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トランプ大統領、国家エネルギー非常事態宣言!株式への影響について

2025年1月20日にブルームバーグでトランプ大統領が国家エネルギー非常事態を宣言し新たな権限を行使する準備ができていることを発表しました。

それでは国家エネルギー非常事態を宣言した内容について解説していきます。

1.概要

ドナルド・トランプ次期大統領は、就任後直ちに国家非常事態権限を発動し、ジョー・バイデン大統領時代の気候変動対策を覆し、国内のエネルギー生産を解放する計画を進めるとみられる。

この計画は、連邦政府所有地での新たな石油・ガス開発の推進や、バイデン政権時代に制定された規制の撤廃を含む。以下に主なポイントをまとめる。

1-1.トランプ次期大統領のエネルギー政策の目的

国内のエネルギー生産を拡大し、エネルギー自給自足を強化することです。そのために、石油や天然ガス、石炭といった化石燃料の開発を促進を考えています。

バイデン政権時代の気候変動規制を撤回し政策を大幅に転換し、人工知能(AI)の普及によるエネルギー需要の増加に対応するため、国家非常事態権限を活用し、新たなエネルギーインフラ整備を推進する計画です。

1-2.非常事態宣言の影響と計画

非常事態権限を利用して、原油輸送や電力発電・送電の変更を指示する可能性があります。トランプ氏は、AI工場の建設とエネルギー需要増加への対応を主張している。

緊急事態宣言により、大統領は最大150の特別権限を行使可能となるが、発電所増設の実現性は不透明です。

◆そもそも非常事態宣言とは・・・
非常事態宣言は、自然災害(ハリケーン、地震、洪水など)、国家安全保障上の脅威(テロ攻撃など)、公衆衛生の危機(パンデミックなど)などに対応するための手段です。
これにより、大統領は通常の法律では行使できない特別な権限を一時的に行使することが可能になります。

大統領自身の権限に基づいて非常事態宣言を発動できますが、議会や司法の監視がありますので、簡単に行使できるものではありません。

1-3.就任後の具体的措置

トランプ大統領が就任後に予定されているエネルギー関係の具体的な措置は下記のようになります。

  • 石油・ガス開発の推進:連邦政府所有地での新たな石油・ガス開発を許可し、バイデン政権時代の気候変動対策に基づく規制を撤回する方針を示しています。これにより、化石燃料の採掘と生産の拡大を目指します。

  • バイデン政権の気候変動規制の撤回:バイデン政権の気候変動対策を覆す方針を打ち出しており、特に厳格な環境規制を緩和または撤回する措置を取ると予想されています。これには石炭火力発電所や天然ガスの利用拡大を含みます。

  • 電気自動車(EV)に対する優遇措置や厳しい燃費規制を撤回:バイデン政権が導入した厳しい電気自動車規制(EV義務化)を撤回する計画を立てており、自動車の燃費基準や排出ガス規制を緩和することが予想されています。

  • 液化天然ガス(LNG)輸出ライセンス再開:液化天然ガス(LNG)の輸出に関する新規ライセンスの一時停止を解除し、米国のエネルギー輸出を強化する意向を示しています。

  • 石油・天然ガスリースの撤回命令:バイデン政権が進めた、米国領海での石油・天然ガスリースを撤回する決定を逆転させ、エネルギー開発を再開させる可能性があります。

  • EUに米国エネルギーのさらなる購入を再度要求:トランプ大統領は、欧州連合(EU)が関税を回避したいのであれば米国産の石油とガスをもっと購入すべきだと再度要求しました。

  • 米国の戦略石油備蓄を最大に:トランプ大統領は、バイデン大統領時代の1980年代以来の最低水準に達した米国の戦略石油備蓄を「最上限まで」補充する計画です。石油価格を下げ、戦略的備蓄を再び満タンにし、アメリカのエネルギーを世界中に輸出すると発言しています。

  • パリ協定からの離脱:パリ協定からの米国の離脱を開始しました。

これらの措置は、トランプ氏が掲げるエネルギー生産の拡大と経済成長を目指す政策の一環として、国内のエネルギー業界に大きな影響を与えることが予想されます。

1-4.非常事態宣言ができるのか?

