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私は、象で通勤している。 象っぽい何かではない。「鉄の馬」みたいな比喩でもない。象だ…
チョコが走っていた。 ビル3Fにあるこの喫茶店からは、駅舎と駅前ロータリーのぐるりを…
春が去り、春が巡ってくる。 その街の季節は、文字通り春だけしかない。初春から始まって…
我々は危機に瀕していた。すでに航路からは大きく外れ、宇宙のどこを彷徨っているのかもわか…
『カン!』と甲高いゴングの音が鳴った。メッセージアプリの着信音だ。 卓袱台の上に置いて…
俺の手首にはバームクーヘンが巻き付けられている。もちろん手首だけじゃない、首にも足首に…
「こんなんで、本当に大丈夫なんですかね?」 ネズミ色の全身タイツを着た男が、コンクリ床にうずくまったまま訊ねてきた。 須賀は同じ姿勢、同じタイツで、地面についた両膝の隙間から、丸まった男の首筋に向けて答えてやった。 「相手次第じゃないっすかね」 そのあと男が何か返事をしたような気もしたが、ちょうどエントランスの自動扉を客が開けたものだから、店内から電子音やアニメソングらしき曲がガチャガチャと漏れてきてうまく聞き取れなかった。 何を言ったのか少しは気になったけれど、若い
ある男が、まだ開墾途中にある原っぱで切株に腰掛けてあれこれと思索にふけっているときだっ…