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愛のこもったあだ名なら、そういうあだ名もありかなと思った。

息子とクラスの
ある男の子の
あだ名について
話していた時のことです。

「でもさぁ、
 それって少し酷くない?」

私がそう言うと、

「そんなこと言ったら、
 俺なんか、
 『おじいちゃん』って
 呼ばれてるんだよ。
 酷い時は、
 『じじい』だからね。
 そっちの方が、
 よっぽど酷くない?」

そう言いながらも
息子は何だか嬉しそうです。

「おじいちゃん?
 もしかして、
 外ばっかり見てるから?」

「そうだよ」

プフッ

私は、思わず
吹き出してしまいました。


それは、
1学期の三者面談でのこと。

「2学期に頑張りたいことは
 何ですか?」

先生の質問に対して
息子はこう答えました。

「外を見ないことです」

私には
その答えの意味が
すぐに分かりました。

先生は不思議そうに
言いました。

「それはどういう意味ですか?」

「授業中に、
 景色の誘惑に負けて
 ついつい外を見てしまうので」

息子は笑いながら
そう言いました。

「あぁ確かに、いつも
 外を見ているなぁと
 思っていました。
 酷い時は、
 倚子ごと窓の方に向けてね」

なぁんだ。
先生も気付いていたんだ…。

三者面談の
2ヶ月程前
だったでしょうか。

学校から帰って来た息子が
興奮気味に
こう話してくれたことが
ありました。

「お母さん、
 2階の○○教室からの景色が
 最高だったんだよ!
 授業どころじゃなかったよ!」

それはちょうど
新緑の季節を迎えた頃の
ことでした。

私は
そんな息子が
愛しくてたまりませんでした。

そして、
息子が感動したその景色を
ぜひ見てみたいと
思いました。

○○教室からの
景色は無理にしても
三者面談の時に、
同じ2階の
息子の教室からなら
見ることが出来る…

私は
その日を
楽しみにしていました。

待ちに待った三者面談。
息子の番になり
教室に入ると…
窓の外には
美しい景色が
広がっていました。

思わず私は言いました。
「いい景色ですね…」

「外の景色の誘惑に負けて
ついつい外を見てしまう」

息子の気持ちが
よく分かりました。

先生も
「程々にね」と
笑って許してくれました。

その後
学校を訪れた際
教室の後ろの壁に
2学期の個人目標が
掲示されているのを
見つけました。

学習、生活、部活などの
それぞれの項目にそって
目標が書かれていました。

息子の学習の目標は
『外を見ない』でした。

思わず
吹き出してしまいました。

ついこの間も

「やばいよ!
 席替えで、
 また窓際の席になった!」

と嬉しそうに
報告してくれました。


相変わらず息子は
毎日教室の窓から
外を眺めているのでしょう。 

庭を眺める
おじいちゃんのように。

息子が
外の景色を
眺めていることは
クラスでは
かなり有名な話のようで、
女の子からは『おじいちゃん』
男の子からは、
名前か『おじいちゃん』『じじい』
と呼ばれているようです。

景色を見るのが好き。
自然が好き。
年寄り臭いとからかわれても
それが俺の好きなこと。
そう胸を張って言える息子は
ステキだなと思います。

みんなも
きっと愛を込めて
呼んでいるのでしょう。

『おじいちゃん』
『じじい』

と。

そう思ったら
『おじいちゃん』も
『じじい』も
愛しいあだ名に
思えてきました。

大人になって再会した時も
やっぱり
『おじいちゃん』
『じじい』
って呼ばれるのかな。

そんなことを
考えていたら
何だか…
何だかとっても
胸がいっぱいになりました。

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