エネルギー非常事態宣言ができるかどうかは難しいところです。非常事態宣言は、議会や司法の監視がありますので簡単には発動することはできません。

トランプ氏の政策転換は連邦裁判所での法的挑戦に直面する可能性があります。過去にオバマ政権時代の北極海採掘禁止を撤回しようとした試みは裁判所で却下された例があります。

1-5.環境政策との対立

バイデン政権は国防生産法を利用し、再生可能エネルギー技術の製造促進を進めていたが、トランプ氏の政策は化石燃料の利用促進に逆行しています。

トランプ氏は、バイデン政権が推進した気候変動対策や再生可能エネルギー政策を撤回し、エネルギー規制を緩和することで、国内産業の成長と雇用創出を目指しています。

環境保護論者からは気候緊急事態の宣言を求める圧力が続いています。

1-6.まとめ

トランプ氏の政策は、バイデン政権の環境重視の方向性を大きく覆し、化石燃料産業に重点を置く形でアメリカのエネルギー政策を再編する大規模な試みといえる。この動きは、環境保護団体や州政府、連邦裁判所との衝突を引き起こす可能性がある。

2.米国株式の影響

ドナルド・トランプ次期大統領が非常事態権限を発動して国内のエネルギー生産を解放する計画を進めた場合、米国株式市場には次のような影響が考えられます。

2-1. 短期的影響

短期的にはエネルギーセクター株の上昇が考えられます。

  • 原油・ガス開発企業: トランプ氏の政策が新たな開発機会を提供することで、石油・ガス開発企業や採掘関連企業の株価が上昇する可能性が高いです。(例:エクソンモービル、シェブロン)

  • エネルギーインフラ関連: パイプラインや送電網建設企業にも恩恵が及ぶことになるでしょう。(例:エンブリッジ
    、キンダー・モルガン)

  • 石炭関連株: 石炭火力発電所の存続が許される可能性があるため、一部の石炭関連企業も短期的な利益を受ける可能性があります。

  • 電気自動車(EV)関連株への圧力:EV関連企業(Rivianなど)には逆風となり、株価が下落する可能性がある。特に、EV購入補助金や燃費規制が緩和されると、競争環境が変化するため、ネガティブな影響を受けやすい。

新たな政策転換や非常事態宣言は政治的リスクを増大させ、市場全体のボラティリティ(VIX指数)が一時的に上昇する可能性がある。EV関連企業でも、テスラはイーロン・マスク氏とトランプ大統領とのつながりがありますので、読みづらいところがあります。

2-2.中長期的影響

先ほどは短期的な影響で見ましたのでもう少し視野を広げて中長期的に見ていきたいと思います。

エネルギー価格の変動
・原油価格の低下リスク
: エネルギー生産量の増加により、原油価格が下落する可能性がある。ただし、輸出の増加が価格を支える可能性もあるため、需給バランスが重要となる。
・再生可能エネルギー分野への投資減少: 石油・ガス産業へのシフトが進むと、再生可能エネルギー分野(太陽光、風力など)の成長が鈍化し、関連企業の株価に圧力がかかる。

規制リスクの高まり
新政策が裁判所で法的挑戦を受ける可能性があるため、エネルギーセクター全体で不透明感が高まる。政策が短期的に進展しても、長期的には規制変更や政権交代のリスクに直面する。

セクターローテーションの可能性
・資源・エネルギー株優位
: 石油・ガス関連株が市場全体のパフォーマンスを牽引する可能性があります。。
・グリーン株の圧力: 環境関連企業(NextEra Energy、Sunrunなど)は成長期待が低下する可能性があるが、逆にバイデン政策を支持する投資家の長期的な買い支えも考えられる。

2-3.経済の影響

米国株式市場だけではなく経済にはどのような影響を与えるかを下記にまとめます。

  • 経済成長への寄与:エネルギー生産拡大が雇用増加や設備投資を促進し、短期的に米国経済全体の成長を支える可能性がある。インフラ開発の需要増加により、建設・設備関連株も恩恵を受ける。

  • インフレへの影響:エネルギー供給の増加はガソリン価格の低下を通じて消費者支出を刺激する可能性があるが、インフレ率を抑制する要因ともなり得る。

  • ドル高のリスクエネルギー輸出増加により、米ドルが上昇する可能性があり、米国多国籍企業の競争力に影響を及ぼす。


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