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天秤秤Age.50:半世紀
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半世紀 /藤田美香
肉まんを両手で包んだあたたかさ程度の冬のそれは私よ
雨以外を避けられなくて傘の下のひとは泣いているさっきからずっと
あなたにも私にも正義がありましてチンドンチンドン王道を往く
満月が怖いと最近思うのでオオカミ男になる日も近い
アパートにぽんと灯りが点る瞬間知らない部屋の知らない人の
職場から見える景色は変わらない変わらぬものなどないのだとしても
無造作に包んだコスモスの束が二百円也 すぐ枯れるから
中島みゆき拓郎陽水かぐや姫 爪は随分伸ばしてません
鏡の中のババアが不敵に笑いおり 五十年をすべて武器とす
座右の銘はあたまに花を咲かすこといつでもここは春だからおいで
(2021年第8回福岡女学院短歌コンクール佳作)
………………
ブラウン管の向こう側はもう無くてブルーハーツの青空を聴く
眠りから覚めたくない春だってある粘土を詰めた電池ボックス
子にとってそれはカチンコかもしれずファーストピアスが貫通する音
(NHKさらさらサラダ/荻原裕幸さん選 テーマ「耳」)
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半世紀を生きたとて何を成し遂げたわけでもなく、
これといった賞罰もなく、多感なあの頃にみた人生とはまったく違うものではあります。が、
私でなければ歩いて来れなかった道だな、と、思っています。
言うても、余生はできればもう何事もなく穏やかにぼんやり笑って過ごしたい。
わざわざお読みいただき本当にありがとうございます。
あなたがそこにいてくれることにいつもとても感謝しています。
私は、私の歌を。
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