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チョコが走っていた。 ビル3Fにあるこの喫茶店からは、駅舎と駅前ロータリーのぐるりを…
「リモートワーク中、絶対に部屋を覗いてはなりません」 毎朝必ず、夫はわたしにそう告げて…
買い物ついでに立ち寄ったワタシショップには、新型のワタシが並んでいた。 今よりも女ら…
駅近くの雑居ビルにある水風呂のないサウナに、そいつは入り浸っていた。 否、正確には入…
春が去り、春が巡ってくる。 その街の季節は、文字通り春だけしかない。初春から始まって…
『Z教授の総回診です』 院内にアナウンスが流れると、にわかに病棟がざわつき始める。そし…
ついにワクチンが僕のところにやってきた。 ただ想像していた姿とはだいぶ違っていて、玄関を開けた僕の目に飛び込んできたワクチンは、大柄で筋骨隆々の屈強そうな男だった。 「オレ、ワクツィン」 片言でぶっきらぼうに自己紹介をすると、ずかずかと僕の家に上がり込んでしまう。 土足で居間に踏み入ったワクチンは、僕に許可を得るでもなくどかりとソファーに腰を下ろした。両足を投げ出し、両腕を背もたれに回して、軽く貧乏ゆすりをしながら室内をあちこち窺っている。 青い瞳、発達して尻の
さくらさんは桜ではない。そよ風だ。 彼女が歩むごと、桜の花びらがひらりひらりと舞って…
我々は危機に瀕していた。すでに航路からは大きく外れ、宇宙のどこを彷徨っているのかもわか…
俺たちがごちゃごちゃと押し合いへし合いしている所に、Lの野郎がやってきて言った。 「君…
『カン!』と甲高いゴングの音が鳴った。メッセージアプリの着信音だ。 卓袱台の上に置いて…
俺の手首にはバームクーヘンが巻き付けられている。もちろん手首だけじゃない、首にも足首に…
「こんなんで、本当に大丈夫なんですかね?」 ネズミ色の全身タイツを着た男が、コンクリ床…
ある男が、まだ開墾途中にある原っぱで切株に腰掛けてあれこれと思索にふけっているときだった。 なにやらにわかに騒がしくなった方へと目をやると、30、40人はくだらないであろう群衆がゾロゾロと男のもとへと向かって来ていた。その中心では女が一人、何人かの男に無理矢理に引きずられている。 やがて女は、思索にふけっていた男の前に突き出された。 男が群衆に何事かと訊ねると、女を引きずってきた市民の一人が鼻息を荒くしながら答える。 「先生。この女、姦通していたんです。現場を押さえ