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お弁当、2個食べたい。
今年も終わりが見えてきました。現場を振り返ってみると、働き始めることができたり、進学がかなったりと、若者や子どもたちの笑顔とともに、この一年もありました。
その一方で、生活がままらならず、心身を保つのが精いっぱいの若者たちともたくさん出会いました。
特に顕著だったのが「食べる」ということです。スーパーの食材の価格があがり、給食のない時期の子どもたちや、もともと家庭で十分なご飯が用意されない(できない)若者たちの「お腹すいた」の言葉が多く聞こえました。
ポテトチップやチョコレートなどをつまんでいても、それがお腹を満たすためのお昼ご飯や夜ご飯の代替であり、生きるための栄養を摂るための切実な行動です。
20年前の若者支援は、まだ家庭に余力が残っており、生活基盤はあるものの、働くことや働き続けることの壁の前で立ちすくんでいる若者に対応することが多かったと認識しています。
しかし、2020年代以降、急激に家庭の基盤が崩れ、もともと生活支援から行っていた若者の層が分厚くなってしまいました。働いて自分の生活を安定させたいと願いつつも、それ以前に今日、明日の食事を気にしなければならず、結果として中長期の視点を持ってかかわることが難しい若者たちです。
認定NPO法人育て上げネットでは、段ボールに食料を詰めて送ること。食材を準備して持って帰れるようにすること。ご飯を食べられるようにすることなど、「今日のご飯」「お腹を満たす」活動が一気に大きくなりました。
経済的な余力のない若者や子どもたちですから、費用負担を求めることはほとんどできません。働き始め、収入を得られるようになると、自分のぶんや、もうひとりぶんにしてくださいといって、自分と誰かを支えられる若者もいます。しかし、そこに至る手前の若者たちと出会い、支えていくためには寄付に頼らせていただいています。
先日、活動が二か所にわかれたため、少し多めに準備したお弁当が余りました。すると、ある若者が「もう一個食べていいですか・・・」と話してきました。
一回に食べる分量はひとそれぞれですが、女性であっても、男性であっても、お腹を満たすためにもう少し、もっと食べたいことがあるのは当然です。しかも、給食がなかったり、自宅で食事が出て来なかったりする環境では、いま食べられるのであれば、(しばらく食べられなくても大丈夫なように)空腹を満たしておきたい。たまにはお腹いっぱいにしたいという気持ちになるのは当然です。
その若者は二つ目のお弁当を食べ終わると、ソファに横になって満足気でした。それを見て、自分も食べていいですかという若者たちがあとに続きました。
今夏、私たちは不安とともに、若者たちに美味しいお肉を腹いっぱい食べさせたいと、お肉BBQ開催のための寄付を募りました。「美味しいお肉」を食べられることは、私もそうですが、日常の行動ではありません。何かのお祝いや、しんどい局面を乗り切ったときのご褒美みたいなものです。
生活が苦しい、空腹を抱えている若者たちに対して、量や頻度を増やすのではなく、美味しいお肉を寄付者の方にも参加していただき、一緒に食べる機会は、受け入れられない可能性や、否定されることまで考えました。
しかし、若者たちの「美味しいお肉をお腹いっぱい食べてみたい」という声に、多くの方々が協力くださり、また、当日、大量のお肉が次々と若者たちのお腹に入り、「もう食べられない」からの、「おかわり」という風景は、参加してくださった方々や、育て上げネットの職員の気持ちを満たしてくれました。
空腹を満たし、安全な場で、安心して過ごせる空間は、それが家庭にない若者、そもそも家族がいない若者たちにとって、セーフティーネットの側面があります。また、私たち支援団体にとっては、若者たちと出会うためのアウトリーチと呼ばれる選択肢のひとつです。
しかし、それ以上に、現場で彼ら、彼女らを見ていると、お弁当をもう一個食べられることや、おかわりが普通にできること、たまには普段食べない美味しいものでお腹を満たせる機会は、自分たちを応援してくれる大人がおり、他者に頼ってもよいことや、今日が苦しかったとしても、明日は少しよいことがあるかもしれないと思って、翌日を迎えられる気持ちにつながると思います。
私はできるだけ毎回、若者たちが来てくれる場に顔を出し、いろいろな話を聴かせていただけるようにしています。ただ、私のフィルターを通してお伝えできるのは、私のフィルターがかかってしまったものであり、また、言語化された若者たちの一側面でしかなくなってしまいます。
この社会にはさまざまな若者がおり、それぞれが今日のうれしさ、明日の不安、将来やってみたいことや、未来への絶望を持って、「話を聴いてくれる」ひととの出会いを楽しいものと思ってくれています。
ぜひ、若い世代とのつながりや交流、たくさん食べる姿や、場の隅でひとりで過ごしている背中などを見て、一緒に遊び、「じゃあ、またいつかね!」と手を振りに、現場に来ていただきたいと思っています。
育て上げネットでは、夜に居場所がない若者や子どもたちのために「夜のユースセンター」を設置しています。
2024年12月31日までは、ふるさと納税で寄付ができます(返礼品はありません)。現在、47名の方々からご寄付をいただいており、若者たちに100名の応援してくれるひとたちがいることを伝えられる2025年を目指しています。
また、月額1,000円(お弁当2つ相当)から応援いただけるマンスリーサポーターも募っています。
先日から、PayPayでの寄付も1円以上からできるようになった発表がありました。こちらでもご寄付を受け付けています。