絵画の前に立ち止まる人は何を考えているのか?
私は美術館でゆっくりと過ごすことが大好きだ。
企画展で有名画家の作品を一挙に見ることも楽しい。
常設展を繰り返し見に行くことも心を充実させてくれる。
では、私はなぜ美術館へ引き込まれていくのか?
改めて整理したらもっと美術館にハマるのではないかと思い、言語化に挑戦してみる。
1.何が心を充実させてくれるのか?
結論から書くと、①観察力、②共感力、③自己理解力、④他者理解力を鍛えられる感覚、もしくは刺激される感覚が好きだ。
詳細について順番に書いていきたい。
2.鑑賞の手順
私が美術品を見るときのイメージを共有したい。
この体験を通じて充実感を深めていく。
大事にしていることは「作品に答えはない」と割り切ることだ。
もちろん作者の意図は存在するが、美術作品には自由に解釈できる懐の深さもある。
できれば事前知識なしで、タイトルも確認せずに一度鑑賞したい。
そのうえで、感じたこと、考えたことを言語化していく。
内容は「何となく~」のレベルから始まり、作品の観察・対話をしながら深めていく。
3.観察力を使う
作品との対話のベースとなるのは、作品を観察する力である。
(1)登場人物・物(What)を観る
無意識だと見たいものしか目に入ってこない。
それは目立つものだったり、自分にとって都合が良いものだったりする。
脳への負荷を減らすために本能的に見るものを選択しているので、自然なことだ。
そこで、観察方法にはひと工夫している。
・「輪郭」と「登場人物の目線」を目でなぞる
・ブロックに分割して見る
ローラー作戦の一種である。
その中で、作品の主人公だけでなく、周辺に描かれるものを逃さないようにする。
思いがけない被写体を見つけた時は、面白いだけでなく、作品の魅力を深めてくれる。
(2)状況(Where、When)を見る
作品の背景にも注目していく。
①Where
・屋外か、屋内か?
・どの国か?
②When
・時代はいつか?
・時間は何時か?
4.共感力を使う
続いては、人物画限定となるが、作品の登場人物の心情に入り込んでいく。
状況、表情の観察から、心情を推定していくのだ。
感情への共感力を使うにあたって、絵画作品には良いところがある。
1.相手の感情は変化しない
2.相手の感情を自由に推察して良い(間違っていてもお互いに傷つかない)
3.感情移入のし過ぎて共感疲労を起こさない(時代・場所が離れているので一歩引いて考えられる)
5.他者理解を深める
ここでは作者の意図を理解しようと努める。
その中で他者の面白い視点を獲得していく。
意図を考えるヒントとして、美術史と観点のフレームワークを使っている。
(1)美術史
絵画作品は、描かれた時代の顧客に評価され、売買することが1つの目的である。
売買するためにはその時代を反映した作者の意図が存在する。
キリスト教の布教を目的として、教会が神話の世界を描かせた作品もある。
王様が自分の権力を誇示するために描かせた作品もある。
カメラ登場後は、現実世界の模写から脱する新しい表現(絵画だからできる表現)を試行錯誤し、顧客もお金持ちの市民が中心となった。
「どんな顧客向けに描かれた絵画か」と考えると、作者の意図に近づいていける。
(2)観点のフレームワーク
印象派以降、特に20世紀の現代アート以降は、時代背景だけでは解読が困難になっていく。
「何を描くか」から「どう描くか」に移行し、表現も型にはまらなくなるからだ。
特に、現代アートは鑑賞者に疑問を投げかけ、作品との対話の中で作品が完成されるイメージだ。
感情だけでなく、思考を深めないと、よく分からないものとなってしまう。
そこで、何を表現したいのかを下の観点のフレームワークを使って確認していく。
答えはないので、フレームワークで考えを絞りつつも、その中で自由に意図を考えていく。
6.自己理解を深める
最後は、これまで書いた内容を自分に引き寄せ、言語化して、自己理解を深めていく。
1.作品の第一印象はどうか?
2.観察するなかでの発見は何か?
3.自分の感情は何に動かされたか?
4.それは経験からくる喜怒哀楽か? 本能的な快・不快か?
※本能の例:美しい人物に魅了される、食べ物に食欲が湧く、丸っこいものに安全を感じるなど
4.登場人物にどんな表情に共感できるか?自分にも似た経験はないか?
5.作者の意図から自分には無い視点を獲得できたか?
6.獲得した視点は実生活に活かせそうか?
6.まとめ
以上が、私が美術作品、特に絵画作品に向き合って考えていることである。
美術作品は誰が見ても楽しめる懐の深さが魅力だ。
楽しみ方に正解はないが、このnoteが美術作品鑑賞のヒントになれば幸いだ。
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