大統領選挙が米国株式市場に与える影響

アメリカでの大統領選挙が近づいてまいりました。実際に大統領選挙が株式市場などにどんな影響ができいるのか、今後どんな影響が出る可能性があるのかを記していきます。



大統領選挙の株式市場への影響

選挙の結果は経済政策の方向性を決定し、それによって市場の期待や不安を引き起こします。

選挙の年やその直後に株式市場が大きく動くことが多いのは、投資家が政権交代や政策変更の影響を見越して売買を行うためです。

-- 政策の違いと株式市場への影響--

共和党と民主党の政策には大きな違いがあり、それが特定の業界やセクターに異なる影響を与えます。

共和党政権の影響:共和党は通常、規制緩和、法人税の引き下げ、自由市場経済を重視する政策を推進します。
エネルギー、金融、製造業、そして防衛産業が恩恵を受けやすいです。企業の利益が増加することを期待して、株式市場全体が上昇しやすくなります。

  • 例えば、トランプ政権下では法人税が引き下げられ、企業収益が増加し、株式市場は力強い成長を見せました。

民主党政権の影響:規制の厳しい政策、気候変動対策、社会福祉の拡充を重視します。
クリーンエネルギー、ヘルスケア、教育、テクノロジーなどが民主党政権下では恩恵を受けやすい業界です。
法人税引き上げや富裕層への課税強化が検討されることがあり、特に利益率の高い大企業や株主が懸念する要因となり得ます。

  • 例えば、バイデン政権ではクリーンエネルギーやインフラ投資が重視され、テスラや再生可能エネルギー関連株が支持を得ました。

--株価の短期的ボラティリティ--

大統領選挙の年やその前後の時期は、株式市場が不安定になる傾向があります。この理由は、投資家が次期政権の政策が市場に与える影響を不確実に感じるためです。

選挙直前の不安定さ: 大統領選挙が近づくと、投資家は不透明な状況を避けるため、リスク回避することが多いです。選挙前は株価は上がったり下がったりするボラティリティが高まります。

選挙結果による株価の急変動: 選挙結果が明らかになると、政権の政策方向性を反映して素早く売買を行い、市場が急騰または急落することがあります。特に選挙結果が事前予想と異なる場合、市場の反応は大きくなる傾向があります。

  • 2016年の選挙でトランプ氏が予想外の勝利を収めた際、市場は短期的には混乱しましたが、彼のビジネス寄りの政策期待から株価はその後急騰しました。

--特定のセクターへの影響--

大統領選挙の結果により、特定のセクターが恩恵を受けたり、逆風を受けたりすることがあります。

●エネルギーセクター
民主党:気候変動対策に重点を置くため、クリーンエネルギー関連株(太陽光、風力など)が恩恵を受けやすいです。
共和党:化石燃料産業を支援することが多いため、石油やガス関連株が上 昇しやすいです。

●ヘルスケアセクター
民主党:医療保険改革を推進するため、ヘルスケアセクターにとっては規制強化のリスクがあります。
共和党:自由市場を重視するため、医薬品や保険会社の株価が上昇しやすいです。

●テクノロジーセクター
民主党:テクノロジーやイノベーション分野に対して支援を強化する傾向がありますが、ビッグテックに対する規制強化のリスクもあります。
共和党:規制緩和によってテクノロジー企業が恩恵を受けやすいです。


大統領選挙のFRBへの影響

FRB(連邦準備制度)はアメリカの中央銀行として、インフレや失業率を調整するための金利政策を運営しています。FRBは大統領の直接的な管理下にはありませんが、政権や議会が採用する経済政策がFRBの金融政策に影響を与えることがあります。

--FRBの金利政策--

大統領選挙の結果によって財政政策が変わると、FRBの金利政策にも影響が及ぶことが考えられます。

例えば、大規模な財政刺激策(インフラ投資や社会保障拡充など)が実施されれば、景気が加熱し、FRBはインフレを抑制するために金利を引き上げる可能性があります。一方、財政支出が抑制される政権では、経済が弱まるリスクが高まり、FRBは金利を据え置くか、引き下げる可能性があります。

--FRBの独立性と大統領の影響--

FRBは理論的には独立した機関ですが、議会や大統領からの圧力を受けることがあります。

特に、選挙後に選ばれた大統領がFRB議長や理事の任命権を持っているため、その人事が政策に影響を与える可能性があります。

・共和党の大統領:市場の自由な動きや低税率を優先する人物を指名しがちです。
・民主党の大統領:金融規制や社会的支援プログラムを強化する立場の候補者を選ぶ傾向があります。


大統領選挙と金(ゴールド)の関係

選挙結果やその前後の経済政策が、金市場の需給バランスや投資家のリスク回避の動きに影響を与えるためです。

--不確実性とリスク回避--

大統領選挙に伴う政治的・経済的不確実性が高まると、投資家はリスク資産を手放し、安全資産である金に逃避する傾向があります。特に、選挙結果が予測できない場合や、政権交代による政策の方向性に懸念がある場合は、金への投資が増加し、価格が上昇しやすくなります。

  • 例えば、2016年の大統領選挙でトランプ氏が当選した際、選挙結果が予測と異なったため、初期の不安から金価格が一時的に急騰しました。

--ドルの価値と金価格の逆相関--

金はドルと逆相関の関係にあり、ドルが弱くなると金価格が上昇し、ドルが強くなると金価格は下落します。
大統領選挙後の経済政策がドルに与える影響は、金価格にも直接反映されます。

  • 共和党が政権を取ると、ドルの強化を目指す経済政策が取られることが多く、金価格は下落しやすくなります。

  • 民主党の政策が経済への刺激策や支出拡大につながる場合、インフレ懸念が高まり、金の需要が増加し、価格が上昇することがあります。

--インフレ懸念と金価格--

金は伝統的にインフレヘッジとして機能します。

大統領選挙後の新政権がインフレを引き起こすような政策(例えば、政府支出の拡大、財政赤字の増加)を進める場合、インフレ懸念から金の需要が高まり、価格が上昇する可能性があります。

  • 例えば、バイデン政権が掲げた大規模なインフラ投資や経済刺激策は、インフレの懸念を引き起こし、それに伴い金価格が上昇する要因となりました。

--地政学リスクと金価格--

選挙結果が国内外の地政学的リスクに影響を与える場合、これも金価格に波及します。

大統領が外交政策や貿易政策を強硬にする場合、国際的な緊張が高まり、金価格が上昇する可能性があります。

  • 例えば、トランプ政権下で米中貿易戦争が激化した際、地政学的な不安が高まり、金価格が上昇しました。

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