音楽と若者支援 個別相談では生み出せない空間としてのフェス
ひとりの声を、みんなのものに
個別相談ブースでは、毎日、たくさんの相談が寄せられ、対応する相談員も一生懸命です。話を聴き、状況を整理し、目標と到達までの道筋を作る。そんなコミュニケーションが、全国ここかしこで行われています。
相談できる環境と、相談を受けることができる相談員の配置は重要で、公共施設では相談窓口の設置から入ります。ただ、基本的に個別相談機能だけだとできない・やりづらいこともたくさんあります。
ワークショップやセミナーイベントなどは、施設に会場があればできますが、特定の目的のために集まったひとたちと仲間となり、話し合いや練習を重ねていく、学校のような機能は社会にはなかなかありません。
若者支援の領域では、そのような機会を大切にしてきた歴史文化があります。支援団体にもよりますが、誰かひとりの声を、みんなのものとして、「じゃあ、やってみようか」ということから生まれる活動はとても重要ですし、ノリでやっちゃおうかということもあります。
音楽、バンド、そしてフェス
僕自身は、楽器とは無縁で生きてきました。育て上げネットの「ジョブトレ」の利用者で、ギターを教えてくれる若者がいたので、一時、練習をしてみました。しかし、うまく指を動かせず、早々に挫折しました・・・
若者たちのなかには、過去から現在まで、音楽が好きで、楽器とともに生きてきたひともいます。軽音部に入っていたとか、好きだから家で奏でていたとか、パターンはさまざまですが、います。
ジョブトレの空間には、楽器が置いてあって、誰かがさらっと使うと、実は自分もとか、ちょっと興味があってと、ときどき、輪ができることがあります。楽器が演奏できる職員もたくさんいます(凄
若者たちが夜間帯に集える居場所「夜のユースセンター」の利用者も、ジョブトレの利用者と同じく、楽器を奏でています。隣でふと歌い始める若者が出たり、楽しそうです。
ジョブトレには「マスターズ」という名称で、バンド活動をする任意チームがあります。楽器が弾ける職員と若者たちによるチームです。頻度はまちまちですが、ジョブトレの利用者や卒業生で、タイミングが合うときに事務所で練習しています。
夏くらいだったと思いますが、職員からライブハウスを貸し切ってフェスやりたいという話が出ました。理由は、ライブやりたい若者がいるからと。何のためにとか、支援としての効果性が、という話を聴いた記憶はありません(僕がいないところではしていたかもしれません)。
ただ、やりたい若者がおり、費用を含めて実現可能で、ちゃんと会場が取れるならやろうということとなり、2024年12月14日(土)にやることが決まりました。
たったひとりの若者のやりたいを実現する際、一番難しいのは、それは個人単位でやるものではなく、同じく「やりたい」と思うひとたちがおり、実際に「やる」という声があがることです。
さくっとあがりました。
そして、当日はジョブトレや夜のユースセンターの利用者だけでなく、いくつかの施設からもバンドの参加がありました。
会場には総勢100名ほどが参加しました。過去にライブに出たことがある若者(や職員)もいれば、いつかはやってみたい。これを機会に出てみたくなったという若者もいたでしょう。職員にもいたのかもしれません。
みんなめちゃくちゃかっこいいですね。そもそも、こんなに大勢の前で楽器を演奏し、歌声を披露し、大きな拍手喝さいを受けること、なかなかないです。それを、ひとりの声から生み出せたのは、脈々と続く若者支援NPOの文化風土、歴史や「ノリ」みたいなものなのでしょう。
ただし、なんでも実現できるわけではなく、若者たちの直面している日常で、みんなでお金を出し合ってやるようなことができません。費用負担した若者だけでやるには、やりたくてもやれない若者が出てしまいます。
もちろん、やりたいのだから、そのための費用は自分で出すのが当たり前という声もあるかもしれませんが、それらは働き始めてから考えればいいことですし、いま目の前にいるのは、これから働いていこうとしているけれど、働きづらさや生きづらさを持っている若者たちです。
自己肯定感や自己効力感という言葉が使われますが、何かにチャレンジしてみたり、やり切った経験が、ここから仕事に向かう原動力になることもあります。
ひとりで触っていた楽器を本格的に。これまで深くは知らなかった仲間とともにバンドを結成。そしてフェスで強い光と、大勢の観客の前で練習の成果を披露する。ものすごいことです。
こういう機会は、ここかしこにあふれているわけではありません。また、知らないコミュニティに飛び込んでやるには相当の勇気、それを支える経験が必要です。
でも、僕らはそれをやってみることができました。それはたくさんの若者を応援し、機会をくださる寄付者のみなさまのおかげです。また、当日、裏方を支えてくださったボランティアの方々には心から感謝いたします。
ひとりの声を、みんなのものにしていくことは、たくさんの方々の理解と応援によって支えられています。
いま、育て上げネットでは、ふるさと納税を活用したガバメントクラウドファンディングにチャレンジしています。
2024年12月31日までに、100名の寄付者を募ることとで、今回のような機会は、たくさんのひとたちに支えられてやれていることなので、思い切ってやってほしいと伝えたいと、僕は考えています。
ふるさと納税による寄付はこちらになります。
月1,000円から「夜のユースセンター」を支えてくれるマンスリーサポーターも募集しています。