連分数の独自メモ ~のび太算を使った評価法~
連分数とは、
$${x_0+\dfrac{y_1}{x_1+\dfrac{y_2}{x_2+\dfrac{y_3}{x_3+\dfrac{y_4}{x_4+\dfrac{y_5}{x_5+\dfrac{y_6}{x_6+\cdots}}}}}}}$$
のような形の繁分数のことで、特に、下のように、$${y_1,y_2,…}$$等が全て$${1}$$で、$${x_0,x_1,x_2,…}$$等が全て正整数である場合、正則連分数と呼ばれる。
$${a_0+\dfrac{1}{a_1+\dfrac{1}{a_2+\dfrac{1}{a_3+\dfrac{1}{a_4+\dfrac{1}{a_5+\dfrac{1}{a_6+\cdots}}}}}}}$$
そして、この正則連分数は
$${[ a_0 ; a_1 , a_2 , a_3 , a_4 , a_5 , a_6 , …]}$$
のように表記される。
以下、正則連分数の性質や、気づいたことを箇条書きにする。
右下の “$${\cdots}$$” で表された部分や、$${\dfrac{1}{a_6+\cdots}}$$、$${\dfrac{1}{a_5+\dfrac{1}{a_6+\cdots}}}$$等は、$${0}$$以上$${1}$$以下の値を持つ。従って、
$${[ a_0 ; a_1 , a_2 , a_3 , … , a_k , …]}$$
という、深さが$${k+1}$$以上である連分数の値は、深さが$${k}$$である二つの連分数$${[ a_0 ; a_1 , a_2 , a_3 , … , a_k]}$$ と $${[ a_0 ; a_1 , a_2 , a_3 , … , 1+a_k]}$$ の間にある。
二つの正則連分数$${c=[ c_0 ; c_1 , c_2 , c_3 , … ]}$$ と $${d=[ d_0 ; d_1 , d_2 , d_3 , … ]}$$ があり、$${i=0,1,2,…,k-1}$$では、$${c_i =d_i}$$で $${c_k≠d_k}$$であった場合、$${c}$$と$${d}$$の大小は、$${k}$$が偶数であれば、$${c_k}$$と$${d_k}$$の大小と一致、$${k}$$が奇数であれば$${c_k}$$と$${d_k}$$の大小と逆になる。
分数は分子が大きくなれば、値は大きくなり、分母が大きくなれば、値は小さくなる性質を考えると、$${k}$$が奇数の時は、分母的性質、偶数の時は分子的性質が大きいと考えると良い。
二つの連分数 $${[ a_0 ; a_1 , a_2 , a_3 , … , a_n]}$$と$${[ 0;a_0, a_1 , a_2 , a_3 , … , a_n]}$$は、お互いに逆数の関係にある。
$${[ 0;a_0, a_1 , a_2 , a_3 , … , a_n]}$$は、$${[ a_0, a_1 , a_2 , a_3 , … , a_n]}$$とも記す。
非負整数$${a,c}$$と正整数$${b,d,k}$$を引数とする、あるいは、二つの既約分数$${a/b,c/d}$$と正整数$${k}$$を引数とする、有理数関数Nを次のように定める。
$${N(a;b,c;d,k)=N(\dfrac{a}{b},\dfrac{c}{d},k)=\dfrac{a+kc}{b+kd}}$$
$${a/b}$$と$${kc/kd}$$ののび太算、あるいは、a/bとc/dの(c/d側に)kの重みを持たせたのび太算の定義に当たるが、これを用いると次が成立。
$${p_{n}=[ a_1 , a_2 , a_3 , … ,a_{n-2},a_{n-1}, a_n]}$$とすると、$${n≧2 に対し、}$$
$${p_{n}=N(p_{n-2},p_{n-1},a_n)}$$ ただし、$${p_{0}=0/1}$$と見なす
つまり、連分数$${p=[ a_0 ; a_1 , a_2 , a_3 , … , a_k , …]}$$が与えられた時、($${a_0}$$は$${p}$$の整数部分、$${a_1}$$は、$${p}$$の小数部分の第一近似で、$${1/a_1}$$という値そのもの、)$${a_2,a_3,a_4,…,a_k,…}$$等の値は、のび太算を行う際の重みと解釈できる。
従って、無限正則連分数を一つづつ深く評価していく場合、各段階で誤差が、$${\dfrac{1}{1+a_k}}$$程度に減じていくと考えてよい。
