンたちは
仲間とどんな会話をしているのか

ご覧下さりありがとうございます🍀




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