ここで、$${[0;3,5,7,9]=[3,5,7,9]}$$と表される連分数の計算を考えてみる。
通常は下のように、右下部分から解決していくのだと思われる。
$${\dfrac{1}{3+\dfrac{1}{5+\dfrac{1}{7+\dfrac{1}{9}}}} =\dfrac{1}{3+\dfrac{1}{5+\dfrac{1}{\dfrac{64}{9}}}}=\dfrac{1}{3+\dfrac{1}{\dfrac{329}{64}}}=\dfrac{1}{\dfrac{329×3+64}{329}}=\dfrac{329}{1051}}$$
しかし、上述の様に重み付きのび太算の連続だと考えると次のようになる。
二つの分数$${\frac{0}{1},\frac{1}{3}}$$を数直線上に書くつもりで、ノートの両脇に書く。$${\frac{0}{1}}$$は、いわば第0次近似で、出発点として常にこの値が使われる。$${\frac{1}{3}}$$は連分数の最初の値(項)の逆数。これが、第1次近似。
$${\dfrac{0}{1} \dfrac{1}{3} }$$
この段階での最新の評価は、第一次近似の$${\frac{1}{3}}$$。次は第二項を用いて第二次近似を求める。これは、第0次近似=$${\frac{0}{1}}$$と、第一次近似$${\frac{1}{3}}$$の重み$${5}$$ののび太算。$${\frac{0+5×1}{1+5×3}=\frac{5}{16}}$$と計算できる。$${\frac{1}{3}}$$の下に、小さく分母分子を$${5}$$倍した$${\frac{5}{15}}$$を書き、これと左端の$${\frac{0}{1}}$$とののび太算の結果$${\frac{5}{16}}$$を、$${\frac{0}{1}}$$のすぐ右に書く。
$${\dfrac{0}{1} \dfrac{5}{16} \dfrac{1}{3} }$$
$${ \frac{5}{15} }$$
第二項まで処理し、この時点での最新の評価は$${\frac{5}{16}}$$。この段階で、今後正則連分数がどのように続こうとも、その値は区間$${[\frac{5}{16},\frac{1}{3})}$$内にある。
次は第三項の$${7}$$。$${\frac{5}{16}}$$の分母分子を$${7}$$倍した$${\frac{35}{112}}$$を下に書き、反対側の$${\frac{1}{3}}$$とののび太算の結果$${\frac{36}{115}}$$を$${\frac{1}{3}}$$の内側(=左隣)に書き加える。
$${\dfrac{0}{1} \dfrac{5}{16} \dfrac{36}{115} \dfrac{1}{3} }$$
$${ \frac{35}{112} \frac{5}{15} }$$
第三項まで処理し、この時点での最新の評価は$${\frac{36}{115}}$$。次は第四項$${9}$$。$${\frac{36}{115}}$$の分母分子を$${9}$$倍した$${\frac{324}{1035}}$$を下に小さく書き、これと、反対側の値$${\frac{5}{16}}$$とののび太算の結果$${\frac{329}{1051}}$$を$${\frac{5}{16}}$$の右隣に書く。
$${\dfrac{0}{1} \dfrac{5}{16} \dfrac{329}{1051} \dfrac{36}{115} \dfrac{1}{3} }$$
$${ \frac{35}{112} \frac{324}{1035} \frac{5}{15} }$$
これで無事$${\frac{329}{1051}}$$に至る。
この表記方法は、連分数の値が収まる範囲が
$${[\dfrac{0}{1},\dfrac{1}{3}] → [\dfrac{5}{16},\dfrac{1}{3}] → [\dfrac{5}{16},\dfrac{36}{115}] → [\dfrac{329}{1051},\dfrac{36}{115}] }$$
と変化していくことを意識した表記(計算)法。数列っぽく、
$${ \dfrac{0}{1}, \dfrac{1}{3}, \dfrac{5}{16}, \dfrac{36}{115}, \dfrac{329}{1051}}$$
$${ \frac{5}{15} \frac{35}{112} \frac{324}{1035}}$$
のように表記する方が簡便かもしれないが、この場合は、範囲が変化するイメージからは離れてしまう。